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【16位】フラム
3勝3分6敗/勝ち点12/得点10 失点20
背骨の弱体化を止められなければ・・・
今季は残留したチームは継続して監督を指揮させるチームが多い。そのため、戦い方のひな形が昨シーズンから変わっていないケースがみうけられる。マルコ・シウバが留任したフラムもそのチームのうちの1つ。ベースとなっている形もプランも昨シーズンを継続した形になっている。
しかしながらひな形が同じでも中身が違うというのが今季のフラムである。当然大きなダメージになっているのはミトロビッチの移籍である。前進、フィニッシュ、そして前線からの守備とあらゆる側面から貢献してきたエースの不在はやはりダメージが大きい。
代役候補となっている選手は3人だがどのプレイヤーも一長一短。もっとも長い時間試されたヒメネスはボックス内でのパワーヘッダー型。しかしながら、いざというときにCFが降りてボールを受けるのがフラムのゲームモデルだが、この役割はミトロビッチにはピッタリだが、ヒメネスにはやや不適なように思える。
ヒメネスが苦しいのは本分であるボックス内の脅威も以前ほどでなくなってしまっていること。フィニッシュは健在であるならばやりようは全然あると思うが、そうでもないのがしんどいところである。
ヴィニシウスは昨シーズンからスポット起用で短時間であればインパクトを残すことができているが、長い時間でコンスタントに安定したパフォーマンスを見せることはできていない。ムニスはまだ修行中という感じ。3人は一長一短であり、チームの背骨を失ってしまった影響はなかなか解消できていない感じである。
よって、今フラムが抱える問題はモデルそのまま、中身の変化によるスケールダウン。やっていることはそのままでもできていることが少ない。3人で崩しにいくサイドの攻撃の精度に関してもやや落ち込み気味なのがしんどいところ。頼みのミドルプレスも牙を向く試合は数えるほどである。
現状で言えば後方とのチームとは勝ち点差はあるが、既報通りパリーニャが冬に退団してしまうとややピリッとするところ。当然代役はリストアップしていると思うがフィットに時間がかかる可能性もあるだろう。CFに続き背骨の安定感が悪くなると、さらにシビアになる。
バックラインが安定しているのが救いではあるが、現状スカッドでの上がり目の少なさは他チームと比べても気になる部分。冬の市場での立ち回りを間違えば、もしかする可能性も否定できないというのが現状の立ち位置だ。
Pick up player:アレックス・イウォビ
エバートンでのおんぶに抱っこロールから解放されたけども、パリーニャがいなくなれば再びピッチのあちらこちらを全介抱スタイルに回帰する可能性もあるだろう。
今季の道のり
【17位】ボーンマス
2勝3分7敗/勝ち点9/得点11 失点27
強度勝負が不安定な戦績につながっている
昨年、躍進を遂げたボーンマス。それだけに立役者のオニールを解任したことは今夏のプレミアの監督人事の中では驚きと言えたものだった。
新たに招聘したイラオラ、そして意欲的な補強。ボーンマスとしてはさらに上に登るための一手だったのかもしれない。しかしながら、今のところこの監督交代はなかなかいい方向に行っていない。
序盤は強豪とのカードが多かったが、その相手にも立ち上がりには面食らわせることができていた。リバプールやトッテナムといったトップ4に名前を連ねている相手でもボーンマスの特攻ハイプレスには苦戦。自陣での致死性のミスを連発し、危険なシーンを作られていた。
だが、そのリバプール戦に代表されるように非常に逆転負けが多いのが今のボーンマス。リードを奪った6試合のうち、勝利したのは2つだけ。半分の3回は負けにまで転じてしまっている。
おそらくこれはプレスの耐用時間があまりにも短いせいだろう。実力のあるチームは10-15分ほどで強度一辺倒のプレスを見切ることができるのが今のプレミアリーグ。さらにリバプールやトッテナムに通用しかけたのも、彼らがまだシーズン序盤のエンジンがかかっていなかったからという側面も強い。アーセナルは全くプレスがハマらず、シティには強引なプレスを行うことすらできなかった。
昨年のオニールの政権下ではミドルゾーンで我慢する守備ができていたのが大きかったが、今季は良くも悪くも振り切っているので安定感がない。そういった側面はここまでのところでは悪い方向に転がっている感がある。
個々のポテンシャルに関してはボトム5の中では抜きん出ている。特にアタッキングサードにおける充実度で言えば、一つ上にいるフラムに引けを取らないレベルとなっている。戦力的にはアドバンテージはあると見るのが妥当だろう。
どれだけ勝ち点を詰めるかはエネルギーの強度勝負に振り切った際に、どこまで通用する相手がプレミアにいるかである。CL終わりで疲労困憊のニューカッスルには通用したが、エバートンには何もできずに踏み潰された。どの相手にも何もできないということはないだろうが、試合を落ち着かせるところの巧みさを身につけることができなければ、意外と苦戦は長く続くかもしれない。
Pick up player:マックス・アーロンズ
期待の有望株として長年注目されている存在だが、なかなかそこから先に弾けないアーロンズ。今季のパフォーマンスはボーンマスのチームとしてのパフォーマンスと同じくどうしても波がある。ムドリクを完全に締め出したチェルシー戦の出来で安定すれば飛躍のシーズンになる可能性もあるのだが。
今季の道のり
【18位】ルートン・タウン
1勝3分8敗/勝ち点6/得点10 失点22
リバプール戦で上昇気流に乗りたい
わかりやすいキックアンドラッシュという看板を引っ提げてプレミアに初見参したルートン・タウン。本拠地のケニルワース・ロードは準備が間に合わず、ホーム開幕戦が延期になるというトラブルには見舞われたものの、ファンはプレミア昇格でお祭りムードに包まれていることだろう。
しかしながら、開幕からの戦績の話をするとなるとなかなか苦しい状況が先立ってしまうのが現状だ。持論として、プレミアを席巻できる昇格組はどんな相手にも押し通すことができるスタイルがあることが共通点として挙げられる。ルートンはその点は問題はないだろう。長いボールを軸に一気に前進を狙い、サイドからのクロスを主体としてアタッキングサードを攻略する。プレミアのチームでいえばトニーがいる時のブレントフォードのようなスタイルが持ち味である。
だが、モリスはトニーではないし、カミンスキーはラヤではない。直線的な攻撃でゴールまで持っていけるセンターラインの資質が超プレミアクラスだからこそ、ブレントフォードは通用した節がある。そうしたセンターラインの強度ではルートンは物足りない部分はある。
両サイドのWBであるカボレとダウティーは十分に通用しそうな雰囲気はある。スピードに乗った攻撃をやらせればカボレは一気に陣地回復が期待できるし、ダウティーの左足はアタッキングサードの仕上げにはうってつけ。彼らを生かすためにも中央でボールを収められる仕組みが欲しいところである。
守備においては押し込まれたフェーズがどうしても苦しくなる。前がかりにプレーできている時はバックラインも相手の前線に厳しく当たることができているからいいのだけども、それができなくなった時は遅れてプレスに出ていくため、バックラインに穴が飽きやすいという欠点があるのが気になるところ。裏を取られた時にカバーができるスーパーCBはいないので、こうなると苦しい。ボックス内での守備強度がない分、出ていくプランにするのは理解ができるのだけども。
もっとも明るい兆しがないわけではない。中盤で命運を握るのはバークリー。開幕直後は冴えない出来が続いていたが、古巣の宿敵であるリバプール戦ではこれまでとは見違えるパフォーマンスを披露。ボールを奪い取り、そこから一気にボールを縦につけるフェーズで躍動。これができれば、ルートンの攻守のメカニズムは劇的に良くなる可能性はある。きちんとポテンシャルを発揮できればやはりこのチームでは次元が違う。
バックラインではカミンスキーが少しずつチームを救うビッグセーブを見せているのが吉兆。正直、GKのチートセーブには頼らざるを得ない状況なだけに、覚醒すれば残留という目標が見えてくるだろう。バークリーとカミンスキーが躍動したリバプール戦はギリギリのところで3ポイントを逃してしまったが、パフォーマンスを上げるきっかけになるのだとしたらこの日失った2ポイントは安いものかもしれない。
Pick up player:チドジー・オグベネ
タウンゼントともにシャドーの位置からチームに安定した推進力を見せている。安心安定のブレントフォード産アタッカーはチームをさらに上に押し上げることができるだろうか。
今季の道のり
【19位】シェフィールド・ユナイテッド
1勝2分9敗/勝ち点5/得点10 失点31
地道な改善しか道はない
開幕から10戦未勝利という長いトンネルに入り込んでしまったブレイズ。それでも残留圏とはまだ1ポイント差。ボトム5は全て1桁勝ち点というのが今季のプレミアリーグである。
現状ではこれといった確立されたスタイルがないのが一番の問題点になるだろう。消極法的に撤退形5バックが主流となっており、序盤戦のシティやトッテナムを苦しめることはできているが、これは開幕直後の低調な相手だから通用した感が否めない。各チームが完成度を高めてくる中盤戦以降は機能するかが怪しい。
現に大量失点したニューカッスル戦やアーセナル戦では1つの失点を皮切りに数珠繋ぎ的に失点を重ねてしまっている。撤退してのローラインブロックでも盤面的には相手を捕まえられているのに、個人のスキルで外されてしまったりあるいはファウルを犯してしまったりなど簡単に後手を踏んでしまう場面が多い。こうなってしまうと厳しいものがあるだろう。
保持においては中盤を経由しての幅を使った攻撃が中心になるが、トレードマークというほどの1試合の中でも持続力はない。トップのアーチャーとマクバーニーが好調を維持しているのは救いだが、彼らにボールを届けるメカニズムが確立できないのだ。ロングボールに逃げないのはトップにいきなりボールを当てても収まらないという判断からだろう。
監督が解任されてもおかしくない成績が続いているにも関わらず、交代に踏み切れないのは監督交代で解決できる部分が限られているからという発想なのかもしれない。現状では「こうすればいいのに!」という部分はあまり思い付かず、撤退守備に関しても精度の低いショートパスでの繋ぎに関しても「仕方ない」という感想が先立ってしまう。
ということで改善の道も地道だ。5バックの強度が通用する時間を少しずつ伸ばすしかないし、ショートパスで2トップに預けることができる確率を少しでも上げなければいけない。逃げ道がない分、ルートははっきりしていると開き直るしかない。
開幕9試合で1ポイントしか取れなかったチームはプレミアで過去に4例。このブレイズで5例目であり、一度も残留したケースはない。未知の領域に挑むために地道な改善を積み重ねたい。
Pick up player:ウェス・フォデリンガム
やはり1失点目を喫するとパフォーマンスがガクッと落ちる傾向があるので、GKには理不尽セーブを期待したいところ。地道な改善を骨を折れずにトライするためにも最後方の粘りは必須要件になるだろう。
今季の道のり
【20位】バーンリー
1勝1分10敗/勝ち点4/得点9 失点30
引き込むビルドアップの収支
チャンピオンシップではショーン・ダイチによって長年積み重ねられた古き良きキックアンドラッシュのスタイルを一新しながらの快進撃が伝えられたコンパニのバーンリー。満を持してのプレミア挑戦となったが、ここまでは苦戦が続いている。
ルートン同様やりたいスタイルははっきりしている。ショートパスによるポゼッションをベースにしたつなぐサッカーが今季のバーンリーの持ち込んできたスタイルだ。
しかしながら、このメソッドの実現には苦戦がともなっている。大きな問題点の源泉は後方に人数をかけすぎている点である。これは2つの点で問題になりうる要素だ。1つは降りる選手が多い分、プレス志向の強い相手であればプレス隊を自陣側に引き寄せてしまうこと。バーンリーの選手ではプレミアでの寄せの速さにおいて、安定した保持ができる選手があまり多くはない。それだけに今はこの後方に人数をかけてのビルドアップは相手のプレス隊を呼び寄せてカウンターのチャンスを供給するだけになってしまっている。
もう1つの問題点は前線にボールが渡った時の選択肢が少なくなる点である。CHやSHが低い位置を取るため、アタッキングサードでの選択がグッと少なくなってしまい、どうしてもボールが渡る選手は個人で2枚の対面の相手を打開しなければいけなくなる。終着点を務めるコレオショはプレミアでの十分に通用するポテンシャルのある若武者。だが、いくらなんでも毎回2人の選手を抜き続けるほどスーパーではない。
というわけで現状ではチームが志向するスタイルの収支があっていない状況になる。ポゼッション要素を活かすのであれば、相手のプレス隊を引き寄せることをプラスに転じさせる要素が欲しい。例えばトラフォードからのスペースのある前線へのフィードがもっと定着すれば大きい。フォスター(現在は療養中だが)、アムドゥニなどポテンシャルは十分な選手は前線にいる。
さらにはアーセナル戦では敗れてしまったもののテイラーやバイアーなど後方のブロック守備は悪くない出来を見せている。このクオリティを維持しつつ、前線へのルートを整備する方策が見えれば、事態が好転する可能性も十分にあるだろう。
Pick up player:ルカ・コレオショ
アメリカとイタリアの年度別代表の経歴をもつ19歳。この年齢にしてすでにバーンリーの中では別格感。スペースさえ与えられればサリバと張れるスピードを持っているし、正対できれば冨安を振り回すことができる。彼に1on1の状況を安定して作ることができれば、バーンリーのアタッキングサードの精度は大幅に改善するだろう。
今季の道のり
つづく!