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「賭博ダメ、絶対」〜勝手にプレミア定点観測 23-24 シーズンまとめ編 part1~

 遅くなったが今年もやるぜ!

目次

【1位】マンチェスター・シティ

28勝7分3敗/勝ち点91/得点96 失点34

4連覇の陰に隠れる懸念点は?

 にゃろう。今年もおまいらが優勝かよ!!というわけで前人未到のプレミア4連覇である。とはいえ、今年は例年よりもぐぬぬ感があるシーズンではあった。

 特に懸念とされていたのはWGの不在。マフレズ、スターリングというイニングイーターがいなくなり、WGっぽいキャラクターはグリーリッシュと新加入のドクだけ。その上、前者は離脱が目立つシーズンとなればなかなか運用は難しくなる。

 配置上はワイドであることが多かったフォーデンは実質的にはライン間の住人になっており、デ・ブライネ(むしろ、彼の方が流れの中でサイドフローする機会が多かったように思う)と近い役割を担うことが多かった。ライン間からの素早いターンからシュートとラストパスを連発するフォーデンの働き自体はMVPに値するレベルの出来ではあったが、チームとして大外レーンの物足りなさは通年続いた感がある。

 そういう状況もあり、今季のシティは最高到達点を模索しながら終わってしまった印象も受ける。リバプール、アーセナルにはリーグの直接対決で勝てず、CLでマドリーとのQFで敗れ、シーズンの最後には同じ街の隣人にカップタイトルを譲るなど、要所で強さを見せる勝負強いチームではなかったように思う。

 まぁ、そもそも勝負強くとか言いながら結局のところ4連覇しているのが今のシティの全てだろう。今までの何かに変わる開発品を探しがうまくいかなかったとしても勝ち点90を越えてしまうのだから、当然地肩の強さはハンパない。彼らの悩みは「このままでも強いんだけど」が枕詞につくのである。

 強度面の出力は安定しなかったシーズンだと思う。特に年々ハイプレスからモメンタムを握る試合は減っている感じがある。それでも、やはり、CBとアンカーのセンターラインの強固さとポゼッションの安定感は偉大。これが彼らがリーグ戦で問題なく勝ち点を積むことができる礎である。

 中でもロドリの存在感は異常。涼しい顔で立ち位置を変えながらゲームを作り、ウォーカーのWGに翼を生やし、困ったら自ら突撃してミドルシュートを打ち込む。かつ、カウンターでは相手の邪魔をし続ける。ギブス=ホワイトとの小競り合いからの出場停止がなければ、もっと余裕でプレミア制覇していた可能性も。最終節までタイトル争いになった功労者としてプレミアリーグはギブス=ホワイトに感謝すべきかもしれない。

 おそらく、そろそろ後継者を探さなければいけないベルナルドの役割ができそうな人は全世界を探してもなかなか見つけるのは大変だろう。今季はゲームメイクに関わりつつ、なんだかんだ右のWGの役割を高水準でこなしてみせた。

 懸念はこのベルナルドの引き継ぎをどこで行うかとスカッドサイズ自体は小さい分、EUROの影響が大きそうなことくらいだろうか。来季もかなりの確率で優勝争いに顔を出すことになるだろう。

Pick up player:ヨシュコ・グバルディオル
 CBの新たな柱として獲得したんだなと思っていた夏も今は昔。シーズン終盤は大外からのカットインで大暴れというよくわからない才能を開花させていた。来季はほぼ今季起用がなかったCBでのプレーとか見られるのだろうか。

今季の道のり

【2位】アーセナル

28勝5分5敗/勝ち点89/得点91 失点29

苦しい流れを変える一手の構築が課題に

 今季もまた2位になってしまったぜ!とはいえ、昨季は最後の最後で垂れてしまったという尻すぼみのシーズンを過ごしてしまったこと、今季はCLとの並行だったことを考えれば十分な成績と言えるだろう。おそらく、CL準々決勝以降にピーキングしたシティがリーグにフルベットすることになったのはアーセナルにとっては不運だった。

 シーズン序盤戦は昨季ほど高速サイクルで畳み掛けるような攻撃が出なかった分、ファンから不満の声が聞かれることとなっていたが、高速サイクルだけでなくきっちりと試合を制御するという観点でのゲームマネジメントの巧みさという形で我慢の序盤戦は花開いた様に思う。

 強度面で試合を制圧するという点ではシティよりも頻度は上。速攻、遅攻、ハイプレス、ローブロックいずれも高水準で備えており、試合の流れを引き寄せる手段はかなり豊富。プレミアで最も安定した高い強度を年間を通して発揮したチームと言って差し支えない。

 また、個人への依存度も昨季よりは下がったように思う。トーマス、冨安、ジンチェンコ、ジェズス、マルティネッリなどはある程度まとまった期間の離脱を経験したが、チームのクオリティは底抜けすることはなかった。この辺りはライス、トロサール、ハヴァーツの丈夫さとマルチタスクの賜物だろう。なお、ガブリエウとサリバはフルシーズン戦い切ったため、この2人の離脱の影響はブラックボックスとなる。

 リーグ戦で悔いが残るのはやはりウェストハムとフラムの連敗だろう。アンフィールド後に気が抜けてしまうという悪癖は最後まで響いてしまった。逆にバイエルンに挟まれたアストンビラ戦には勝つ力はなかったかなという感じでもある。

 そのCLではよりくっきり力の差を見せつけられた。攻撃面での理不尽がない分、ミスが許されないというのが今年のアーセナルの特徴であり、バイエルン戦ではそのミスが仇になってしまった感があった。このように試合が劣勢もしくは互角の状況から展開を動かすことはあまり得意ではない。もっとも、どの局面も苦手ではないから多くの試合では優勢の時間を多く戦えるという前提はあるのだけども。対ビッグ6に無敗を記録したように大一番が苦手というわけではなく、時々で訪れる苦しい時間帯をひっくり返す一手を持っていないというのが妥当だろう。

 展開に沿うスコアの流れを捻じ曲げる理不尽さを身につけるのが次のステップになるだろう。弱点が減りつつある状況でゲームチェンジャーになるプラン構築がより高みに昇るために必要な要素となる。

Pick up player:デクラン・ライス
 この移籍金で「損をした」と叫ぶ他サポがいないのがすべて。独力で止めてしまうカウンター対応に加えて、試合終盤でも攻め上がる特殊技能に加えて、ベースの能力の高さを示し、アーセナルの新たな柱に君臨したシーズンとなった。

今季の道のり

【3位】リバプール

24勝10分4敗/勝ち点82/得点86 失点41

綱渡りながらの優勝争いを新監督招聘の糧にしたい

 シティ、アーセナルに比べるとかなりシーズン序盤から綱渡りが続くシーズンだった。ビルドアップは時限爆弾チック。ターンが上手い中盤が根性を見せて捕まっている状態から対面の相手を剥がすことが目立ち、ボールスキルに長けていない選手がガンガン捕まるという悪循環を見せていた。

 そうした状況をなんとかしていたのは前と後ろ。前線は多くの劇的なゴールを生み出し、逆転から3ポイントを手にすることはしょっちゅう。前線の選手はジェットコースターの様な展開から最後は勝ちを手にすることを日常にしていた。

 後方ではファン・ダイクが圧巻の働き。コナテも例年よりは長く働けた感があった。2人の柱に加えて、バックラインは緊急で出番を手にした選手たちの活躍が光った。ブラッドリー、ゴメス、クアンサー、そしてケレバーと緊急登板を感じる選手がレギュラーと遜色ないパフォーマンスを見せてスポットでチームを助けたのは見逃せない。

 シーズン中盤戦以降はビルドアップも安定。アレクサンダー=アーノルドのインサイドへの絞るアクションをはじめとして、アンカーへのサポートをいくつか行うように。これで遠藤のアンカーが成立。仕組みに助けられながらもできることを1つずつ増やしていった遠藤は中盤戦でのMVPの1人である。

 綱渡りながらもクロップのラストイヤーという主人公性を背にシティ、アーセナルに食らいついて行った終盤戦。だが、サラーのAFCON期間以降のコンディション低下や負傷者など、徐々に前線から逆転勝利に必要な馬力が消える試合が目立つ流れとなっていった。前半戦は無双していたショボスライの機能低下も含めて、特に右サイドは尻すぼみ感は否めない。

 守備面でも2強に比べれば劣る部分は失点としてきっちり数字に表れている。シーズン中盤までは食らいついていたが、終盤戦に失点がかさみ、終わってみれば1試合平均1失点を超える形になってしまった。

 それでも戦力の入れ替えと優勝争いを両立したことには大きな意義があるはず。稀代の名監督に別れを告げて、スロットを新監督に迎えて構築のシーズンになる来季に向けて、今季の成績は大きな自信になるはずだ。

Pick up player:クィービーン・ケレハー
 23-24シーズンの特徴といえば空前の第二GKブーム。その中でも特に完成度の高いパフォーマンスを見せたと言っていいだろう。アリソンの離脱を微塵も感じさせない凄みのあるプレーの数々は圧巻だった。なお、こうなってしまうと来季留めておくのが難しいことをマルティネスをアストンビラに送り出したアーセナルファンは知っている。去就が気になる選手の一人でもある。

今季の道のり

【4位】アストンビラ

20勝8分10敗/勝ち点68/得点76 失点61

スタイルにバチっとハマった補強が強固な土台構築の手助けに

 トップハーフへのジャンプアップを見せた昨シーズンに続き、今年も躍進を続けたアストンビラ。その勢いはシーズン全体を通して安定しており、見事CLの切符を獲得する4位確保まで至った。 特にホームスタジアムでの連勝記録を見せた序盤戦の快進撃は圧巻。それを止めたのがシェフィールド・ユナイテッドという意外性はありつつ、シティとアーセナルを両方撃破したインパクトは特大であった。

 なんといっても効いていたのは自陣でのポゼッションの安定感だろう。相手のプレスを引きつけながら空いたスペースに縦パスを打ち込んで勝負をかけるというスタンスはエメリのアストンビラの王道なのだが、パウ・トーレスの獲得により、そのスタイルはさらに増強された感がある。

 相手のプレスを真っ向から受けつつ、スペースを探しながら縦パスを差し込むという役割に関しては世界で最も適任ではないかと思われる補強。トーレスとマルティネスとのコンビは凶悪であり、ミドルパスから切り拓くというミッションを完璧に遂行した。

 こうして、ビルドアップが早い段階で安定したことが安定して勝ち点を稼げた要因だろう。CBにとって壁になりがちなフィジカル面でも大きな難は見られなかった。離脱期間のビルドアップの機能性の低下は逆説的にトーレスの存在感の大きさを浮き彫りにした感がある。

 さらには前線のワトキンスは今季も圧巻。縦パスのレシーバーとして抜群の収めを見せて、スタイルをきっちり維持しつつ、アシストにゴールに大暴れ。ケインがいなくなったプレミアにおいて、万能型CFの第一人者として存分に存在感を発揮した一年となった。

 エメリのチームの特徴である突発的に何も出来なくなる試合が登場するという現象も今季は比較的抑えめ。手堅く粘り強く戦うことが出来たシーズンだった。

 強いて難点を挙げるとすれば中盤で通年稼働ができる選手はもう少し欲しかった。4-2-3-1の中盤5枚でハイパフォーマンスを通年で発揮できていたのはマッギン、ルイス、ベイリーまで。ディアビは前半戦は光り輝いたが、終盤戦はやや尻すぼみ。逆にザニオーロやティーレマンスはややフィットに戸惑った。ザニオーロは退団する様子だが、ロジャーズなど2列目の充実度は維持できそうなので、ここは来季に向けての展望は明るい。

 逆にタイプ的に離脱の影響を食い止めきれなかったのはカマラ。危機察知能力が高く、後方の危険なスペースを埋める意識の高いバランサー役は彼が最適。保持時の貢献も含めて唯一無二。中盤の構成がさらに安定すれば、CLとの二足草鞋を履きこなして、来季もリーグ戦では上位を見据えることができるだろう。

Pick up player:エズリ・コンサ
 地味ながらもCB/SBを兼任できるユーティリティ性の高さと後方からボールを運べる安定感を両立する貴重な戦力に。逆サイドのSBが攻撃的な分、バランスを取る役割を任されていたのが印象的。EUROへの切符を手にしたことも納得のパフォーマンスだった。

今季の道のり

【5位】トッテナム

20勝6分12敗/勝ち点66/得点74 失点61

指揮官の頑固さが転がる先は

 シーズン序盤戦は好調の一途。プレミア初挑戦の新指揮官が就任したばかりのチームとは思えない快進撃で一躍時のチームとなった。

 Jリーグファンにはお馴染みの横浜FMで見せたアグレッシブで前に人がどんどん流れ込んでくるサッカーはプレミアで実装するのにそこまで時間はかからず。スピーディーで次々と前に枚数をかけて厚みを持たせていくスタイルは破壊力抜群。

 トランジッション強度をくっきりと押し出すことができる速攻はもちろんのこと、従来チームとしての課題となりやすかった敵陣に押し込んだ後のブロック攻略もお手のもの。サイドからの裏抜けをきっちり行うことでボックス内にスペースを生み出し、高さがないという弱点を補うことができていた。

 相手を動かしてボックスにスペースを作るということに関してはトップ2に並ぶほど実直。速攻のWGの実直な裏抜けと逆サイドのWGのボックス内への飛び込み、そして後方からSBが+1として前線に飛び出すところに関しては骨の髄まできっちりと叩き込まれており、動的な成分を注入し続けることを欠かさなかったことは非常に評価できるところである。

 そうした中で直面したのはメンバー固定の弊害。昨年アーセナルもぶち当たった壁は想定よりもかなり早く到来。ファン・デ・フェン、マディソンといった代替不可の戦力が離脱したことにより、機能性は一気に低下することとなった。

 もっとも、就任1年目となれば層の薄さは仕方のない部分だろう。メンバーを入れ替えながらスタイルを確立することを目指せば、当然序盤戦のブーストがかかる可能性は下がったはず。まずはきっちりベストメンバーを固定して、そこから関われる人を増やしていくというアプローチ自体は少なくとも今季に関して言えば妥当だろう。

 ただ、むしろ指揮官の柔軟性のなさは今後を見据えた時に気になるところではある。相手によって顔を変えないという頑固さは素早いスタイルの浸透に一役買った部分もあると思うので、一概には否定できない。だが、グロッキーのまま撃ち合いをひたすら行っていたルートン戦に代表されるような、展開に沿って試合を落ち着かせるプランのなさは90分で勝ち切るという意味においても、今季はなかった欧州カップ戦が入り込んでくるという日程面でも弊害になる可能性も否定できない。終盤戦でテンポという意味では異分子のクルゼフスキが存在感を見せたことはなかなかに考えさせられるものがある。

 戦力的に欲しいのは中盤の柱となる選手とバックスの戦力の拡充。特に中盤にはどこが相手でも落ち着いて戦うためのピースは欲しい。ハマればどこが相手でも勝てるという破壊力十分のスタイルも面白いとは思うが、シーズンを通しての安定感構築にきっちり舵を切れるかというところは来季の重要なポイントになるだろう。

Pick up player:グリエルモ・ヴィカーリオ
 豪快なビックセーブと安定した裏のケアでトッテナムのアグレッシブなスタイルを最後方から支える功労者。マルティネスとの美技博覧会となったアストンビラの試合は今季のプレミアのハイライトの1つである。

今季の道のり

 つづく!

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