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「賭博ダメ、絶対」〜勝手にプレミア定点観測 23-24 シーズンまとめ編 part3~

 あと半分!まだまだ行くよ!

目次

【11位】ブライトン

12勝12分14敗/勝ち点48/得点55 失点62

やりくりに苦戦もより悪いシナリオは回避した

 今季の課題はカイセドとマック=アリスターという2人の中盤のキーマンの離脱を補いつつ、ELとリーグ戦を並行しながらなんとか1年をやりくりすること。予算がプレミアの下から数えた方が断然早いブライトンにそんな芸当が可能なのか!というシーズンとなった。

 結論から言えばさすがにらしさ全開で走り切ることは無理だったが、もっと悪い結末も想像できた中で何とか踏ん張ったシーズンだと位置づけることができたのではないか。苦しかったのは多発した怪我人と先に挙げた2人の穴埋めだろう。

 懸念箇所の1つであるCHにはギルモア、ダフートを登用するシーズンスタートとなったが、ギルモアは奮闘したものの開花には至らず、ダフートは半年でドイツに帰ってしまうなど、戦力化には至らなかった。遅れて台頭したバレバもまだ粗削りなところが先行しており、柱となるには心もとない。

 ただ、人がいる分中央のセクションは試行錯誤ができる分マシな方。サイドは怪我人で年間を通して苦しい戦いを強いられることに。三笘とマーチという両翼を欠いた前線によって、攻撃の奥行きと仕上げのクオリティが失われると、このWGを後方支援するSBがさらに火の車。エストゥピニャン、ヒンシェルウッドが長期離脱を経験すると、ランプティやフェルトマンも定期的に姿を消していた。

 CHとワイドのいずれの問題もグロスが5人くらいいれば何とかなりそうな類のものではあったが、クローン装置の開発には間に合わず。1人しかいないグロスは中央で司令塔の役割をこなすことで精いっぱいだった。

 それでも明るい材料がないわけではない。いない選手が目立った分、台頭する選手も見られたシーズンでもあった。真っ先に名前を挙げたいのはアディングラ。理不尽が求められるサイドのポジションをこなし、大外からの突破力に関してはシーズンを通して安定したクオリティを供給した。

 バックスではファン・ヘッケの成長が目覚ましい。出ていくならば潰し切るというマンツースタイルを支えるCBとしてはお手本のような成長の仕方で怪しい部分が見えるダンクをうまくカバーした印象だ。

 前線ではジョアン・ペドロだろう。ワイドで起用してもよし、中央で背負わせてもよし。前を向いても後ろを向いてもクオリティを発揮できる9番の存在は怪我がちなウェルベックと殻を破り切れないファーガソンという前線を支えていた。彼が離脱しなければシーズン中盤はもう少し踏ん張ることができたはずである。

 クラブを初の欧州の旅へと先導したデ・ゼルビと別れを告げる来シーズン。またしても毛色の異なる個性派の指導者でブライトンの挑戦は続くことになる。

Pick up player:パスカル・グロス
 戦力の入れ替わりでスタイルの維持が難しくなる中で、一人だけずっと変わらないサッカーのうまさを体現していた。ほんと、サッカーがうまい。

今季の道のり

【12位】ボーンマス

13勝9分16敗/勝ち点45/得点43 失点18

「爆死フラグ」を回避し、攻撃的なスタイルを前進させる

 残留争いと無風で内容も充実していた22-23シーズン。それだけに功労者であるオニールに別れを告げるというオフの監督人事は衝撃的なものであった。より良いものを求めて中堅クラブが監督を交代し、プレミア未経験の指揮官を招聘するというのは側から見れば明らかに爆死フラグである。

 だが、ボーンマスはこの爆死フラグを見事に回避。昨季以上の順位と勝ち点を取ることに成功。クラブとして監督交代から前に進むというミッションを見事に達成したと言えるだろう。

 フォーメーションは昨季以上に前がかりさが目立つもの。CHの一角にはトップ下が入ることが多かったクリスティが定着。さらにはケルケスの負傷という事情もありつつ左のSBにワッタラを登用するなど、常に前がかりに攻めていく姿勢は忘れないことは用兵に出ていた。3-2-5の5における大外の適性をより重要視したものだとものだと言えるだろう。

 もっともこの攻撃的な布陣の収支は取れている。中央ではターゲットとなるソランケのポストプレーを生かしたサイドチェンジで活躍。左はクライファートやワッタラ、右の大外は完全に独り立ちしたセメンヨのカットインを活かすなど、弱いサイドをぶっ壊すための武器とそれを使うためのプロセスはきっちりと揃えているという印象である。

 終盤戦にはウナルを使っての2トップというオプションも装備。ファーサイドで待ち構える形からチャンスを作るなど異なる攻撃の形も構築する事に成功している。

 またそうした状況を支える後方の面々もさすがである。クリスティと中盤でコンビを組むクックのバランス感覚がなければ明らかに中盤のフィルターは効かなくなるし、バックラインではザバルニーが主軸として奮闘。21歳という若い年齢ながらボーンマスのような攻撃的なチームで通年CBとして稼働したことは評価に値するだろう。

 受けに回ると弱いというのはチームとしての課題にはなるだろう。アーセナル、リバプール、シティにはいずれも2試合で7失点など大盤振る舞い。攻撃力のある上位チームにはあっさりと失点を重ねて手も足も出ないということは珍しくはない。この辺りはトップハーフを目指すにおいて。

 来季の話をすればトッテナムへの移籍が決まったソランケの移籍は当然痛い。カウンターでのフィニッシャーとポストプレーでのチャンスメーカーの両面を担っていたエースの離脱をどのように埋めるかが来季の目下の課題になることは間違いない。

Pick up player:ドミニク・ソランケ
 着実に国内で存在感を上げているゴールゲッター。昨季は完全にチャンスメーカーとして独り立ちした感があったが、スコアラーとしても今季は開花。トッテナムへの移籍で上位クラブでの再挑戦を成功させたいところだろう。

今季の道のり

【13位】フラム

13勝8分17敗/勝ち点47/得点55 失点61

半年遅れの救世主がエースの代役に君臨

 マルコ・シウバ監督のプランの枠組みは今年も同じ。4-4-2でのコンパクトな守備ブロックと4-3-3での保持での崩しをベースにコンパクトな守備とサイドからのクロスを主体とした攻撃からゴールを狙う形である。

 真っ先に問題になったのは中東に去っていったミトロビッチの代役だろう。比較的シンプルなサイドからのクロスを出口としているフラムの攻撃においてフィニッシャーの存在が重要。細かい理屈は抜きでマーカーが付いていても力強く仕留めてくれるエースの穴をどう埋めるかが目下の課題となった。

 代役候補の筆頭はヒメネス。しかしながら、フラムのCFの仕事の1つである組み立ての関与のところでの貢献が低く、陣地回復の手段にならず。ボックス内でのヘディング強度にも往年の出来に比べると割引であり、フラムの攻撃のメカニズムにはうまくはまらなかった感がある。

 時間はかかったが、このポジションの解決策となったのはムニス。後半戦からチームに定着すると、フィニッシャーとして圧倒的な存在感を見せてチームを牽引。少ないチャンスを仕留める確かな決定力でゴールを量産。そのフィニッシャー枠として覚醒を期待されていたブロヤが出る隙間がなくなるくらいの大活躍で終盤戦はエースとして君臨した。

 新星の活躍はバックスでも。パリーニャのいないところを埋めるようにバッシーがCBからの迎撃でかなり広い守備範囲を拾う。序盤戦は目測を見誤っての退場も見られたが、中盤以降は思い切りの良さがプラスに出る場面が新たに増えた。ミトロビッチの後釜を見事にムニスが埋めたように、長年チームを支えており今夏退団したリームに代わり、新たな中盤の大黒柱に君臨する気配もある。

 来季に向けての課題はパリーニャの退団だろう。中盤の絶対的な存在として大車輪の活躍をしてきたハードタックラーの不在をどのように埋めるのか。中盤のバランスを根本から見直す必要もあるだろう。ミトロビッチの不在を半年遅れの救世主で埋めたマルコ・シウバが新たな主軸の退団をどのように埋めるかが来季の注目ポイントになるだろう。

Pick up player:アントニー・ロビンソン
 23-24のプレミアは中堅クラブのSBが進化を遂げたなと思っているのだけども、ロビンソンもその一人。ポジトラにおける鋭さはリーグ随一であり、相手の2列目の戻りに先んじて速攻をクロスを使って完結する役割で猛威を振るった。

今季の道のり

【14位】ウォルバーハンプトン

13勝7分18敗/勝ち点46/得点50 失点65

開幕前にまさかの逆噴射もミッションはコンプリート

 冬に監督交代を行い、ロペテギを招聘。新チーム構築を半年前倒しすることで23-24シーズンに向けてはかなり先んじて準備を進めていたはずであった。

 しかしながら、そのロペテギは急転直下開幕前日に退任。まさかの逆噴射でのマイナススタートを切る事になる。6月にボーンマスを解任したオニールを招聘し、新しいルートに舵を切ることとなった。

 非常にやばいスタートだったにも関わらず、結果としては残留争いに関与することもなく落ち着いたシーズンを過ごすことができたと言えるだろう。オニールは十分にミッションをコンプリート。彼をクビにしたボーンマスも拾ったウルブスも悪くないシーズンを過ごすというプレミアリーグの脚本家にしては穏やかな結末を呼び込んだなという感覚である。

 ただし、過程に関しては苦しい部分もあった。とりわけ前線のメンバーが揃わなかったのはハードだった。ネトがほぼほぼコンディションが整わないのはいつも通りだとしても、ヒチャンはアジアカップと負傷。フル稼働というにはもの足りない。

 そうした前線のメンバーが揃わない状態をなんとかしていたクーニャも度々離脱。こうなるともうどうにもならない。アーセナル戦での布陣がいい例だが、時間制限付きのヒチャンがチレワとともに2トップを組むとかになってしまうとかなり戦いは厳しいものになる。

 逆に中盤より後ろはメンバーを固めながら落ち着いて戦うことができた感がある。ジョアン・ゴメス、レミナの中盤はモウチーニョ、ネベスからきっちりバトンを受け取った感があったし、キルマンはサリバと並びたった2人のフルタイムワークのフィールドプレイヤーとなった。アイト=ヌーリのフリーダムな役割が来季以降どのように転がっていくのかはまだ不透明ではあるが、セメドの博打感も少しずつ減っているようにも思える。

 来季はネトとキルマンが退団。前と後ろの強制的な再編が強いられることとなる。再びいいバランスを見つけることができるか。プレシーズンをきっちり準備したオニールの手腕が問われるシーズンになるだろう。

Pick up player:ファン・ヒチャン
 ザルツブルク時代の同僚であったハーランドほどのインパクトはないものの、コンスタントに高い出力で活躍するシーズンを継続。自陣に押し込まれる展開の中で敵陣に牙を剥ける貴重な存在としてチームを牽引した。

今季の道のり

【15位】エバートン

13勝9分16敗/勝ち点40/得点40 失点51

「豪華なバーンリー」への城壁は固まりつつある

 混乱に見舞われたシーズンと言えるだろう。残留争いに巻き込まれている最中に財務規定違反から勝ち点減処分を食うところまでは自業自得として、処分が二転三転することで順位表が行ったり来たり。周囲の順位のクラブも含めてかなり混乱があった。結局のところ、勝ち点8減という処分には納得がいかないながらも残留できたので控訴しませんという不思議なところに落ち着いた。

 ピッチの中での混乱はシーズンが深まるにつれて収まっていった印象だった。序盤戦はとにかくアタッカーのマイナス収支が酷かった。キャルバート=ルーウィンは1on1での決定的な場面をことごとく外し、新たにぬか喜びストライカーの肩書を襲名。ベトは空中戦の強さで言えばそれなりにプレミアでも通用しそうではあったが、競り勝った先でのヘディングの精度が低く、相手には競り勝てるけどシュートが枠に飛ばないという不思議な状況を連発。ポジショニングの気の抜けたオフサイドも散見されるなど気の効かなさも目立った。3番手のシェルミティは素材枠の域を全く出なかった印象である。

 そうした状況をなんとかして見せたのは中盤より後ろの堅実さである。GKのピックフォードはセーブのたびにチームを鼓舞することで自らを盛り上げていく劇場型のスタンスでチームを鼓舞。近年の中では最も高いところで安定したパフォーマンスを披露。サウスゲートはこの出来のピックフォードをEUROに送り込んでくれたことに感謝すべきだろう。

 CBコンビも安定。不透明な序列や負傷で固定できずにアキレス腱となっていたシーズンも多かったポジションだが、今季は明確な強みに。経験豊富なターコウスキと俊英のブランスウェイトの組み合わせは年齢やプレースタイルの補完性も抜群。押し込まれるボールを延々と跳ね返す役割をバッチリとこなし、セットプレーでは特にファーのターコウスキがターゲットとなり得点源としての機能も果たした。

 中盤もドゥクレ、ゲイェといったお馴染みの面々に加えてガーナーが安定したパフォーマンスで台頭。PAの守備からSHでの上下動まで中央でもサイドでも良しという大車輪の活躍で中盤に厚みを加えた。

 ターコウスキ、マクニールなどといった教え子を散りばめつつも、バーンリー時代よりも明らかに恵まれた人材できっちりと自分らしさを表現しているダイチはもちろん功労者。押し込まれる程度ではバタバタしないメンタルのタフさを見ると、強固な4-4-2ベースのシステムというバーンリー時代のスタイルを豪華な人材で再現という方向性を徐々に確立しつつあるという印象だ。

Pick up player:ドワイト・マクニール
 高精度な両足のキック、自陣まで下がって守備ができる献身性。ダイチのチームのSHとして求められる要素を完璧に備えている選手。ベテランの風格に反して実年齢は若く、まだまだ息の長い活躍が期待できそうだ。

今季の道のり

 つづく!

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