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「トゥヘルになったら本気出す」〜勝手にプレミア定点観測 24-25 序盤戦編 part4~

ラスト!ここまではこんな感じ!

目次

【16位】エバートン

2勝4分5敗/勝ち点10/得点10 失点17

『恐怖の12月』を前に軌道に乗る

 昨シーズンからオフシーズンにかけては財政問題も騒がれ、どこまで思い通りのチームを設計できたかはわからないエバートン。危ぶまれる時期もありながらもダイチ政権は3年目に突入することとなる。

 序盤戦はとにかく流れが悪かった。ブライトン、トッテナムというツボに入ったらとにかく強い系のチームのツボにハマり続けてしまい失点を重ねると、続いてのゾーンはとにかくリードを活かせないという地獄のようなゾーン。ボーンマス、アストンビラと立て続けに2点リードからの3失点でひっくり返され、昇格組のレスターにも追いつかれてしまう。

 リードをしている状態をキープできないというのはダイチのエバートンのアイデンティティを考えると最もしんどい部分だろう。これ出来なきゃ何できるの!みたいなところである。

 ただ、6節のパレス戦での未勝利デスマッチを制して以降は比較的成績は安定。ここまでの17失点はエバートンにしては多いように見えるが、その大半である13失点は開幕4連敗で喫したもの。直近7試合では1敗のみと負けにくさという点で良さは出るように。

 正直、この点で状況が上向くのは想像よりも早かった。ブランスウェイトの安定稼働ありきだと思っていたからだ。昨季は軸となったCBはここまで先発は2試合のみ。キーン、ターコウスキ、マイコレンコ、ヤングのバック4で何とか状況を上向かせていた。

 中盤より前はもう少し余裕を持って運用をすることが出来ている印象。ブランスウェイトと同じく昨季の功労者であるガーナーはもう少し試合に絡んでほしいところだろうが、例年は怪我がちなキャルバート=ルーウィンやドゥクレなどの中堅どころはきっちりとシーズン頭からフィット。大きな離脱者は少ない状況である。

 パフォーマンス面で言えばタイプの異なる2人のトップ下が印象的。ゴール前に突撃してスコアリングができる馬力のドゥクレと、高いテクニックと正確無比なシュートが光るマクニール。それぞれがそれぞれの持ち味で攻撃にアクセントを加えている。

 願わくば、ここにCFのスコアリング力が加わってほしいところだろう。交代出場のベトは9節のフラム戦で劇的な同点ゴールを生み出して感情をあらわに。つなぎの局面では存在感があるだけにフィニッシャーとしてここから状態を上げて行けば、昨季からフィニッシュワークに苦しむキャルバート=ルーウィンに代わってレギュラーという線も見えてくる。

 昨季と比べて早く堅守のベースに乗った感ある今季。そんな彼らに待ち受けるのは試練の12月。ユナイテッド、リバプール、アーセナル、チェルシー、シティが待ち構えている年末で降格圏に逆戻りにならないことが当面の目標となるだろう。

Pick up player:アシュリー・ヤング
 上述のベトの同点ゴールのアシストなど、右のSBとしておしこんだ時の攻撃参加が地味に気が利いている。守備に回るともちろん脆さはあるが、攻撃面に関しては渋い光を放っているシーズンだ。

今季の道のり

【17位】イプスウィッチ

1勝5分5敗/勝ち点8/得点12 失点22

スタイルを貫くことが結果的に身を守ることに

 今季22年ぶりのプレミア昇格となったイプスウィッチ。キエラン・マッケンナのチームにとっては残留というミッションは大きなチャレンジになるだろう。

 初勝利は11節であり、時間軸としては20チームの中で最も遅い(同節に初勝利したウルブスは先に試合を実施)形にはなったが、11試合で負けは5つだけ。アストンビラ、フラム、ブライトンと上位勢にも勝ち点を取ることが出来ているなど内容的には奮闘も目立つ。

 基本的には高い位置からのプレスがチームのベースとなる。昨季のルートンほど愚直ではないにせよ、低い位置で構えるというよりは少しでも自陣のゴールから遠い位置でボールを奪うことを基本線にしたいのだろう。ミドルブロックでの我慢にトライすることが多い。

 攻撃においては2列目の挙動が特徴的。チャップリン、スモディクスあたりはサイド起用だとしてもインサイドに絞るアクションが多く、大外はSBに任せることも。インサイドに絞るポイントを増やすことで縦パスを受けられる可能性を高めようという方向性だ。

 非保持においても2列目のアクションは変わっている。ボールがある側と逆サイドのSHが絞ってCHをマークするなど、同サイドに相手を閉じ込めるためのアクションが多い。

 2列目がライン間で前を向けば仕上げとなるのはデラップ。相手を力強く振り切る直線的な動き出しから一気にゴールを陥れるのが得意な9番。駆け引きのうまさよりもとにかくパワーで押し切るのが特徴のタイプであり、確かにハーランドのいるチームでは使い分けがあまりにも難しいように感じた。

 苦手なパターンは自分たちのリズムを壊される形だろう。例えば同サイドに圧縮する守備を抜けられてしまえば、背走しながら自陣で疑似カウンターを受けるような脆さが出ることもある。保持においてはライン間に縦パスを入れるために必要なポゼッションの過程でミスが出ることもある。そういう部分での融通の利かなさは少しだけルートンと似ている。

 それなりに得点を挙げられていることからもわかるようにハマった時の威力は上位勢にも十分通用するものがあると考えていいだろう。あとはミスなくハメる時間をどれだけ作れるか。自陣でのブロック守備が堅いタイプではないので、ここから逃げてしまったらそれはそれで苦しいというジレンマもある。スタイルを貫くことが結果的に自分たちの身を守っていることにつながるようなチームなのではないか。 

Pick up player:カルビン・フィリップス
 おまシティパス(=『おまえ、シティから来たんだからこれくらいトラップできるよな?』という思いやりのない強いグラウンダーのパスのこと)をなんとかできなかったことでウェストハムでは信頼を得られなかったが、ここでは保持でなんとかやっている。いや、こないだ退場はしたけども。

今季の道のり

【18位】クリスタル・パレス

1勝4分6敗/勝ち点7/得点8 失点15

期待を裏切りかつての姿に逆戻り

 昨シーズンはプレミアでもっとも勢いのある状態でフィニッシュ。グラスナー政権としてきっちりとキャンプを組むことが出来る24-25シーズンにおいて、クリスタル・パレスはプレミアにおけるダークホースとして頭角を現すと予想するファンも多かったはずだ。

 しかしながら、フタを開けてみれば大爆死。躍進どころか昇格組ご一行と共に未勝利街道を突き進んでしまうという真逆の波に乗ってしまうシーズンとなった。

 理由としては昨季プレミアを席巻したアグレッシブなスタイルが身を潜めているからだろう。縦をコンパクトに保ち、高い位置から奪い取るバックラインの積極的な意識はいつの間にかどっかに行ってしまい、ローラインで低く構える格好に。

 当然、高い位置で奪い取っては素早く攻めるというモデルは成立しないので、ベースとなるのはロングカウンター。アタッカーを軸としたカウンターから反撃に打って出る形である。

 コンパクトに高い位置からプレッシャーをかけるという昨季のモデルから低い位置に構えてのロングカウンターという今季のモデルへの移行はいわば時代と逆行。アタッカーに託すタイプのロングカウンターはまるでホジソン時代のパレスを見ているかのようだった。

 こうなった要因の一つはアンデルセンの移籍だろう。ワイドのCBが出て行ったときに素早くカバーをすることが出来る危機察知能力の高さは折り紙付き。ボールを奪った後の自在な対角フィードも含めて今のパレスのバックスに足りないものを兼ね備えている存在である。

 前線はオリーズの移籍とエゼの不振というダブルパンチ。これに加えて、マテタをベンチ送りにしているのだか、攻撃が成立するはずもないだろう。新戦力の鎌田、エンケティアがこの点で既存戦力にとって代わりたいところであるが、どちらもフィットは不十分。前者は中断直前のフラム戦における一発退場でここから出場停止が始まるし、エンケティアは攻撃の中心になるどころかカウンター時の判断の悪さが明確なブレーキになっている。

 今の戦力で可能かは難しいところではあるが、やはりコンパクトでアグレッシブな昨季に立ち返ることが目標になるだろう。今季初勝利を挙げたトッテナム戦や開幕戦のブレントフォード戦の前半など、昨季のエッセンスが垣間見える試合も全くないわけではない。できるポテンシャルはあるはずだ。

 あとはアンデルセン、オリーズなしでその領域を安定して出力できる完成度までたどり着けるかどうか。エバートンほどではないにしてもこちらも12月はハードな相手が続く。だが、昨季リバプール相手に奮起したことを考えると、大舞台を攻略する勢いでチームを一気に軌道に戻すきっかけがあるととらえることもできる。

Pick up player:ジャン=フィリップ・マテタ
 指揮官との衝突の噂もありベンチの時間も多い今季だが、出てくればなんだかんだで頼りになる存在。ロングカウンターという薄めの希望も彼に託せば割とチャンスになるので、とっととスタメン固定しましょう。

今季の道のり

【19位】ウォルバーハンプトン

1勝3分7敗/勝ち点6/得点16 失点27

好調の前線と埋まらない鉄人の穴

 今年も例によってのスロースタート。序盤戦の低空飛行はある意味いつものこと。そのウルブスの軌跡は速報順位では大きく沈みながらもなんだかんだ神7残留を果たす小嶋陽菜と重なる。ウルブスはプレミアの小嶋陽菜です。

 ほかの下位のチームに比べれば攻め筋が明らかにはっきりしているのが強みだ。最も頼りになるのはクーニャ。今季は昨季に比べるとシャドーでやや低い位置でのプレーが多くなっている。彼が左のハーフスペースに降りてボールを収めるアクションからウルブスの攻撃は加速。自身がもう一度フィニッシャーとして関与できることも含めて、チャンスメイカーとスコアラーの両面で存在価値の高い選手である。

 さらに今季はCFに頼れる相棒を召喚。ストランド=ラーセンは万能型の優秀なストライカー。左右の奥を取るフリーランはスペースメイクはもちろんのこと、それ自体のスピードもあるので殺傷力は十分。ボックス内では決定力を見せており、高い貢献度を見せている。ヒメネス以来の本格派のストライカーがやってきた。

 ファン・ヒチャンは出遅れているが、この2人のストライカーにジョアン・ゴメスなどの推進力のある中盤やセメドやアイト=ヌーリといったSBまで攻めに関与できる手札は豊富。あらゆるところからゴールを狙うことが出来る。16得点はボトムハーフの中ではブレントフォードに次いで多い。

 となれば問題になるのは当然失点数。27失点はリーグワースト。11試合のうち、9試合が複数失点と大盤振る舞い。ギリギリ11月の代表ウィークに間に合わせたサウサンプトン戦の初勝利が今季初めてのクリーンシートとなっている。

 特に前半はいい入りをしながらも後半に尻すぼみになってしまっての袋叩きというパターンが非常に多い。ブロック守備の強度はきっちりとリトリートしても怪しいものがあり、クロスの対応にやたらとバタバタしたり、セットプレーで出し抜かれてしまったりなど悪いところが目立ってしまう。

 ファストブレイクの対応も安定せず、保持に回れば得意なはずの速い展開でも後手に回ってしまうこともしばしば。チャンスを多く作っていても大量6失点で敗れたチェルシー戦がその代表的な例といえるだろう。

 エバートンのようにバックスにフィット待ちの救世主がいるわけではないので上がり目がないのがつらいところ。フルタイム出場男のキルマンの穴はぽっかりと空いたままだ。

    恐ろしいほどあっさりと初勝利をつかんだセインツ戦のように地力はあるのは確かだが、守備での不安定感に引っ張られてパフォーマンスが下がる事態に陥ってしまうと、例年通りの後半戦のリカバリーに怪しさが出てくる。

Pick up player:マテウス・クーニャ
 もっと評価されていいと思うFW。本文にも書いたが、組み立てとフィニッシュの両面で機能する万能型であり欠点の少ない選手。相棒を選ばない器用さも魅力の一つ。

今季の道のり

【20位】サウサンプトン

1勝1分9敗/勝ち点6/得点7 失点21

『機会の敗北』を脱する道はあるか?

 開幕11試合で得たポイントはわずかに4。エバートンとの一戦で得た勝利がなければ、すでにサポーターの気持ちは絶望的なものになっていたはずだ。

 スタイルとしては保持と共に沈むというスタンスが信条。アーセナルやシティ、リバプールといった上位の保持型のチームは危うい状況になればそれなりに蹴っ飛ばしたりはするが、サウサンプトンはとにかく意地でもつなぐ。どんな状況でもショートパスをつなぐことでクラブのスタンスを体現するのがラッセル・マーティンのサウサンプトンだ。

 3バックの内の1枚のCBは列を上げて中盤での組み立てに参加。他のCBは大きく幅を取ってGKを挟む。CHは降りてきてボールを引き取り、相手のプレスを一身に受けやすい形でSBなどにつなぐことを求められる。ラムズデールは速いグラウンダーのボールを付けてロングキックで逃げることは稀である。

 が、端的に言ってこの仕組みがなかなか収支と合わない。サウサンプトンのバックスはそんなにプレス耐性があるわけではないからミスはそれなりに出る。バックスに比べれば技術の高い選手がいる中盤も相手のプレスを受けながら下がってくるので、ターンしてフリーになるところから始めないといけないというハンデを背負っている状態。

 さらにはミスってしまえば、保持のために変形したいびつなバックスが残ってしまうというおまけつき。単純に成功率の低さに対して背負いリスクが高すぎて収支が合っていないのがここまでのセインツだ。

 まったく光がないわけじゃない。アーチャーやブレアトンは敵陣でプレーができれば輝きを放てることはすでに昨季証明している。右サイドではカットインからのフィニッシュがある左利きのディブリングとそれを追い越す菅原の相性は良好。逆サイド起用が増えているウォーカー=ピータースも含めてサイドの突破力は下位の中でも十分に力があるほうだと思う。

 それだけに不用意に攻撃を食らい続けている現状はしんどい。3バックは連携面でも難があるため、耐えて受けるという戦い方ができないのもつらいところ。ある意味ほかの局面を頑張りたくなる正当な動機はあることになるのが難しい部分である。

 今の方向性を大事にするのであれば、ボールを前に安全に運ぶ機会をとにかく増やすことだろう。7得点に終わっているのは攻撃の機会を得られずに危ういカウンターばかりを食らっているいわば「機会の敗北」が大きな原因。この負のループから脱出する術を見つけなければ、残留を現実的な目標とするのは難しい。

Pick up player:タイラー・ディブリング
 サウサンプトン名物・チェルシーユースの宝石磨きの最新作。守備で懸念があるのかもしれないが、それは他の前線も割と同じなのでとにかく彼を右において菅原と組ませることから始めてもいいのかなと思う。

今季の道のり

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