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「トゥヘルになったら本気出す」〜勝手にプレミア定点観測 24-25 序盤戦編 part1~

 序盤戦のプレミアリーグを振り返ろうか!!

目次

【1位】リバプール

9勝1分1敗/勝ち点28/得点21 失点6

無理のない仕組みと無理が効くサラー

 一時代を築いたクロップがリバプールを去り、スロットへの政権移譲元年となった24-25シーズン。スタイルを浸透させながらシティとアーセナルの優勝争いにどこまで食い込んでいけるか?というのが彼らの前評判だったと思う。だが、蓋を開けてみればその2チームは下。国内欧州ともに好成績を収め、英国史に残るレベルで成功している新監督の序盤戦となっている。

 クロップ時代のトレードマークである4-3-3からフェイエノールト時代から採用している4-2-4に組み替えを行った今季のリバプール。総じて攻守共に無理がなくなっているなという印象だ。

 プレッシングはむやみやたらに前線が出ていくことを抑制。狙いを絞ってから追い込むスタイルに変更する。これにより、ファビーニョが去った中盤のフィルターが効かなくなったここ数年の守備は安定感がアップする。

 個人で見れば右のSBのアレクサンダー=アーノルドの守備面での軽さはだいぶ改善。さすがにワン=ビサカのような対人の鬼というわけではないが、コナテのカバーが常態化していた昨季までの状況は改善。鬼クラスのWGでなければコナテのスライドなしで対応する場面も増えた。これもまた「無理がなくなった」の一種のように思う。

 保持においては3センターのスキルを生かした組み立てが光る。昨季の頭もいわば3センターのスキルに丸投げしていた感があったが、MFのキャラクターを均質的にすることで枚数調整のバリエーションを増やすことに成功。

完全に一人立ちしたグラフェンベルフに昨季の主力のマック=アリスターが不動のレギュラーとして君臨し、昨季よりも無理やり対面の選手を剥がすような挙動は明らかに減った。彼らを含めた中盤は広い範囲をカバーできるような運動量タイプが少ないので、これもまた無理のない守備の機能性が可能にしたスカッド構成であると言えるだろう。

 そして、「無理が効く」ワイドの存在も大きい。サラーとディアスの組み合わせは共に強行突破ができるし、単独での速攻も可能。インサイドを本命しつつ、外に散らす手段もきっちり持つことで中盤にマークを集中させない形を取ることができている。

 前半戦を首位ターンするにはもう一山を越えなくてはいけない状況ではある。懸念を敢えて挙げるとすれば、ややターンオーバーが少ないことになるだろうが、こちらも時間の経過と共に改善傾向。徐々にスターターで見通しが立つ選手が増えたり、カラーも広がっている印象。LWGで中盤との連携がより期待できるガクポが徐々に序列を上げているのはその一例である。

 スコアリングとチャンスメイクは少しまたサラーへの傾倒が強まっている感があったり、あるいは強引にプレスをかけなきゃいけない場面などは脆さが目立ったりなど懸念がないわけではない。ただ、後述する追う側のチームもハードな状況。リバプールの懸念は特別に大きい爆弾という感じはしない。もちろん、ここから優勝まではいくつか山があるだろうが、その山を超えてしまうようなしぶとさも備えていることをここまでの試合で証明しつつあるのは他のチームにとっては厄介だろう。

Pick up player:トレント・アレクサンダー=アーノルド
 『子猫に優しいヤンキー』理論にまんまとハマり、守備をそれなりにやるようになったアレクサンダー=アーノルドをやたらと誉めている気がする今季の僕です。

今季の道のり

【2位】マンチェスター・シティ

7勝2分2敗/勝ち点23/得点22 失点13

少数精鋭の方針がついに悲鳴を上げる

 え、そんなにプレータイムを食える戦力を出して大丈夫?と感じていたここ数年のシティ。獲るなら適正価格を遵守という新戦力の獲得方針も相まって、少数精鋭の戦力をフル活用することで大きな成果を挙げている。

 ただ、アルバレスという前線のピースを新たに失った今季はいよいよやりくりが厳しくなった感がある。前線はWGの稼働が安定せず。昨季から怪我がちだったグリーリッシュは今年もスターターをがっちり張れるコンディションではなく、ドクも時折姿を消すことも。フォーデンもこのポジションでは手応えがイマイチ。ヌネスのコンバートも見られることとなった。

 その前線と比べてもさらに甚大なダメージを受けているのは中盤。なんといってもロドリの離脱は痛い。EUROフルコンプリートの影響もあってか、序盤戦からベンチスタートは続いていたが、アーセナル戦でシーズン全休クラスの大怪我に見舞われることに。急遽、コバチッチをアンカーにおくことで対応するシーズンとなった。

 ミドルシュートなど、部分的にはロドリの要素を搭載しているコバチッチのアンカーだが、やはり中盤でカバーできるスペースの減少は否めない。特に今年は開幕戦から数年ぶりにハイプレスを活用する頻度が高いシーズンなので、例年以上に中盤の守備範囲は重要なファクターになっている。だが、肝心のロドリはいない!というのが今のシティの状況だ。

 前に積極的にプレスに行くことで、ハイプレスが増える分、CBにも皺寄せがいく構造になっており、カウンター迎撃が明らかに不安定に。壁が何枚もあるように感じたここ2,3年のシティのカウンター対応に比べると、非常にカジュアルに突破されるようになったことは明らかである。

 いうまでもなく普通に強いチームだとは思うが、出戻りとなったギュンドアンも含めて既存戦力のプレー時間と質の部分が徐々に目減りしている感は気にならなくもない。カウンター対応という明確な弱みができてしまっている今シーズンにおいてはもう少し前線でねじ伏せた差はある。

 大黒柱を失った難しい舵取りのシーズンになった今シーズンのシティ。グアルディオラに次の一手はあるのだろうか。

Pick up player:マテオ・コバチッチ
 仕事でしんどそうにしている人に「いなくなっても代役なんているから気楽にやれ」と声をかけるというのはよくある話だが、世界中の人に監視されながらロドリの代役という世界トップクラスに難しい代役ミッションを託された人。個人的にはできることはやっているように思えるが。

今季の道のり

【3位】チェルシー

5勝4分2敗/勝ち点19/得点21 失点13

自己紹介を済ませたマレスカ

 今年も夏の移籍市場では大立ち回りを見せたチェルシー。前線には毎年恒例の新戦力祭りに加え、中盤より後方も序列整理が必要というかなりビッグサイズなスカッド。新監督となったマレスカは戦力のスクリーニングとスタイルの構築という両輪を回さなければいけないというハードなミッションを課されることに。

 だが、フタを開けてみればリーグはここまで3位とここ数年にはない安定のスタート。内容的にも完ぺきではないものの、これが今季のスタンダードといえるスタイルを示し、マレスカはチェルシーファンへの「自己紹介」を済ませた3ヵ月だった。

 ベースとなるスタイルは4-2-3-1からの保持における3-2-5変形。序盤はCHの片側であるエンソとトップ下のパーマーが5のシャドー役に入ったが、CHがエンソからラヴィアに代わってからはCHの配置はキープし、SBのグストが1列前に入る形で運用している。

 攻撃のキーとなるのは前の5枚、とりわけジャクソンやパーマーへの縦パス。彼らの反転が決まれば一気に攻撃は加速。そこからフィニッシュまでスムーズに進むことが出来る。やや一点突破主義な感は否めないが、ジャクソンのオフザボールの精度向上と、カウンターに無類の強さを誇るパーマーによってこのモデルは支えられている。

 押し込んだ後のサイド攻撃はSBとSHのタンデムなのでやや単調になりやすい嫌いはある。ただ、マドゥエケとネトというソリスト2人であれば、サイドに弱みがあるチームはそれだけで破壊可能。中断前にアーセナル相手にネトがきっかけとなるミドルを沈めたのも大きいはずだ。

 ハイプレスに関しては特別なものがあるわけではないが、2列目のプレスバックの意識が高まっているのは朗報。フォファナのような高いラインをキープできるCBやククレジャのように迷いなく降りる前線の選手についていくSBと組み合わせれば、高い位置からのコンパクトな守備を実現する可能性はあるだろう。

 懸念となりそうなビッグスカッドの運用もECLをフル活用することで解決。主力をGSでは登録外にするという大胆な割り切り方でプレータイムをシェア。多くのメンバーを主力化できているか?という点では議論の余地があるが、カレンダー改変による負担増が叫ばれる欧州カップ戦においては、リーグ戦のメンバーをミッドウィーク免除するだけでも、コンディションのマネジメントの点で大きな差になってくる可能性は十分にあるはずだ。

 現状ではリバプール、アーセナル、シティに比べると、自分たちの時間を作って展開を支配するという点では下回っているのは否めないだろう。試合の半分くらいは相手のペースに付き合うことも少なくはない。しかしながら、どんな相手に対しても自分たちの時間を作る爪痕を残せるチームとなったのは確かである。

 むしろ、懸念となるのは一点突破主義が行き詰った時だろう。ジャクソン、カイセド、パーマー、フォファナあたりは離脱時のダメージは非常に大きそうであり、ここは超上位勢と比べるとさらに依存度が高い部分ではないか。行き詰った時に衝動的な動きに走る可能性は否定できず、そうなると今度は過密日程が足枷になってくる。逆に言えば、お家芸である混乱を避けることが出来れば、目標とするCL出場権は悠々とクリアという流れも待っているかもしれない。

Pick up player:ニコラス・ジャクソン
 昨季は若干ゆるふわ枠であったが、今季は昨季後半からのいい流れを継続。正確なポストと推進力でパーマーと共に精度の高いカウンターを演出。やたらと激高しやすい分、警告を受けやすいのが玉に瑕だ。

今季の道のり

【4位】アーセナル

5勝4分2敗/勝ち点19/得点18 失点12

『流れを掴む』が先にくるチーム

 自分のひいきチームながら今季のアーセナルのここまでを表するのは結構難しい気がする。プレミアで19ポイント、CLでの7ポイントというのはどちらも大満足とはいかない数字であるのは間違いない。

 その一方でプレミアではすでに前半戦のトップハーフとの対戦はフォレストとフラムを残すのみ、CLに至ってはポット1,2との対戦を全て終えて、8位までは2ポイント差の12位。序盤のハードな日程に対して何もできなかったというわけではないだろう。近頃、明白にバックスのクオリティを落としているシティと比べると、内容面での大幅な低下があるというほどでもない。

 単純な理由として挙げられるのは退場者だろう。明確なミスであるボーンマス戦を除けばどこまでが自分たちのせいか?の線引きは難しいが、バックスに負傷者が続出したリバプール戦も含めて、数ポイント分は運が向かなかったと結論付けてもいいかなという肌感覚だ。

 それ以外に個人的に勝ち点を重ねられない理由を述べるのであれば、夏の補強の方針が影響しているのかなと思う。メリーノ、カラフィオーリが不十分というわけではない。クオリティというよりも方向性の話だ。スターリングは頑張れ。

 去年のアーセナルについての弱みとして個人的に考えていたのは「流れがいい時でないと得点が入らないこと」である。先に来るのは試合の流れの掌握であり、スコアを動かすという要素は後からやってくる。この順番が逆転することは他のチームと比べて少ないように思う。特にオープンプレーでは。

 メリーノはビルドアップへの貢献と高さでフィニッシュの局面にプラスをもたらせるMF、カラフィオーリはポジションレスで多様な場面に絡むことが出来るSB。どちらも既存の枠組みの中でチームを強化するタイプの選手だ。

 その一方でチームの流れを捻じ曲げて得点を取ることが出来るアタッカーの獲得は見送られた。重なる負傷者がなかったとしても、今季はEURO明け+カレンダー改変が重なり、特に序盤戦はいい流れでなくても勝ち切る強さは求められる要素が大きいシーズンだ。

 そうした変化に対して既存の「流れがいい時でないと点が取れないチーム」のフレームのまま、チームを強化したことが勝ちきれない試合が増えたことに影響しているのかなと思う。負傷者の影響による目減りと悪い時間帯におけるリアクションの悪さがそれに拍車をかけた印象だ。

 負傷者の要素を除けば今季のスカッドを出発点としたときのこのチームはここまでよくやっていると思う。開幕戦から見られたCHのサイドフローは相手のハイプレス破りの新しい一手だし、ウーデゴール不在をトロサール・ハヴァーツの2トップで中盤とフィニッシャーの仕事の境界線をボカすことで対応したこともいい策だと思う。やたらやり玉にあがるマルティネッリのクロスに関しても狙いも精度も充分見える。セットプレーは相変わらずゲームチェンジャーだ。

 ただ、CLとプレミアからは「よくやっている」だけでは不十分というフィードバックが勝ち点という形で与えられている。まだまだこのチームには上積みは必要である。

 復帰したウーデゴールが重要なのは当然のこと。それ以外でここからのアーセナルのポイントはメリーノとSBがいかに前線の負荷を取り除いてあげられるかだ。今のチーム内で相対的に無理が効くのはハヴァーツ、サカ、マルティネッリの3人。彼らの負荷を軽減してできるのはメリーノとSBの面々だと個人的には考えている。

Pick up player:冨安健洋
 もう1つの冬のアーセナルのポイントとなるのはベン・ホワイトの離脱。この命題の行方を決めるキーマンは個人的には彼だと思う。アーセナルのSBは全員優秀だが、展開によって求められるものとの微妙なミスマッチが発生することもしばしば。一番、アーセナルのSBの中で器用であり、どんな展開にも向くであろう冨安が問題なく起用できれば、こうしたミスマッチは最小限に抑えられると感じている。

今季の道のり

【5位】ノッティンガム・フォレスト

5勝4分2敗/勝ち点19/得点15 失点10

強固なブロックと強力なカウンターを武器に旋風を巻き起こす

 プレミア序盤戦における最大のサプライズチームといってもいいだろう。ヌーノの率いるフォレストは今プレミアの中でも非常に面倒な部類のチームである。

 なんといっても光るのは守備。10失点はここまでリバプールに次いで2番目に少ない数字である。

 際立つのは4-4-2で組むブロックのソリッドさだ。中盤の4枚で中央を閉じて、相手に外循環を促すというわかりやすいメカニズム。そのため、比較的に簡単に押し下げられはする。その一方でそこからの粘り腰が強い。インサイドのムリージョ、ミレンコビッチは単純な跳ね返しは安定しており、ハイクロスは打ち消すことが出来る。上背のないムリージョには一抹の不安はなくもないが、この点でミレンコビッチは盤石。その背後には正確なセーブでチームを救うセルスもいる。

 SBも輝きを放っている。2列目はあまりサポートに行かず手薄なサイドの守備で1on1では簡単に負けないスキルが重要になる。この点ではアイナが無類の強さを見せる。左サイドの相手のキーマンを無効化する対人スキルで押し下げられても有効打のクロスを上げさせない守備に長けている。

 大外をSBにある程度任せていいからこそ、中盤は中央をフォーカスして閉じることが出来る。CHはドミンゲスとイエ―ツを固定する一方でSHは使いわけ。基本的にはエランガ、ハドソン・オドイの推進力のあるWG型だが、より押し込まれることが想定される競合相手にはアンダーソンなどのMF型を配備。相手が疲弊したところで後から登場するエランガとハドソン・オドイでぶっ壊すという二段構えのプランで相手を打ち破る。

 このプランが刺さったのは何といってもリバプール戦。快進撃を続けるリバプールをアンフィールドで打ち破ったインパクトは特大。その後、リバプールがこの敗戦から立ち直って戦っているからこそさらに価値は高まっている印象だ。

 強固なバックスとは対照的に前線は柔軟に穴を埋めた印象だ。調子が上がらないアウォニィや離脱を経験したギブス=ホワイトの影響を抑えられているのは他の選手がきっちり仕事をしているからこそである。

 前線は何といってもクリス・ウッド。ぱっと見電柱タイプではあるのだが、どちらかというとバックラインとの駆け引きで勝負ができるのが大きい。そしてとにかくゴールを決める。ここまで挙げたゴールは8つ。ハーランドの次点でサラーと同じ数字だ。ップ下ではアンダーソンが躍動。いないと絶対無理だと多くの人が思ったギブス=ホワイト不在の期間を何とかしのいだ。

 基本的には撤退+カウンターベースのチームだが、徐々に自信がついてきたのか中堅相手との対戦ではあらゆる局面で上回り、生半可な完成度のチームはボコボコにできる自信をつけている。ウェストハム戦はその典型例だ。

 勢いに乗るフォレスト。もともと大物食いの傾向があるチームなだけに度胸は十分。欧州カップ戦組がスカッドのやり繰りに苦しめば、上位に粘ることも夢ではない。

Pick up player:ニコラ・ミレンコビッチ
 フィオレンティーナからやってきたセルビア人CB。実直で強度の高いボックスの守備でこれまでどこかひ弱なイメージが先行していたフォレストの守備を強固なものにしている。

今季の道のり

 つづく!

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