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【ベスト8】モロッコ

戦績だけでは測れない図太さ
前回大会の躍進で大会前からチームの注目度は高め。その期待に応えて、アフリカ勢では筆頭と言える成績を残すことに成功。前回よりも順位は落としたものの、2大会連続で上位に進出したというのは大きな成果となる。
特徴となるのはやはりしなやかな保持。ブアディ、エル・アイナウィ、ウナヒといった中盤だけでなく、エル・カンヌスも列落ちすることで高いハイプレス回避に成功。特に密集した時のボールコントロールと少ないタッチで前を向くスキルの高さは別格であり、多少メンバーが入れ替わってもパスワークから前を向く選手を作ることができる。
基本的に降りるという方法の優先度が高いチームには奥行きを作れないスパイラルにハマるというあるあるがある。しかしながら、モロッコにはそうしたバランスはなし。前線のサイバリやSBのハキミなど、後方へのフリーランで相手を引っ張るようなアクションから全体の重心が下がらない工夫を見せている。全体の重心と即興性のバランスがよく、可変式フォーメーションの不規則さを相手に一方的に押し付けつつ、自分たちはきっちりと操っている。
加えて、今大会は保持に寄っている展開だけではなく、いろいろな力を試される中で結果を出したことが興味深かった。ブラジル戦ではプレスの掛け合いという強度勝負。サイドへの圧縮からのトランジションでゴールに迫っていくことで王国と渡り合った。
オランダ戦ではディオプのパワープレーで一発回答で同点ゴールを引き寄せることに成功。カナダ戦ではボール保持が本調子ではない中で、押し込まれる展開を耐え忍びながら後半の広げるポゼッションからの打開に繋げることで突破をすることができた。
全てが一級品だったフランス相手には圧倒的に吹き飛ばされてしまったというのは仕方ないところもある。だけども、この大会ではそうした多様な展開に対応できたという意味で収穫は大きい。自分たちの強みを押し付けるチームから、対応できるチームへも進化を遂げた。
保持主体のアンダードッグから、保持を軸としながら多くの局面に対応しながら簡単には負けない図太いチームへ。戦績は前回大会よりも下がったが、のし上がることに成功したのが今回大会のモロッコだった。
Pick up player:ヤシン・ブヌ
スタンディングのPKストップと、足抜きを生かした流れの中でのファインセーブの両方を見れたのが自分の中ではとても印象に残っている。
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【ベスト8】ベルギー

逆転勝利がもたらした副産物
非常に不思議なチームだったなというのが今大会のベルギーに対する感想だった。グループステージは相変わらず低調なスタート。オナナがデ・ブライネにブチギレられそうなパスを連発するなど、第1節のエジプト戦は自分たちがいい形を作れそうな雰囲気をあっさりと放り投げてしまうというなかなかに苦しいスタート。
続くイランにも粘り切られてしまい、2試合連続の引き分け。ロースコアでのドロー沼というグループGの苦しい雰囲気の中心となってしまった。
それでも延々と叩き続ける時間を作り続けたニュージーランド戦では快勝。大量の得点でグループ首位での突破を結果的には決めた。
このグループステージでは決め手不足、アタッカーの不振が非常に目立った。一番初めにお目覚めしたのはトロサールだろう。ワイドに開いた時の対面の選手を剥がすアクションやボックス内で体をぶつけながらフリーになる動きなど、巧みさと力強さを併せ持つ円熟味のあるプレミアリーガーとしての輝きを見せた。
この勢いでノックアウトラウンドまで進んでいきたいところだったが、セネガル戦では2点のビハインドを背負う苦しい展開に。窮地で繰り出したデ・ブライネとドクを外すという一手が具体的にどんな効果があったかはなんとも言えないところだけども、彼らを外したからには絶対に結果を出す!という賭けにルディ・ガルシアが勝ったことは確か。
脈絡のないルカクのゴールから着火した攻撃はティーレマンスに燃え移る。ボックス内への侵入で見事な同点ゴールをもぎ取ると、延長戦ではリーグでもあまり見ることもないPKを決めてベルギーに逆転勝利をもたらした。
基本的にはセネガルの集中力が切れたところをうまく突いたなという印象なのだけども、この試合によってガルシアは序列に囚われることなく柔軟な戦力運用で特に前線を90分から逆算して作れるようになった。そう考えるとデ・ブライネ、ドクを外して勝ったのは大きな意味があるのかもしれない。
Round16では完全に下げ潮ムードだったアメリカに大勝。交代出場で入ったルカクとドクのカウンターでひたすらチャンスを作り続けることで本拠地のファンを黙らせることに成功する。
スペイン戦ではデ・ケテラエルの空中戦が猛威を振るうことでスペインを苦しめる場面も。前線の持ち味の多様性を発揮することはノックアウトラウンドに入ってからのベルギーの支えになったと言えるだろう。最後はスペインに屈してしまったが、グループステージの様子を見ると、ノックアウトラウンドでここまで善戦したのは正直意外。そういう意味では大会の波にうまく乗ることができたチームだと言える。
ただ、逆にいうとベースの部分が揺らいでいるのは気がかり。黄金世代は30代中盤に差し掛かっており、特にセンターラインの後方ブロックに新しい核が出てきていないのは明確な課題。勢いに乗って結果を出した一方で、土台の強さを感じる場面を今後見せられるかが次のEUROの目標となるだろう。
Pick up player:レアンドロ・トロサール
うちの子です!と何回も言いたくなるような活躍。波が多い選手が目立つチームの中で、デ・ケテラエルとともに安定したクオリティでチームを牽引した。
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【ベスト8】ノルウェー

セルロートのWG起用を考える
フランス、セネガルと同居するグループは明らかに死のグループだったが、ノルウェーは難なく2勝を挙げることで突破。外野の声にも耳を貸さず、大胆なターンオーバーからフランス戦では休養を選択すると、ノックアウトラウンドではブラジルを撃破するという偉業を成し遂げるところまでは辿り着いた。ここまでいけば、フランス戦のメンバーの話に文句をつける人はいないだろう。成績的にはメジャートーナメントで華々しくこの世代のデビューを果たした大会だった。
第1節はセルロートとハーランドの2トップからスタートしたノルウェーだったが、4-3-3のセルロートがWGという形に徐々にシフト。明らかに合っていないやろ!と思いながらも、ロングボールのターゲットとしてサイドに起点を作るセルロートとフリーランでセルロートを追い越すリエルソンの動きによって、右サイドからボックスに迫る形を作っていく。
「ハーランドにロングボールのターゲットをやらせておけばいいのでは?」とか「セルロートも真ん中で競ればいいのでは?」という意見もわかる。この言説に対して、反論をあえて考えるのであれば、GKのニーランがハーランドが得意とするようなスペースに置くようなロングボールが苦手なのかなという説が1つ。ハーランドを長いボールで使う際は裏に抜ける動きがメインなので、スペースに置くようなフィードがあまり得意ではないのではないかという仮説。
ただ、イングランド戦を見ると「ハーランドを生かすのはあくまでフィニッシュ局面のみ」という説の方が濃厚な感じはした。ロングボールを蹴れば空中戦になっても収まるだろうけども、そこにエネルギーを使ってしまうとボックス内でのクオリティを継続的に出すのは難しいという考え方。短期決戦で90分出続けてもらうマネジメントをやるなら、サイドのセルロート&SBのオーバーラップで代替できる前進は彼らにやってもらえればという感じではないか。
逆に言えば、ボックス内の崩しに関してはかなりハーランドのクオリティに依存していたとも言える。相手を外すアクションだけではなく、ガブリエウを吹っ飛ばすような空中戦でも活躍。シティよりもサイドの崩しの手数をかけるのは難しいので、初めからそういうパワーを活かす競り合いをやろうという方向性だったのかもしれない。
ミドルゾーンでの加速がモノになればもっと前進は楽なのだろう。ウーデゴールの降りるアクションとベルゲ、ベルグのそれに伴うポジション調整はプレスを無効化することはできていたけども、ひっくり返して加速できる場面に繋げるケースはあまり見られなかった。
おそらくはこの先もハーランドを軸とする攻撃を繰り出していくのだろう。だからこそ、今回のセルロートを活かした前進のようなハーランドの負荷を軽減するための方策をいかに組むかが重要になる。
Pick up player:エーリング・ハーランド
実は空中戦を活かすという形はプレミアではあまり見ない。やろうと思えばこういうのも余裕でできます!ということを見せたということで、彼自身も微妙にマイナーチェンジした大会だった。
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【ベスト8】スイス

強豪らしいストーリー
正直に言えばグループステージはかなり恵まれた組み分けだったと言えるだろう。ボスニア・ヘルツェゴビナとカタールの2つを引くことができた時点でノックアウトラウンド進出はかなり堅かった感。さらに今回のレギュレーションが加われば、カタールに不覚を取るドローをしたとしても1つのミスまでなら問題ないよ!という感じで落ち着いてグループステージの突破を果たした。
カナダとの決戦を制して首位通過を果たしたことで、ノックアウトラウンドの山もかなり緩め。ノックアウトラウンドでなかなか勝つことができないというガラスの天井を破る手助けとなった。
大会全体の流れ作りもうまくいったのが今大会のスイス。バルガスやマンザンビといった控えから起爆剤となる選手が早々に出たことで90分の中でブーストを作ることが非常にうまくいった印象だ。
中でもマンザンビの存在感は抜群。反転から相手を外してゴールに一気に向かうことができるスピードと、そこからの得点力でハイラインの相手に対するワクチンとしてかなり効果的にゴールに迫っていた。
意外だったのはハイプレスに対して、降りて受けるようないわゆるケインみたいなプレスの回避の仕方でも前進に関与していたこと。裏一発型だと思っていたのだけども、それだけじゃないことを匂わせたのは今後のキャリアが楽しみになってしまう。
ただ、今大会のスイスを語る上で重要なのはこうした起爆剤を支える土台が非常にしっかりしていたこと。後方のビルドアップの安定感は抜群で、ジャカが浮けばここから自在に攻めることができる。相手のプレスが弱まる終盤に落ち着いたゲームメイクができることで、10人になったアルゼンチン戦を除けば相手に対して過剰に受ける場面がなかった。押し下げられたところから回復できないチームが粘り切れない傾向があるこの大会において、このスキルは地味ながら重要なものだったりする。5バックにシフトするチームはスイスのようなことができないから、次善の策として引きこもるのだろう。
決勝トーナメントでの勝利は久しぶりではあったが、大会の中でコンディションを上げていき、徐々に内容を仕上げていくという振る舞いは強豪そのもの。マンザンビの欠場にエンボロの退場と「たられば」をアルゼンチン戦に残してしまったのは悔やまれるが、スイスという国が確実に強くなっていることを証明する大会だった。
Pick up player:グラニト・ジャカ
アルゼンチン戦の最後の失点は彼が起点。だけども、彼がミスをしてしまうならば仕方がないというパフォーマンスを大会を通して見せ続けた。
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