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「え?クラブW杯やるの?大変じゃない?」〜勝手にプレミア定点観測 24-25 決定版 part3~

ここまではこちら。

目次

【11位】フラム

15勝9分14敗/勝ち点54/得点54 失点54

センターラインの応急処置成功で定位置キープ

再昇格して以降は安定して中位をキープするフラム。今年も無事に降格争いに絡むことなく、安定した順位でのフィニッシュとなった。監督の顔ぶれの移り変わりが激しいプレミアの中では2025年で就任5年目となるマルコ・シウバは長期政権の部類。戦力の入れ替わりはそれなりにあるチームだが、今年も同じような結果に着地させたのはシンプルに見事といえるだろう。

 今年の大きな変化点はやはり中盤の柱であったパリーニャの不在。影響力を及ぼすことが出来る範囲に関しては別格のパリーニャの穴はルキッチ、ベルゲのいぶし銀コンビがなんとか埋めきったといっていいだろう。

ド派手なタックルこそないが、きっちりとスライドして埋めるという基礎をきっちりと実施。ただ、この2人のコンビ以外ではさすがに中盤のフィルター機能は落ちた印象がある。保持面でも求められることを実直に行うCHコンビはフラムの中盤を支え続けた。

 CBコンビは昨季終盤に独り立ちしたバッシーをロンドン内で出戻りを果たしたアンデルセンが支える格好。左右に散らすことが出来る展開力は中盤の大きな手助けにもなった。

 前線においてはイウォビのさらなる成長が目覚ましい。一時期のウィリアンのように「彼に預けておけば問題ない!」という頼りになる存在に君臨したといえるだろう。適切なタメとキャリーだけでなく、守備でも貢献できるイウォビは今のフラムにはもはやなくてはならない存在といえる。

 最前線のヒメネスも存在感が徐々に増してきた。大怪我の影響でキャリアが止まってしまった時期もあったが、徐々にパワーヘッダーとしての存在感を取り戻しつつあるシーズンとなった。ボックス内だけでなく、ライン上での相手のDFラインとの駆け引きも優秀で、フラムの9番としてのムニスといい競争相手としての関係を築くことが出来ていた。

 やや、もう一押しが欲しかったのは2列目の新戦力だろうか。スミス・ロウ、ネルソンのアーセナル組はパフォーマンス的には問題はなかったが、特にネルソンは負傷で稼働率に問題があり。ここのフィットが進めばアタッキングサードの攻略はさらに進むはず。

 スカッドのやり繰りは少し綱渡り感があるので、主力に大きな怪我があった時のダメージはそれなりに大きそうなのが気がかり。夏の市場で戦力の入れ替えが進んでいないのも気になるポイントで一つ歯車が狂えば少し怖いなという感じも正直しなくもない。

Pick up player:ラウール・ヒメネス
 プレミアにおいて今の時代、純粋な空中戦の強さで得点を取るのは難しいと思うけど、それでもこの人ならばやってくれるかもしれないなぁという期待感を抱かせる。ミトロビッチもそうだけど、フラムはこういうストライカーが似合う。

今季の道のり

【12位】クリスタル・パレス

13勝14分11敗/勝ち点53/得点51 失点51

2年連続の後半戦台風の目

 23-24の終盤戦にホジソンからグラスナーへの監督交代で一気にモデルチェンジ。後半戦に快進撃を続けていき、台風の目となることに成功。そうした文脈も踏まえて迎えた24-25シーズンは彼らのさらなる躍進を期待するプレミアファンは多かったはずだ。

 しかし、蓋を開けてみれば初勝利を挙げたのは第9節。下位争いにどっぷりと浸かってしまうスロースタートを飾ることとなってしまった。

 要因ははっきりしていて、昨シーズン終盤に見られた快進撃を支えたスタイルを再現できなかったことにある。前から捕まえにいくプレス、高い位置をキープする最終ラインに裏打ちされたアグレッシブなスタイルは形を顰めてしまい、後ろで構えるホジソン政権の回帰のような挙動が見られたこと。

 後方で大きな展開ができるアンデルセン、個人で打開ができるオリースがいなくなったこともあり、陣形が下がった状態からのリカバリーに苦戦してしまうことに。グラスナースタイルの限界というよりは、踏襲ができなかったことによる不具合に思えた。

 回復のプロセスは段階的なものだった。まずは前線のユニットが完成。新参者のサールが孤軍奮闘している中にエースのマテタが加わり、得点欠乏症になっていたエゼは3月の代表ウィークを復調のきっかけに。長い距離でも無理の効くカウンターを打てる体制を整えたことで、押し込まれた状況での解決策を発見する。

 そして、次にセクションが整ったのはバックライン。グエイ、ラクロワ、リチャーズの3枚は昨シーズンのようなハイラインでのチェイシングを敢行できるように。とりわけ、ハイラインが破られた時に機動力でリカバリーをすることができるラクロワの存在はパレスにとっては非常に重要なものだった。DFの整備で最終ラインを高く保つことができるグラスナースタイルの復活に辿り着いたと言える。

 最後は中盤。大きかったのはウォートンの復帰。前半戦をほぼ棒に振ってしまった有望株は終盤戦に再びチームを背負って立つ司令塔として帰還。鎌田、ヒューズを相棒として気持ちよく司令塔として振る舞っていた。

 ということで、今年も後半戦は明らかに上昇気流に乗り2年連続の台風の目に。大目標だったFA杯も制したことにより、明確にハッピーなシーズンの締めくくりとなった。前半のグダグダを後半のリカバリーで取り返すという2年連続の後半戦の台風の目という立ち位置から来季は脱却を狙いたいところだろう。

Pick up player:ダニエル・ムニョス
 前線のタメができるようになった後半戦では特に攻め上がりが効果的に。上下動を繰り返すだけでなく、精度の高いシュートとクロスを兼備した攻撃性能はプレミアのWBの中でも最高レベルのものだろう。

今季の道のり

【13位】エバートン

11勝15分12敗/勝ち点48/得点42 失点44

メモリアルな節目の先は?

 ショーン・ダイチが続投!ということで、質実剛健なスタイルは当然継続。「豪華な在りし日のバーンリー」という実直さはシンプルだけども厄介さは確か。わかっていても面倒といううざったさで多くのチームを苦しめた。

 中盤のスライドがスマートで、バックラインはボックス内を動かなくて済むという日に関しては強固な壁が何個もあるイメージ。こうなると強いチームだとしてもこじ開けるのは困難極まりない。

 このスタイルであればロングカウンターの威力は欲しいところ。なのだが、その点の責任をCFが果たせなかったのは大きい。キャルバート=ルーウィンは度重なる負傷も相まって存在感が皆無、今年もシェルミティは秘密兵器のまま。最も可能性を感じさせたベトも一瞬開花の可能性を感じさせた反面、終盤戦は決定機逸とオフサイドの連発という従来のスタイルが戻ってきてしまった印象だ。

 そこを補ったのが2列目の推進力。特にエンジアイの独力でのキャリーは魅力的。ガーナー、マクニールといった昨季の主力の離脱をなんとか穴埋めに成功する。冬の市場でレンタルでやってきたアルカラスも縦一辺倒となりがちな攻撃に対して、横断するようなドリブルで味方の攻め上がりを促すなどの味変もできていた。

 この前線のアタッカーとDFラインの空中戦の強さを武器としたセットプレーで順調に勝ち点を奪取。ダイチが関わったこの2シーズンは21/22以降では最高の勝ち点数で40後半(昨季も勝ち点減がなければ48)を確保している。何かとやいのやいの言われがちではあるが、結果は出している。

 ダイチの解任はタイミングを含めてやや驚きを伴うものであったのは確か。そして、後任としてモイーズを引っ張ってきたのもこれまたサプライズだった。しかしながら、今季は彼らにとっては節目の年。グディソン・パークでの最後の試合をモイーズが指揮し、コールマンが先発するという光景で迎えることができたのはエバートンファンではない自分にとってもそれだけで意味があることのように思えた。

 ただ、来季はまた未知数だろう。CBはどうやらブランスウェイトをキープできそうだが、中盤は再建ムード。昨季の終盤にパブリックイメージとは異なりショートパスでの繋ぎに取り組んでいたことが25-26シーズンに向けた種まきになっているのだろうか?

Pick up player:ジョーダン・ピックフォード
 今年も安定感のあるパフォーマンスでチームを牽引。劇場型のGKから不安定さが切り取られ、少しずつ円熟味を増している。

今季の道のり

【14位】ウェストハム

11勝10分17敗/勝ち点43/得点46 失点62

舵を切らない監督交代を正解にできるか

 大型補強を伴い、中盤より前は比較的主力の引き止めにも成功。入れ替えの激しいスカッドではあったが、プレミアのファンからはどちらかといえば好意的に見られていた印象だった。

 しかしながら、今季のウェストハムは期待外れの一言になってしまうだろう。ロペテギを招聘してのポゼッション型のスタイルは花開くことのないまま解任に追い込まれてしまった印象。後方に枚数をかけるビルドアップは前への推進力を削いでおり、それを補うだけの前線の好調さもなし。とりわけ、前線と中盤と繋ぐ役割に関しては23-24シーズンに無双していたパケタが一気に存在感を失ってしまったのが大きなブレーキになってしまった感があった。

 そうした保持面でのトライの弊害や不振をカバーするほどDF陣も強固にはなり切ることができず。23-24シーズンと比べて得点も失点も10減っているというのは24-25のウェストハムらしいスタッツということができる。苦境の中で終盤戦に気を吐いてチームを牽引していたボーウェンはさすがの一言だ。

 何を強みのチームとするのかがよくわからなくなってしまったことでロペテギは解任。ウェストハムはここで堅実路線に舵を切り直すイメージがあったのだが、招聘したのはポッター。プレミア中堅クラブでの実績持ちの新監督に再建を託すこととなった。

 しかし、即効性のあるタイプではない分、後半戦に勝ち点を積み上げることはできず。この後半戦の立て直しによるリカバリーのなさが10位周辺のチームとの勝ち点の差になってしまった。もっとも、彼が大得意なエミレーツでの試合においてはアーセナルファンは泣かされることになったが。

 ポッターはブライトン時代においてもチームを就任すぐに変貌させたというよりは数年単位でメソッドをじんわりさせて浸透させて行った印象がある。だからこそ、チェルシーでは絶対うまくいかないだろうなという予感が就任当初から漂っていたなという感じではあるが、ウェストハムではどうなるかは微妙なところ。自分たちの選択を正解にできるかどうかが来季のウェストハムの見どころとなるだろう。

Pick up player:アーロン・ワン=ビサカ
 パブリックイメージを覆すタイプの成長というのが個人的にはとても好きなのだけども、今季それ一番よく当てはまるのはワン=ビサカ。対人専用機というイメージから完全に脱却。保持面でのサイドアタックの仕上げとなる攻め上がりは攻め筋に苦戦するウェストハムにとって大きな武器となっていた。

今季の道のり

【15位】マンチェスター・ユナイテッド

11勝9分18敗/勝ち点42/得点44 失点54

我慢の先にあるものは?

 オーナーは代わったが、テン・ハーグは留任。政権が大きく変わったタイミングでとりあえず監督を代えないという姿勢はニューカッスルがブルースを続投させた時にも見られたメソッド。だが、その後には間がない解任が待っているというのがお決まりの話でもある。

 「我々は次の試合も彼をサポートする」という声明を出した次の試合で負けてクビになったブルースよりは延命したが、テン・ハーグもクリスマスを迎えることなくチームを去る事となった。もっとも解任は妥当だろう。昨夏はテン・ハーグ印と言える補強を行ったが、チームとしての安定感はいつまで経っても上がってこない。個人的にはよく我慢したなと言える部類だった。

 ただし、後任となったアモリムが残りのシーズンで来季への兆しを見せることができたかは微妙なところ。前線でコースを制限し、中盤で刈り取るというスポルティング時代に見られた守備のメソッドは確かに今のユナイテッドのスカッドとは掠りもしなかったので、離脱者で猫の目のように変わるバックラインと掛け合わせれば、修正がうまくいかないのは合点がいく。

 ただ、保持面で相手を引き寄せながら前進するようなシャープさが見えなかったのは気がかり。先に挙げたDFラインの負傷者続出というのは確かにエクスキューズにはなるし、シーズン途中就任のアモリムからすれば、過密日程で仕込む時間がないという言い訳をしたくなるのも間違いない。

 しかしながら、それでももう少し保持でもこうしたい!というのが見たかったのは正直なところ。1月上旬に見られたリバプール戦での奮闘がベースラインとなれば面白い存在になると思ったのだが、結局あの試合はスポットでの確変であり、それ以降にファンをより多く落胆させるパフォーマンスを見せてしまった。

 かなりドラスティックな人員整理を監督主導で行っているのも気になるところ。アルテタのようにそれが後々の結果につながればポジティブに思えるかもしれないが、この時のアーセナルはOBが外様の大物選手と縁を切って行った構図だったのに対し、今回のユナイテッドは外様の監督が長年ユナイテッドに縁のある選手と対峙するという構図になるのは少し嫌な感じはする。

 EL決勝という今季の不振リカバリー総取りマッチも敗れてしまったが、来季は続投方針で進むようだ。我慢が花を咲かせるのか、それとも単なる苦行に終わるのかが問われる25-26シーズンとなるだろう。

Pick up player:ブルーノ・フェルナンデス
 パフォーマンス面ももちろんだが、やはり健康なのが凄まじい。アーセナル、シティを中心に24-25は数年単位で継続して怪我をしなかった選手が怪我でまとまった離脱をするシーズンだった中でEUROから完走を果たしたのは立派の一言だ。

今季の道のり

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