アーセナル、23-24シーズンの歩み。
第1節 ノッティンガム・フォレスト戦(H)
トライを続けての2得点を守り切る
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シティに続き、2番手の登場となったのはアーセナル。ホームで昨季優勝の可能性を消滅させられたフォレストが開幕戦の相手となった。
フォレストの5-4-1の守備に対して、アーセナルはボール保持で対抗。まさしく昨季の対戦と似たような構図となった。アーセナルはSBにトーマスを置く布陣でスタートするが、右サイドからアンカーポジションに移動することもしばしばであり、純粋なSBという感じではないのは明らか。時にはライスをサイドの追いやるような形で1人でボールを動かす役割を担う。
というわけでアーセナルの保持におけるベースのフォーメーションは3-1-6のような形。後方を手薄にしてでも前方に人を置くのが今季の基本なのか、後ろを重くするフォレスト対策なのかはこれから見えてくる部分だろう。
高い位置をとる選手たちの連携は正直もう一歩という感じ。ナローなスペースをこじ開けるきっかけは掴んではいたが、生かし切るところまでは至らない。それでもカウンター対応では12分のジョンソンの抜け出しを除けば、基本的には押し込み続けながらトライを続けていくことはできた。エンケティア、サカといった前線の選手がこじ開ける形でのゴールが立て続けに生まれたのは、攻め続けることができたご褒美とも言えるだろう。
後半はだらっとボールを動かしながら時計の針を進めていく方針にシフトするアーセナル。ティンバーの負傷交代で冨安が登場したというのも、ガンガン攻撃的にという姿勢に歯止めをかけていたかもしれない。
それでも早い段階でのサイドチェンジは有効。5-4-1をキープしたまま高い位置からボールを奪いたいフォレストにとっては狭い方向に誘導することが重要だったので、アーセナルのポゼッションはそれを回避する方向性として鬱陶しかったと言えるだろう。
試合の流れを変えたのは昨シーズンの残留の立役者であるアウォニイ。今季は足首の負傷でプレシーズンは出遅れてはいたが、途中出場を果たすと同じく途中出場でデビューを果たしたエランガのアシストから追撃弾をゲット。ワンチャンスから反撃の狼煙を上げる。
ゴールを奪われた直後のプレーは怪しかったアーセナルだが、すぐさま落ち着きを取り戻したのは悪くはないだろう。リトリートの成分を増やしても、トロサールやハヴァーツといった陣地回復が得意な選手が前線で貢献していたため、反撃の要素を残していたのはとても良かった。得点も決まれば盤石なのだけど。
最後はガブリエウの投入でクローズに成功したアーセナル。1点差ながら大体の時間の制御し、開幕戦を勝利で飾った。
ひとこと
アーセナルは昨季からすると出力は低めだが、CLとの二足の草鞋や後半戦にピークを持ってくることを踏まえれば、傾向としては正しいだろう。今季は右肩上がりのシーズンを送ることができるか。
試合結果
2023.8.12
プレミアリーグ 第1節
アーセナル 2-1 ノッティンガム・フォレスト
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:26′ エンケティア, 32′ サカ
NFO:82′ アウォニイ
主審:マイケル・オリバー
第2節 クリスタル・パレス戦(A)
右サイドを助けるエンケティアが勝利の立役者
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共に開幕戦を勝利で飾った両チームによるマンデーナイトの一戦。アルテタは就任以降マンデーナイトのアウェイゲームは4戦全敗と相性の悪い「魔の月曜日」に挑むことになる。
試合は大方の予想通り、アーセナルがボールを持ちながらのスタートとなった。前節に比べると、アンカー気味に鎮座したのはトーマスからライスになっている。トーマスもフラットに並びつつサイドに支援に出ていく形だったので3-1-6というよりは3-2-5をベースとした形に近くなっている。
アーセナルの攻撃は右サイドが中心。ホワイトのオーバーラップこそ減少しているが、長く鋭いパスを出しつつ、即時奪回の後方支援ができるトーマスもそれなりにSBからの貢献度が増えてきているなと感じる。
しかし、この日はパレスのサカ対策が盤石。特にカットインしながらのラストパスやシュートをシュラップやレルマが警戒しており、前節のようなエリアへの侵入があまり見られない。
サカが苦しむ右サイドのヘルプとして効いていたのはエンケティア。サカの横ドリブルを警戒するパレスの守備陣の狙いの裏をかくように、縦方向の抜け出しからチャンスメイク。DFの間にゴリゴリ入っていくフィジカルも相まって、サカに代わり右サイドからのエリア侵入に貢献する。
一方のパレスは攻撃の機会が限定的。ザハとオリーズがいない分、直線的な攻撃の鋭さは明らかに目減り。かつ1枚はがせるサイドアタッカーがいない分、エドゥアールは中央で山なりのクロスをサリバやホワイトと競り合わなければいけない羽目になっていた。
押し込んでの攻略が後半も続くアーセナル。前半と同じく右サイドを中心に攻略の糸口を探していく。すると、先制点はセットプレーから。マルティネッリの素早いリスタートから裏を取ったエンケティアをパレスの守備陣はケアできず。慌てたジョンストンがエンケティアを倒してPKを献上。これをウーデゴールが決めてアーセナルが先制する。
しかし、なかなか終盤に楽をさせてもらえないのが今季のアーセナル。冨安の退場をきっかけに一気に守りにリソースを割かないといけない状況に追い込まれる。
5-3-1を組んだアーセナルに対して、中央への縦パスのコンビネーションとサイドアタッカーの増員のダブルパンチで攻め立てるホジソンのパレス。じりじりとゴールに近づく手ごたえを徐々に得るようになる。
しかしながらアーセナルは3枚替えでさらに強固なブロックを組む。キヴィオルとジンチェンコの投入と、ジョルジーニョによる保持での時間キープを駆使しながら最後は何とか安全に着地に成功。2年連続でアウェイでの開幕戦としてセルハースト・パークを制圧したアーセナル。2連勝でブライトンとシティの追走に成功した。
ひとこと
保持でも兆しを見せていただけに冨安の退場はいろんな側面から残念。
試合結果
2023.8.21
プレミアリーグ 第2節
クリスタル・パレス 0-1 アーセナル
セルハースト・パーク
【得点者】
ARS:53‘(PK) ウーデゴール
主審:デビッド・クート
第3節 フラム戦(H)
ヴィエイラのブーストで逆転するも…
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3連勝を目指すアーセナルの出鼻を挫いたのはアンドレアス・ペレイラの先制ゴールである。誰もパスの先にいなかったサカのバックパスをラインを上げた動きの流れで広い、先制点をあっさりとゲット。アーセナルはこれで2023年3回目の1分での失点となった。
だが、ここからはボール保持で正しいアプローチはできていたように思う。4-4-2ベースで構えるフラムに対して、キヴィオルとホワイトがフリーになる形で起点を作る。
特に明確に狙っていたのはマルティネッリへの対角パスである。フラムがアーセナルへのスライドをきっちりやることを利用して、大きく左右に振ることでボールを受けたマルティネッリが正対で相手と向き合う間合いをあたえていた。
ただし、アーセナルのサイド攻撃に関しては少々誤算もあった。左サイドではそのマルティネッリがプレー精度の部分で決定打にならず。特にクロスの精度が甘く、カットインしてきた際のプレー選択にも疑問の余地が残る形に。
右のサカはロビンソンを剥がせるシーンこそあるが、ヘルプに来たパリーニャに潰されてしまう場面が目立つ。その分バイタルを使うなど臨機応変な対応もできず、アーセナルは両サイドアタッカーからPAにボールを届けることにやや不具合を抱えていた。フラムからすればカウンターを視野に入れつつ、リードを維持することができたおいしい展開だったといえるだろう。
後半、アーセナルは対角パスを減らして同サイドのサポートを増やしつつ、パスワークからの打開を図っていく。しかしながら、これが特に左サイドにおいて機能不全と見るや、すぐさまシフトチェンジ。ジンチェンコとヴィエイラを投入することで実質昨季の形に回帰する。
この変更に応えたのはヴィエイラ。大外でのマルティネッリのサポートとエリア内への侵入やラストパスという要求に満点回答。巧みなオフザボールの動きからエリア内に侵入してPKを得て同点のきっかけを作ると、左サイドからのクロスでエンケティアのゴールをアシスト。一気に逆転する起爆剤になった。
バッシーの退場で10人になり、ペレイラの交代でカウンターの出力も下がるというフラムにとっては逆転以外にも苦しい状況がある展開。しかし、フラムもジンチェンコのパスをカットしたところからトラオレが踏ん張りなんとかCKをゲット。これを合わせたパリーニャが決めて試合を振り出しに戻す。
最後まで攻め手を緩めなかったアーセナルだが、10人相手のフラムの高さを破ることはできず。開幕3連勝チャレンジは失敗に終わってしまった。
ひとこと
仕組み的なうまくいったこと、いかなかったことと終盤の逆転劇は割と別物。それだけにアーセナルは結果が欲しかった。
試合結果
2023.8.26
プレミアリーグ 第3節
アーセナル 2-2 フラム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:70′(PK) サカ, 72′ エンケティア
FUL:1′ ペレイラ, 87′ パリーニャ
主審:ポール・ティアニー
第4節 マンチェスター・ユナイテッド戦(H)
神は細部に宿る
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上位勢がなかなかポイントを落とさない序盤戦。直接対決はいつも以上に重要な意味を持っている感がある23-24シーズンの立ち上がり。代表ウィーク前のラストマッチはアーセナルとユナイテッドの大一番である。
どちらのチームもボールを持つことにはこだわりがある様子の立ち上がり。ユナイテッドはCBの間にCHもしくはオナナを挟むことでバックスは3枚を形成するスタンス。アーセナルはそれに対して無理に枚数を噛み合わせることなく、パスの出どころである中盤を警戒。
ユナイテッドがリンデロフにボールを入れるときにはアーセナルも特に集中してプレッシングに行くこともあったが、オナナを経由してプレスを無効化するユナイテッドに対しては無理にプレスの強度を上げない選択をする立ち上がりとなった。
アーセナルはトーマスが不在のため、ジンチェンコが絞る22-23仕様。しかしながら、形をシンプルに3-2に固定しないあたりは不定形を好む23-24風味も残されていた感もあった。
オナナを使った無効化でプレスを回避することができるが、前に進むことができないユナイテッドに比べれば、アーセナルはWGという明確な届け先がある分敵陣への侵入はスムーズ。ユナイテッドはパスコースを咎めるよりも2列目にサカとマルティネッリへのヘルプとなるようなプレスバックを求めることで自陣の守備を固める。
後ろに重たい相手の守備に対して、攻め切る頻度が上がらないアーセナル。チャンスの糸口となるのはトランジッション。特にライスの前に出ていく迎撃からは大きなチャンスが生まれることがあった。
ユナイテッドの先制点はこのライスの迎撃をひっくり返したところから。ハヴァーツのパスミスをエリクセンがかっさらったところから攻撃は一気に加速。ラッシュフォードへのラストパスを通し、最後はホワイトとサリバのDFを2枚抜きする素晴らしいゴールを決める。
ただし、アーセナルの反撃もすぐさま。左サイドの旋回からマルティネッリがマイナス方向に折り返して、ウーデゴールのミドルを演出。一瞬で追いつくことに成功する。
均衡して迎えた後半、ユナイテッドのブレーキになったのはマルティネスの負傷。後半もキャリーからチャンスメイクしたCBの不在で後方からの持ち運びは鳴りを潜めるように。
デビュー戦となったホイルンドはカウンター時のポスト役としては機能したが、ロングボールの収めどころとしては徐々にガブリエウに対応されて苦戦。ユナイテッドはアーセナルのパスのミス待ちからゴールを狙う形が主になっていく。
しかし、そのアーセナルもミスをすることでユナイテッドにエサを献上。ガルナチョがネットを揺らした場面はわずかな判断でオフサイドにしたガブリエウのファインプレーだった。
そして、後半追加タイムにセットプレーから勝ち越しゴールを決めたアーセナル。ライスの決勝ゴールでリードを奪うと、終了間際にジェズスのゴールで勝負あり。最終的には3-1とユナイテッドを引き離したアーセナルが無敗をキープした状態で代表ウィークを迎えた。
ひとこと
神は細部に宿るのだとしたら、神様を引き寄せたのはガブリエウだろうなと思う。
試合結果
2023.9.3
プレミアリーグ 第4節
アーセナル 3-1 マンチェスター・ユナイテッド
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:28’ ウーデゴール, 90+6‘ ライス, 90+11’ ジェズス
Man Utd:27‘ ラッシュフォード
主審:アンソニー・テイラー
第5節 エバートン戦(A)
ショートコーナーへのこだわりが鬼門突破のキー
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2017年以来、グディソン・パークでの勝利がないアーセナル。かつてのアーセナルのお得意様であったエバートンはこのクラブにもルーツを持つミケル・アルテタの就任を境にいつの間にか苦手な相手へと変貌している。
ボールを持つのは当然アーセナル。バックラインの可変性は人についていく基準を持つエバートンに迷いを与えている感があった。プレスのスイッチ役となりたいドゥクレはなかなかバックラインにプレスをかけることができず、エバートンは陣地回復ができるような強気なプレスをかけることができない。
アーセナルはバックラインからWGにボールをつけに行くことで前進。サカとマルティネッリの大外から相手の陣地を押し下げていく。風向きが変わったのはマルティネッリが裏抜けからネットを揺らした20分。このプレーがオフサイドで得点は認められず、その上にマルティネッリは負傷交代。アーセナルとしては踏んだり蹴ったりのワンプレーとなる。
左サイドにユニットで組み込まれたトロサールは奥を取る動きが苦手。これにより左からの押し下げが効かなくなってしまったアーセナル。中央での強引なパスミスからエバートンにチャンスを与えるように。こうしたミスからボールを渡せば、エバートンのプレスは勢いずく。右のサカにも高い前を向かせないコンセプトでアーセナルの前進を制限する。
エバートンのカウンターはドゥクレがライスを超えられるかどうかが一つの目安。攻め上がりから場所をピンチになる機会や、単に交わされてしまうことでピンチになることもしばしば。しかし、エバートンにとってはライスを超えても、ガブリエウとサリバを凌駕しなければゴールにはたどり着かない。この部分で解決策を見つけられないエバートンはなかなか有効打を放てないままハーフタイムを迎えることとなる。
前半の終盤から後半にかけてアーセナルの左サイドではジンチェンコやヴィエイラが裏抜けの動きを見せており、左サイドに奥行きをもたらすトライを行っていた。このように後半のアーセナルのテーマはサイド攻撃の再整備。左サイドは大きな裏を取るフリーランだけでなく、ミクロなポジションの動き直しを行いながら少しずつ連携を深める。右ではペナ角付近のライスがサカ、ホワイト、ウーデゴールのサポートを行っていた。
押し込む機会が増えるアーセナル。2列目や前線が押し下げられるエバートンはボールを奪っても前進のきっかけをつかめず、アーセナルの即時奪回につかまり続けるように。こうなると、展開は前半以上にワンサイドゲームになる。
押し込むことで機会が増えるのはセットプレー。アーセナルは後半のCKをショートコーナーでのリスタートにこだわりながら崩していく。おそらく高さの観点から放り込むだけでは難しいと思ったのだろう。
これが功を奏したのが先制点。右サイドで抜け出したサカがマイナス方向でフリーになったトロサールに折り返し、これを左足で逆サイドのネットに叩き込む。トロサールはやや流れの中では低調な部分もあったが、ボックス内でのプレー精度と得点関与の比率はさすがの一言である。
先制点以降のアーセナルはエバートンのプレスを回避しつつ、ミドルゾーンでの加速から追加点を狙う。プレス回避の精度の高さは昨季からの完成度の向上と、ラヤ投入の効果を感じることができる。
バックラインにはおなじみになってきた冨安の投入で試合をクローズ。キャルバート=ルーウィンの高さも両CBを軸にきっちりと封じ、クリーンシート達成。アルテタの魔境克服はついに成功。好調のアウェイで無敗をキープしたままノースロンドンダービーに向かう。
ひとこと
流動性ゆえの失敗や枠組みの中の工夫をどれだけ評価するかはまぁ人によって違うだろうなと思う。
試合結果
2023.9.17
プレミアリーグ 第5節
エバートン 0-1 アーセナル
グディソン・パーク
【得点者】
ARS:69′ トロサール
主審:サイモン・フーパー
第6節 トッテナム戦(H)
主導権を握ったアーセナルとロメロを救ったソン
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実に34年ぶりの無敗同士での衝突となったノースロンドンダービー。文句なしで今節最も注目のカードといっていいだろう。
注目の一戦でまず仕掛けたのはアーセナル。高い位置からプレスでトッテナムの守備陣のプレス耐性を図る。アーセナルはウーデゴールが左からプレスをかけていく形でトッテナムのビルドアップを右サイド側に誘導。そのままハイプレスに移行し、狭いスペースでボールを囲うように守る。
アーセナルのこのハイプレスは相当に機能したといえるだろう。降りるマディソンもライスが制圧し、ジェズスは列を超える形でプレスをかけ続けてトッテナムのパスワークにミスを誘っていく。
一方のトッテナムのハイプレスはアーセナルほど機能しなかった。ラヤはフリーでボールを持てる機会が多かったため、トッテナムのプレス隊を左右に振る形でポゼッション。さらには内に絞るジンチェンコから大外のパスコースを使うことで、サイドに1on1の形を作っていく。
この土俵でクオリティを見せたのはサカ。右からのカットインでミドルを放つとこのシュートがロメロのオウンゴールを誘発。アーセナルが右の定点攻撃から先手を奪う。
プレスと右サイドからの攻撃という2本柱で主導権を握るアーセナル。しかしながら徐々にトッテナムは反撃。アーセナルのプレスが鈍ったところを見逃さず、マディソンやビスマからクルゼフスキに大きな展開を飛ばすことで前進する。クルゼフスキを追い越す選手を作る形でアーセナルのバックラインを乱すと逆サイドで折り返しをジョンソンが淡々と狙う。
1回目のサイド攻撃はラヤのファインセーブによって阻まれたが、2回目はマディソンの左サイドの突破からソンがわずかなコースを切り拓くシュートで試合を振り出しに戻す。アーセナルとしてはホワイトかライスのカバーでマディソンの侵攻を防ぎたかったところだろう。
後半、アーセナルはハヴァーツの投入でプレス強化。再び敵陣に押し込む時間を作る。すると、セットプレーからロメロのハンドでトッテナムはPKを献上。またしても失点に絡んでしまったロメロを救ったのは、再開直後にジョルジーニョに思い切ったプレスを敢行し、ソンの独走ゴールを演出したマディソンだった。
失点後、アーセナルは悪い流れが続いたが、徐々に立て直すと最後は押し込む時間が長くなるように。しかしながら、交代選手が流れの波に乗ることができず。サイドでも中央でも軸がわからず、攻めとして責任を取るプレーができる選手がいなくなってしまっていた。
トッテナムもカウンターからサリバの壁を破れる交代選手はおらず、試合はそのまま終了。白熱したノース・ロンドン・ダービーは2対2の引き分けで終わった。
ひとこと
優勢だったのはアーセナルだが、やれたこととやれないことの整理をしつつ敵地からポイントを取って帰ったトッテナムの方がファンの満足度は高いかもしれない。
試合結果
2023.9.24
プレミアリーグ 第6節
アーセナル 2-2 トッテナム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:26′ ロメロ(OG), 54′(PK) サカ
TOT:42′ 55′ ソン
主審:ロベルト・ジョーンズ
第7節 ボーンマス戦(A)
プレスをいなしてからはワンサイドゲームに
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エバートン戦で負傷したマルティネッリを皮切りに、徐々に怪我人が増えてきたアーセナル。今週はトロサール、サリバ、ヴィエイラ、サカ、ライスといった面々に新たな怪我の話がささやかれるようになったが、マルティネッリ以外はメンバー入りに成功。ボーンマスにはそれなりのメンバーを揃えて乗り込むことができた。
トッテナム、リバプールにそうしてきたようにアーセナルのバックラインに対しても激しいプレスを行うボーンマス。ソランケの誘導で狭いスペースに追い込む形に立ち上がりのアーセナルは苦戦していた。
しかしながら、5分もすればアーセナルはプレスを鎮圧。ラヤがCBの一角のように振る舞うことでソランケのプレスの切っ先を鈍らせると、ライスやウーデゴールなどがボーンマスの中盤を引き付けることで中盤を空洞化。右サイドで浮いているホワイトからボールを運ぶことでプレスを脱出するように。左サイドのジンチェンコが中盤中央で縦パスを引き取る場面もあり、左右のSBからアーセナルは自在に前進ができるようになる。
敵陣に入り込めるようになるとアーセナルは17分に先制。ウーデゴールの右サイドからのクロスをジェズスがクロスバーに当てると、跳ね返りをサカが押し込んで先手を奪う。
反撃に出たいボーンマスは動きの大きい中盤でマークを外し、前線のタヴァニアにボールを預ける。だが、球離れが悪くなかなかボールが思うように回らない。もちろん1人で壊せるのならばそれでもいいが、アーセナルのDF陣に個人で穴を開けるのはなかなか難しい。
そうこうしているうちにアーセナルはトランジッションから追加点。左サイドでボールを奪ったジンチェンコがエンケティアをエスコート。PKを誘発して前半のうちにリードを2点差に広げる。
2点のビハインドを背負ったボーンマスは後半もプレスを強める。だが、これもすぐさまアーセナルに鎮圧。押し込まれるワンサイドゲームに持ち込まれる。
サカのドリブルをきっかけに左右にスウィングするとウーデゴールがクリスティに倒されてPKを獲得。このPKをハヴァーツが決めて加入後初の得点を記録する。
少しラインを下げたアーセナルは相変わらずのドリブル特攻を繰り返すボーンマスに対して、カウンターで応戦。スミス・ロウを中心とした交代選手のハリのあるパフォーマンスで試合はダレないまま終盤戦まで進んでいく。アーセナルとしては理想的な展開だろう。
ゴールショーのトリを飾ったのはホワイト。セットプレーから4点目をしずめて完勝に花を添える。
苦戦が予想される戦前のスカッド事情を覆して快勝を果たしたアーセナル。優勝候補にふさわしいパフォーマンスで勢いをつけて、いよいよ次節王者に挑むこととなる。
ひとこと
プレス回避による相手の狙いのへし折り方、そして試合の握り方。どちらの観点でも完璧な強いチームの90分だったといえるだろう。
試合結果
2023.9.30
プレミアリーグ 第7節
ボーンマス 0-4 アーセナル
ヴァイタリティ・スタジアム
【得点者】
ARS:17′ サカ, 44′(PK) ウーデゴール, 53′(PK) ハヴァーツ, 90+3′ ホワイト
主審:マイケル・サリスベリー
第8節 マンチェスター・シティ戦(H)
勝負の3枚替えをひっくり返したアーセナル
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昨季の優勝を争った両チームがコミュニティ・シールドに続いて、今季2回目の激突。アルテタにとってはリーグのシティ戦で12連敗という屈辱的な記録を止めるチャレンジとなる。
序盤にペースを握ったのはシティだった。セットプレーからファーのグバルディオルに詰めたアケと最初の決定機は試合開始早々のもの。意気込んだアーセナルに面食らわせる立ち上がりとなったと言えるだろう。
その後もシティはプレッシングからアーセナルに圧力をかけていく。リコ・ルイス、アルバレスをスイッチ役としていつもと異なる4-2ビルドを組んだアーセナルのバックラインにプレッシャーをかけていくと、ラヤにあわやというミスを誘うところまで辿り着く。出し手には常に制限がかかっているため、アーセナルの受け手は相手の厳しいマークに苦しむことになる。特にグバルディオルの厳しい寄せに苦しんだジェズスはサカがいない負荷がそのまま降りかかってきた印象だった。
保持においてもシティは左サイドから主導権。動き回るフォーデンからホワイトを上下に揺さぶると、そこでできたギャップにグバルディオルを突っ込ませることでラインブレイク。1回破られたジェズスが以降は慎重に彼を消すためのリトリートを行うようになる。
アーセナルはプレスの優先度を整理することでシティの保持のルートを徐々に潰す。エンケティアがディアスを捨ててベルナルドのマークを離さないようにすることで左右に揺さぶられる機会を削ると、シティは確固たる前進の道筋が見えなくなる。カウンターの機会を潰したライスや、ハーランドのとのマッチアップを制し続けたサリバなど、シティの威力のあるワンパンチもアーセナルの守備陣がきっちりとガードを固めていたのが印象的だった。
保持においてもジョルジーニョが低い位置に降りてボールを受ける機会を増やすことでリコ・ルイスのプレスのスイッチを入れにくくする。コバチッチやベルナルド等、中盤で警告を受けた選手がかさんできたのもシティにとっては誤算だろう。どちらの保持の局面も試合の経過とともに主導権をアーセナルに。
後半、アーセナルはマルティネッリを投入。トロサール負傷による交代ではあるが、これにより左サイドの定点攻撃とハイプレスが活性化。シティに対してワンサイド気味に押し込んでいく。
しかしながら、エデルソンを軸に左右に揺さぶってアーセナルのハイプレスを回避したシティ。左サイドから相手の背後を取るケースを増やしていくと、アーセナルは再び4-4-2気味に構えることに。
中盤の整備役としてストーンズ、ヌネスを投入し、押し込んだサイドの打開役としてドクを置いたグアルディオラ。おそらく、この一手で決め切りたかったところだろう。だが、左右のSBにドクを止められてしまうと、今度はアーセナルが交代カードを軸に反撃に。シティにとって計算外だったのは冨安の攻め上がりだろう。対面のフォーデンはインサイドに絞るマルティネッリとハイプレス時にマークするガブリエウへの優先度が高く、冨安へのケアはあまり重きをおいていないように見えた。
その冨安が前線に駆け上がると、トーマスが彼に向けたフィードを発射。冨安の落としをハヴァーツが体をはってマルティネッリにつなぐと、振り切ったミドルはアケに当たってゴールイン。
劇的な先制点を挙げたアーセナルはそのまま前線のキープ力と盤石の守備力で逃げ切りに成功。実に8年弱ぶりのシティ戦の勝利を手にすることに。アルテタはついに長年閉じられていた重い扉を開くこととなった。
ひとこと
アーセナル、シティと同じでいい意味でつまらなくなってきたので強くなってきたなという感じ。
試合結果
2023.10.8
プレミアリーグ 第8節
アーセナル 1-0 マンチェスター・シティ
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:86′ マルティネッリ
主審:マイケル・オリバー
第9節 チェルシー戦(A)
少ないチャンスを仕留めたアーセナルが1ポイントを掬い取る
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立ち上がりの両チームの振る舞いはここまでのチーム状況は真逆。流れがよく入れたのは下位に沈むチェルシーで苦しんだのはアーセナルだった。
もっとも、アーセナルからすれば重馬場のピッチコンディションは言い訳にはなるだろう。簡単にボールが止まるピッチに置いては普段のアーセナルの組み立てで見せるような小気味のいいパスワークは見せることはできない。
チェルシーはそうした状況を利用しつつ、バックラインに対してプレスの駆け引きを敢行。中盤を幽閉しつつ、無理に出ていかずに陣形のズレを作らないチェルシーの守り方にアーセナルは苦戦。強引にWGにボールを預けた結果、サカとマルティネッリの負荷が高まる展開となった。
特にサカとマッチアップしたククレジャは出色の出来といえるだろう。正対はもちろん、横ドリブルすらできないくらいの圧でサカの選択肢を削り取ったククレジャは前半におけるチェルシーのMVPの1人だ。
アーセナルの攻め手を封じることに成功したチェルシーはカウンターを軸にスピードアップしてゴールに迫る。特に大外のムドリクの背負うスキルを中心に設計されていたドリブラーを生かす形は秀逸。スピードに乗ったギャラガーを相手にジョルジーニョが後手に回るシーンがちらほらみられるようになった。
ボックス内までその勢いを維持することに成功したチェルシーはサリバに先んじてクロスに飛び込んだムドリクがハンドを誘発してPKを獲得。これをパルマーが沈めてチェルシーが先制する。
追いかけるアーセナルは後半、ジンチェンコ→冨安の交代を敢行。広い範囲を守れる冨安を中央に置き、ジョルジーニョを右サイドに出張させる形からチャンスを作っていく。
しかし、このテコ入れした右サイドからカウンターを決める形でチェルシーは追加点をゲット。ラヤの癖を盗んだというムドリクのクロス性のボールはそのままゴールに収まり、チェルシーはリードを広げる。
苦しくなったアーセナルだが、少しずつサイドの深い位置に入り込む攻撃は機能するように。カウンターからチェルシーが3点目を仕留められなかったことや、トップにジャクソンが入ってもなおアバウトな方向性にシフトチェンジしなかったことはアーセナルにとっては幸運だろう。
繋ぎにこだわったチェルシーはパスミスから失点。サンチェスのパスミスを拾ったライスは距離があるところから無人のゴールに狙いすましたシュートを打ち込んで見せた。
勢いに乗りたいアーセナルだが、交代で前線に入ったエンケティアとスミス・ロウがプレッシングで機能せずにブレーキに。それでも少ない機会を狙いすましたようにものにしたのがサカとトロサール。WGtoWGのクロスからの決定機を見事に仕留めて試合を振り出しに戻す。
逃げ切り体制に入ったチェルシーと交代選手の活性化がうまくいかないアーセナルにそれ以降は得点を動かす力はなし。ロンドンの両雄の対戦は痛み分けで幕を閉じた。
ひとこと
地獄の連戦が開幕したチェルシー。この内容のまま走り抜けられれば今の順位よりも高い位置に目標を設定する現実味が出てくる感じもする。
試合結果
2023.10.21
プレミアリーグ 第9節
チェルシー 2-2 アーセナル
スタンフォード・ブリッジ
【得点者】
CHE:15′(PK) パルマー, 48′ ムドリク
ARS:77′ ライス, 84′ トロサール
主審:クリス・カバナフ
第10節 シェフィールド・ユナイテッド戦(H)
あらゆる側面で完璧な90分
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セビージャとのCL後のホームゲームに迎えるのは今季最下位のシェフィールド・ユナイテッド。どこまでメンバーを落とすかは難しいところだったが、アルテタは数人のメンバーを入れ替えながらスタメンを組んだ。
ブレイズは4-4-2でブロックを形成。CBにはそれなりにボールを持たせつつ、ミドルゾーンで踏ん張る構えを見せる。アーセナルは2トップの脇から前進。WGにボールを預けて相手の中盤のラインを下げつつ、バイタルにライスを送り込む形で敵陣手前のスペースからブレイズのゴールを狙っていく。
中盤はやや窮屈だったが、この形からアーセナルは先制。サカとハヴァーツのレーン交換からライスに時間を与えてエンケティアにラストパス。難しい弾道のパスだったが、エンケティアは見事にコントロールして冷静にフォデリンガムを交わすシュートを決める。
アーセナルはマンツーでブレイズのCHがついてくるハヴァーツとスミス・ロウを囮に中盤中央に穴を開けていく。ジンチェンコのレーン移動、サカの左サイドに移動してのIH化など、この時間は実験的な要素が強まっていた時間帯だった。そういったトライができるのはカウンターでの脅威でアーセナルのバックラインがあまり脅かされなかったからだろう。
後半、アーセナルは早々にセットプレーから追加点。前半から狙っていたGK周りへのボールからこぼれ球をエンケティアが押し込んで2点目をゲットする。
ブレイズはプレスを強めてペースを取り戻しに行くが、逆にアーセナルにスペースを与える結果に。アーセナルのバックラインはプレスを回避しつつ、中盤に簡単に縦パスを刺すことができ、スムーズな敵陣の侵入が簡単にできるようになった。エンケティアの3点目のゴールのギャップは前半にはあまりみられなかった類のものだ。
こうなるとアーセナルはボーナスステージに突入。トロサールのようなスペースがあればいくらでも相手を剥がせるような選手が存分にかがやく展開に。ほかのアタッカーはトロサールがガンガン供給してくれるチャンスをPA内で待っている状態だった。
ファビオ・ヴィエイラが自ら得たPKを決めて試合後に生まれた子供に前祝いをささげる4点目を決めると、スタジアムはセレモニームード。この流れのトリを飾ったのは50試合目のプレミア出場となった冨安。後半追加タイムにうれしい加入後初ゴールを決めて、チームメイトから手洗い祝福を受けた。
エンケティアのハットトリック、ヴィエイラのお祝い、そして冨安の初ゴール。主力のプレータイムマネジメントも含めて完璧な90分を描いたアーセナル。無敗キープで首位追走に成功した。
ひとこと
写真に残したい完璧な夜だった。
試合結果
2023.10.28
プレミアリーグ 第10節
アーセナル 5-0 シェフィールド・ユナイテッド
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:28‘ 50’ 58‘ エンケティア, 88’(PK) ヴィエイラ, 90+6‘ 冨安健洋
主審:ティム・ロビンソン
第11節 ニューカッスル戦(A)
WGの先が見えないアーセナル
レビューはこちら。
セント・ジェームズ・パークでのニューカッスルとアーセナルの一戦は近年はシーズンの重要なポイントで迎えている印象。アーセナルにとっては魔の11月の頭に対峙することとなった。
序盤の落ち着かない展開を過ぎるとボールを持つようになったのはアーセナル。ラヤも含めた3-2で固定したバックラインからの組み立てはニューカッスルのプレスに対して、ホワイトが浮く格好に。
サカを使ったレイオフやラヤからのフィードでホワイトにボールを届けることでニューカッスルのプレスを逃がすアーセナル。しかしながら、ここからの加速がうまくいかず、ニューカッスルに帰陣の時間を与えてしまう。
ブロック守備の攻略になればWGを軸とした攻撃に出るのがお馴染みのアーセナル。しかしながら、サカはゴードンとのダブルチームに苦しみ、マルティネッリはトリッピアー相手に優位をとれない状況。
結局、アーセナルの攻め手はミドルゾーンを鋭く進んでニューカッスルにリトリートの時間を与えなかったライスのドリブルと冨安のオーバーラップに集約されていた感があった。だが、どちらも決め手には欠けてしまい、なかなかチャンスを作ることができない。
ニューカッスルの保持はミドルゾーンからの加速はよどみなく進んでいったが、サイドからの仕上げがうまくいかなかった印象。この辺りは冨安、ガブリエウを軸としたアーセナルのバックラインの強固さが際立つ展開。アルミロンにボールを運ばれてもリトリートが間に合うのはさすがの強度である。
しかし、迎えた後半。シェアのロングボールから裏をとったジョエリントンからアーセナルのラインを押し下げると、マーフィーのシュートのこぼれ球を拾ったウィロックのクロスから最後はゴードンがゲット。アーセナルとしては判定にひとこと言いたくなる場面ではあったが、この試合で欠かさず続けてきたサイドの蓋が間に合わなかったことが失点に繋がってしまったことを踏まえれば、大事な場面で甘さが出たということになるだろう。
ブロック守備を強化するニューカッスルに対して、アーセナルはジンチェンコの投入やハヴァーツのポケットへのアタック、さらには密集に強いトロサールを使った攻撃などあらゆる手段で攻略に打って出る。
しかしながら、アウトサイドで優位が取れない十字架は重たく、最後までニューカッスルのゴールをこじ開けることができず。初黒星はセント・ジェームズ・パーク。今季初の無得点でリーグ戦を終えたアーセナルにニューカッスルが土をつけた一戦となった。
ひとこと
WGが不調な時にどの選手のどの要素を使って攻略していくのか次第で出場時間が決まっていきそうな予感
試合結果
2023.11.4
プレミアリーグ 第11節
ニューカッスル 1-0 アーセナル
セント・ジェームズ・パーク
【得点者】
NEW:64′ ゴードン
主審:スチュアート・アットウェル
第12節 バーンリー戦(H)
セットプレーからの突き放しで逃げ切りに成功
レビューはこちら。
前節、今季リーグ戦初黒星を喫したアーセナル。ホームでバーンリーを迎える一戦で立て直して中断期間を迎えたいところだ。
立ち上がりのプレスをいなし、アタッキングサードへの攻略に入るアーセナル。左右のWGにボールを預けに行くが、特にサカへのマークはタイト。SHの戻りも早くなかなか簡単に預けるだけでOKとはいかない展開となる。
FW-MF間のラインをコンパクトに維持していたバーンリー。まずは縦に陣形を間延びさせることを優先的に行いたいアーセナルはトロサールの裏抜けの動きを使いながら、バーンリーの陣形を縦に引き延ばすアプローチを優先する。
裏を出口にするアプローチは悪くはないのだが、相手にもポゼッションの機会を与えてしまうのが難点。バーンリーはライスとジョルジーニョを自軍の左サイド側に引き寄せながら、中盤に穴を開けてアムドゥニの加速からカウンターを狙っていく。
それでも徐々にペースはアーセナルに。押し込む機会を得たアーセナルは左右からクロスを放り込むことでバーンリーのボックス内での守備の負荷を増やしていく。ファーを狙うボックス手前からのアーリー気味のクロスと、ニアサイドを裏抜けする形でエグるマイナス方向のスピードの速いクロスを使い分けながらボックスに侵入していく。
このアプローチが実ったのは前半終了間際。ジンチェンコからのクロスの折り返しに飛び込んだのはトロサール。ポストに激突しながら押し込む一撃でアーセナルはハーフタイムを直前に前に出る。
バーンリーは後半頭にコレオショの特攻からチャンスを迎える。この特攻が前触れになったのか、冨安との1on1のところを起点にバーンリーは同点ゴールをゲット。アーセナルからすればファウルだろと言いたくなる場面だが、判定は覆らなかった。
それでも左サイドのマルティネッリやトロサールを軸に攻撃は前半以上にスムーズに行うことができたアーセナル。失点直後にセットプレーからサリバのゴールですぐに押し返す。
そして更なる得点の決め手となったのもセットプレー。今度はPA内からの跳ね返りをジンチェンコが仕留めて2点リードを確保する。
終盤はファビオ・ヴィエイラの退場で少しバタバタしたアーセナル。しかしながら、いつものように落ち着きながらバックラインを増やして対応し、2点差を守り切り勝利を手にする。
快勝とは言えるか微妙な内容ではあるが、負傷者の目立つ中の逃げ切り勝利でブレイクを迎えることができたのは何よりだろう。バーンリーはこれでテーブルの最下位に転落することとなった。
ひとこと
ハヴァーツはもうちょい引っ張ってもよかったと思う。
試合結果
2023.11.11
プレミアリーグ 第12節
アーセナル 3-1 バーンリー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:45+1‘ トロサール, 57’ サリバ, 74‘ ジンチェンコ
BUR:54’ ブラウンヒル
主審:マイケル・オリバー
第13節 ブレントフォード戦(A)
新戦力と苦戦する右サイドの融合でダービー無敗を継続
レビューはこちら。
ホームチームは14戦、アウェイチームは16戦。共にロンドンダービーの無敗記録が継続しているダービーキラーの両チームの一戦である。
負傷者続出のブレントフォードは高い位置からのプレスを仕掛けながら、ラムズデールが久々にゴールマウスを守るアーセナルの出方をうかがう。そのラムズデールはいきなり決定的なミスから致死性のピンチを招くなど、不安定な立ち上がりに。ブレントフォードはこれ見よがしに積極的にプレスを仕掛ける流れにもっていく判断をした。
しかしながら、ラムズデールの決定的なミスを除けばアーセナルはそこまで危険なロストはせず。ムベウモの右サイドの裏抜けという前進の手段もガブリエウに先読みされて潰されてしまった感がある。
20分を過ぎるとアーセナルの保持の時間が長くなる。ブレントフォードは5-3-2のリトリートでの守備に切り替え。DF-MF間をコンパクトに維持し、WGにはダブルチームを結成する形でアーセナルに対抗する。
左サイドのマルティネッリとジンチェンコのペアはパス交換やオフザボールの動きで相手の右サイドを動かすことができており、抜け出してのクロスやPAやや手前からの斜め方向のパスを入れるなど有効打を打っていた。
その一方で右サイドは機能不全。サカが集めるマークを利用することができず、窮屈な攻めに終始。良い位置にいてもボールを引き出すことができない冨安はサカとウーデゴールからやや信頼を置かれていないように見えた。
スコアレスで迎えた後半、ブレントフォードは再びプレスをスタートする。このプレスは前半よりも長い時間持続。後半はアーセナルが一方的に押し込むような展開ではなく、ボールが両軍の陣地を行き来するような展開になる。
一見押し込むフェーズを解消したブレントフォードに流れが来たように見えるが、ファストブレイクの方がWGのマークが軽いことからアーセナルもまたこの状況からスムーズにアタッキングサードの攻略に移行することができていた。
それでも得点が入らない両チーム。スコアが動かないまま80分を過ぎるとアーセナルが再び押し込むフェーズに突入する。
左右からのクロスを跳ね返し続けるブレントフォードだったが、後半AT前に決壊。ウーデゴールのドリブルの動きを利用してフリーになったサカがクロスを上げるとファーサイドに飛び込んだのはハヴァーツ。
値千金の先制点は流れの中からの初ゴール。機能不全だった右サイドと得点に絡めなかった新戦力の2つが融合した決勝点でアーセナルがロンドンダービーの無敗記録継続と首位浮上を決めた。
ひとこと
ライスとジンチェンコのゴールライン上クリアは全ブレントフォードサポーターがトーマス・フランクと同じくらい頭抱えたと思う。
試合結果
2023.11.25
プレミアリーグ 第13節
ブレントフォード 0-1 アーセナル
ブレントフォード・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
ARS:89‘ ハヴァーツ
主審:ティム・ロビンソン
第14節 ウォルバーハンプトン戦(H)
23-24の先行逃げ切りスタイル
レビューはこちら。
CLではノックアウトラウンド進出を決めたアーセナル。休む間もなくリーグでは中2日でホームにウルブスを迎えての一戦となる。
中盤に出場停止の選手が目立つウルブスは5-3-2というありったけの中盤を起用するフォーメーションを採用。ブレントフォードと同じく、IHに過負荷を強いる形で攻め立てていく。
ウルブスはブレントフォードと比べて強気でプレスに来ていた。アーセナルはその中盤の強気のプレスをいなすように右サイドから先制点をゲット。サイドに引き寄せられてがら空きになったハーフスペースから冨安がサカにアシストを決めてアーセナルが先制する。
その後も流れるような動きで追加点を奪うアーセナル。今季ここまでは15分までにリーグ戦のゴールがなかったアーセナルだが、この日は15分までに2ゴールを挙げてリードを広げる。
その後も両WGの突破、ジェズスのポスト、そして頻発されるハーフスペース付近の抜け出しからアーセナルはウルブスを攻め立てる。
防戦一方だったウルブスだが、30分から徐々にクーニャのポストやドーソンやドイルの大きな展開から盛り返すことができるようになる。それでもバックラインに対してなかなかギャップを作ることができないウルブス。むしろ、カウンターから一撃でゴールを脅かせるアーセナルの方がなおも得点の可能性が濃い前半だったといえるだろう。
迎えた後半もアーセナルは保持からウルブスのプレスを退けていく。しかしながら、前線の飛び出しは前半よりも控えめ。2点のリードを踏まえると、より少人数で崩し切ることを意識したスタンスだったのだろう。
その分、ウルブスは後半に余裕をもって守ることができていた。5バックはアーセナルのWGを防ぎながらカットインを阻害。直線的なカウンターを除けば前半よりもアーセナルの攻撃をまともに受ける機会は減っていた。
攻めきれずに苦戦していたウルブスだが、後半追加タイム前に自陣の深いところでドリブルをしたジンチェンコを咎めて追撃弾をゲット。クーニャのゴールで1点差に迫る。
しかしながら最後は試合を落ち着かせてクローズしたアーセナル。今季初のリーグ戦3連勝で首位をキープした。
ひとこと
昨季の先行逃げ切り型に受けるときの堅さをプラスした感のある手堅いアーセナルだった。
試合結果
2023.12.2
プレミアリーグ 第14節
アーセナル 2-1 ウォルバーハンプトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:6′ サカ, 13′ ウーデゴール
WOL:86` クーニャ
主審:ピーター・バンクス
第15節 ルートン・タウン戦(A)
計7発の乱打戦はラストプレーで決着
レビューはこちら。
ここからホームゲームで強豪連戦を迎えるルートン。シティとアーセナルは強敵ではあるが、ここまでホームで全試合得点を決めているだけに何とか勝ち点をもぎ取りたいところである。
CBにはボールを持たせて中盤にはタイトに当たってくるいつものスタイルを見せるルートン。対するアーセナルはLSBにキヴィオルが起用されている影響か、SBが絞らないといういつもとは違うアプローチを見せていた。
スタンダードな4-1-2-3をアーセナルが選択したことで助かったのはルートン。バックラインからの強気なプレスで、アーセナルの縦パスの受け手をガンガン阻害する。ルートンは保持に回れば4バック化してゆったりとパス回し。高い位置からボールを奪い、自軍がボールをもったらゆったりと。試合はアーセナルが一方的にボールを持つという多くの人が想像する展開とは異なる流れとなった。
だが、それでも先制するアーセナル。カミンスキのコントロールが乱れたところからのリスタートをジェズスがスムーズに行うと、サカ→マルティネッリとつないで先制ゴールを奪い取る。
しかし、ルートンもすぐに反撃。セットプレーからの同点ゴールであっという間に試合を振り出しに戻す。
その後も前を向く選手を作れずに苦戦するアーセナル。外にいる分、プレッシャーが相対的に弱いサカが唯一の光。前を向くことができればここからエリア内に迫ることができる。
そんなサカを軸とした定点攻撃からアーセナルは前半終了間際に勝ち越し。ホワイトのクロスをジェズスが叩き込み、ハーフタイムをリードで折り返す。
しかしながら、ルートンも負けてはいない。後半頭にバークリーから左右に自在な展開を行うと、前半以上にWBがボックス内に侵入するシーンができるように。押し込むことに成功したルートンはセットプレーから再び同点。高い打点のアデバヨにラヤは手を伸ばしても届かず、無人のゴールへのヘディングを許す。
さらに押し込むルートンは左サイドからバークリーのミドルで逆転。ホワイトは流れの中で2回交わされてしまっており、シュートをとめきれなかったラヤと共に悔いが残るシーンとなった。
しかしながら、アーセナルもすぐに同点に。前線でロングボールの的になり続けた2トップからこの日3回目の同点ゴール。ジェズスのキープからハヴァーツが抜け出してゴールを奪う。
ジンチェンコの投入で少しずつ保持を整えたアーセナル。これ以降は押し込みながら勝負を仕掛けていく。すると勝負が決まったのはラストプレー。ウーデゴールのクロスを叩き込んだライスがユナイテッド戦に続きチームを救うヒーローに。
両軍合計7点が入った乱打戦はラストワンプレーでアーセナルに軍配。連勝を伸ばし、首位キープに成功した。
ひとこと
相手の土俵に付き合い過ぎ感があったアーセナルであった。
試合結果
2023.12.5
プレミアリーグ 第15節
ルートン・タウン 3-4 アーセナル
ケニルワース・ロード
【得点者】
LUT:25‘ オショー, 49’ アデバヨ, 57‘ バークリー
ARS:20’ マルティネッリ, 45‘ ジェズス, 60’ ハヴァーツ, 90+7‘ ライス
主審:サム・バロット
第16節 アストンビラ戦(A)
難攻不落は首位相手でも継続
レビューはこちら。
ホームで連勝街道を突き進むアストンビラ。シティを倒した中2日でアーセナルと対峙するというなかなかハードなミッションに今節は挑むこととなる。
しかしながらタフな日程にも関わらず、アストンビラのパスワークのキレは素晴らしかった。アーセナルも決して無謀なプレスをしたわけではないのだけども、追い込んで外すというところでアストンビラが上回ったのも事実だ。
特に7分の先制点の場面は非常に見事。ティーレマンスとベイリーのコンビで右サイドを制圧すると、折り返しをマッギンが仕留めて先制。リードした試合では今季全勝のアストンビラが先行する。
アーセナルはFW-MF間のジンチェンコからの裏へのパスやWGのカットインのアクションからの横断など、長いレンジのパスから打開を図るがなかなかこのパスの精度が合わない。唯一フィーリングが合っていた感のある左サイドからの突破もカマラがスライドすることで対応。中央ではドウグラス・ルイスがアーセナルの鉄板得点パターンであるウーデゴールへの横パスを封鎖。アーセナルに得点を許さない。
アーセナルは高い位置からのボール奪取からのショートカウンターには移行することができていたが、なかなかゴールまでたどり着くことができない。かつての友であるマルティネスが守るゴールマウスは非常に堅牢なものであった。
後半はアストンビラの選手交代により左サイドではジンチェンコが解放されるパターンが増えていく。この左サイドからジェズスやマルティネッリが裏を狙いながらアストンビラを押し下げていく。
ジンチェンコが解放される要因となったのはベイリーの負傷交代に伴い、トップにディアビを入れたからだろう。セカンドトップの位置に立ちながら中盤を埋めることができるティーレマンスに比べると後方のケアが甘いのは仕方がない。それに攻撃に出た時の2トップの威力を考えれば多少のマイナスはおつりがくるものである。
後半の頭は主導権を握ったのはアーセナル。しかしながらラムジーの登場によるアストンビラの配置の整備や、アーセナルの前線から選手交代でマルティネッリやジェズスがいなくなったことにより、後半の立ち上がりの時間ほどロングボールが効かない展開になる。
89分にはネットを揺らすことに成功したアーセナルだが、ボールはハヴァーツの腕にわずかに触れておりゴールを認められることはなし。結局最後までマルティネスの守るゴールマウスを打ち破ることはできず、アーセナルは首位陥落となった。
ひとこと
強度も高くクオリティも充分で見ごたえのある一戦。瞬間的な出力で先制点を取ったアストンビラがその中でもきっちりアーセナルの時間を削り取ったのが印象的だった。
試合結果
2023.12.9
プレミアリーグ 第16節
アストンビラ 1-0 アーセナル
ビラ・パーク
【得点者】
AVL:7‘ マッギン
主審:ジャレット・ジレット
第17節 ブライトン戦(H)
優位を握り続けたホームチームの完勝
レビューはこちら。
アストンビラに敗れて首位を明け渡したアーセナル。ブライトンは強敵とは言え、主力を投入したELから中2日でアウェイに乗り込んでくるという行程を考えれば確実に勝利を挙げたいところだろう。
バックラインから強気のプレスを仕掛けたのはアーセナル。高い位置からボールを奪いとりに行く。ブライトンはギルモアの左サイドに落ちるアクションなどからこちらのサイド側にアーセナルのプレス隊を引き付けていく。ララーナが中盤の底の高さまで落ちてくるのもその一環だろう。
本来であればこのララーナを軸にパスワークからの脱出を試みたいブライトンだが、アーセナルはライスがここを徹底的に潰しボールを前に進ませない。前日まで体調不良で出場が危ぶまれていたというのがうそのようなパフォーマンスで、ハヴァーツと共にショートパスを阻害するプレス隊として絶大な存在感を示す。
ショートカウンターの動線があるアーセナルは右サイドを軸に攻撃を構築。サカへのダブルチームではなく、一人ずつに一人ずつがマークに行くブライトンの基本スタイルはサカからすればやりやすかったことだろう。
逆サイドでもフェルトマンの負傷により、アーセナルはマルティネッリが優位をとれるように。左右から自在にボールが上がってくるアーセナルに対して、ブライトンはファン・ヘッケとダンクの強力なCB陣が最後のところをやらせない頼もしさを見せる。
迎えた後半、グロスがビルドアップに参加せずに前方にとどまることでブライトンはハヴァーツのハイプレスへの参加を抑制する。しかし、ビルドアップから前進がスムーズに進んでいたアーセナルはセットプレーから先制。ニアへのファン・ヘッケのタッチはファーで待ち構えていたジェズスへの絶妙なフリックとなってしまった。
この先制点でハイプレスに打って出なくてはいけなくなったブライトン。これによりブライトンのCBコンビは幅広い範囲を守ることを強いられることに。こうなるとカウンターの局面ではアーセナルのアタッカーが優位。右サイドのヒンシェルウッドの裏からガンガン選手を裏抜けさせると、追加タイム直前にハヴァーツが試合を決める2点目を仕留めて勝負あり。
ブライトンも終盤の三笘とジョアン・ペドロの左サイドは非常に強力だったが、グロスが同点ゴールのチャンスを仕留められなかったことが尾を引いた。逆に言えばその部分しかブライトンが勝ち点を取る筋は見えず、90分間アーセナルに苦しめられ続けた一戦だったといえるだろう。
ひとこと
必要なら強度を提示できるアーセナルは頼もしい。
試合結果
2023.12.17
プレミアリーグ 第17節
アーセナル 2-0 ブライトン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:53‘ ジェズス, 87’ ハヴァーツ
主審:ティム・ロビンソン
第18節 リバプール戦(A)
オープンながら少ない決定機の首位攻防戦
レビューはこちら。
https://www.footballista.jp/regular/173581
首位攻防戦となるアンフィールド決戦は落ち着く間もなく生まれたアーセナルのゴールで開幕。セットプレーからガブリエウがネットを揺らして早々に先行する。
この試合のメインとなる局面はリバプールの保持。アーセナルは枚数を合わせてのハイプレスは行っていないが、ジェズスがリバプールの左サイド側から追い込みながらハヴァーツがプレスのスイッチを入れる形で高い位置からのボール奪取を狙っていく。
しかしながら、リバプールはスイッチ役がいない逆サイドにボールを振ったり、スイッチ役のハヴァーツの背後にガクポやショボスライを忍ばせることによって徐々にアーセナルのプレスを撃退していくように。これで落ち着いてボールを持つことができるようになった。
自由を与えられたバックラインからフィードを飛ばしたのはアレクサンダー=アーノルド。サラーとジンチェンコの1on1を生み出したパスからリバプールは同点ゴールをゲット。アーセナルはビルドアップのところで押し返すことができずに、自分たちの時間を作ることができず、リバプールに自由に高い位置でボールを持たせたことが失点に繋がってしまった印象。サラーとジンチェンコのマッチアップはどう対策するかというよりもきっちり隠すことのほうが重要である。
迎えた後半はアーセナルはハイプレスとポゼッションから押し返すことを狙う立ち上がり。しかしながら、ビルドアップの局面においては遠藤の出足の良さが際立っており、リバプールはプレスからの波状攻撃を仕掛けることができていた。
アーセナルも左右にボールを動かすことでリバプールのプレス回避に対して応戦する。この辺りは前半のリバプール側の保持で突きつけられた部分をアーセナル側もまた突きつけられた形である。アーセナルもまた相手のプレス側が出してきた課題を解決した格好だ。
押し返すことができるようになってきたアーセナルだが、コナテをはじめとするCBの強固さに苦戦。チャンスらしいチャンスが作れないまま時間が経過していく。試合自体はオープンな展開が続いていたのだが、両チームに生まれたチャンスがあまりにも少なかったことを考えると、アンカーとCBのカバー範囲の広さがアーセナルもリバプールも素晴らしいということだろう。もちろん、70分のアレクサンダー=アーノルドのチャンスは例外。逆にミスが絡まなければあれだけのチャンスは作れないということだ。
オープンだが保持側にゴールチャンスが多く訪れないという珍しい展開になった一戦。アンフィールドで迎えた首位攻防戦は痛み分けで幕を閉じることとなった。
ひとこと
特にリバプール側に見られたリスタートの早さが印象的。そうでもしなければ守備ブロックに風穴を開けられなかったことの裏返しだろう。
試合結果
2023.12.23
プレミアリーグ 第18節
リバプール 1-1 アーセナル
アンフィールド
【得点者】
LIV:29′ サラー
ARS:4′ ガブリエウ
主審:クリス・カバナフ
第19節 ウェストハム戦(H)
要所で流れを掴めないアーセナルの攻撃陣
レビューはこちら。
アンフィールドでの引き分けは悪くはなかったが、2位以下の勝ち点を引き離せなかったという観点から考えるとアーセナルはここでも足踏みは避けたいところ。得意のホームでのモイーズとの一戦で再スタートを切りたいところである。
そのアーセナルの立ち上がりは前回のホームで完勝したブライトン戦を思わせる立ち上がり。ポゼッションによる押し込みと高い位置からのプレスからずっと俺のターンを継続する。
しかしながらウェストハムは前線の降りるアクションからきっちりと起点を作ることで反撃。アーセナルの即時奪回を回避することで少しずつ俺のターンを切り崩していく。
ウェストハムは押し返す流れの中から先制点をゲット。左サイドから入れたクロスに対してガブリエウとジンチェンコの対応がかぶってしまった結果、わちゃわちゃとしたところを最後はソーチェクに押し込まれることとなった。
反撃に出たいアーセナルだが、リードを得たことでウェストハムはきっちりと自陣を固める形にフォーカス。特にCHのサイドへのスライドは強固であり、アーセナルの左サイドは大外のダブルチームとCHのハーフスペースへのランを潰す動きで完全に消されてしまうことに。
パケタが負傷交代した30分過ぎ以降は怪しいボールの失い方が垣間見えたウェストハムに対して、アーセナルが差し込んでいくシーンが度々見られるようになる。だが、アタッカーのシュートセレクションの雑さゆえに得点にはつながらず。試合はウェストハムのリードで後半を迎える。
後半の頭は前半の立ち上がりと同じようにアーセナルが押し込む立ち上がりに。しかしながら、クドゥスを使ったカウンターからウェストハムは反撃に出ると、セットプレーからマヴロパノスが追加点を奪い取る。これでリードは2点となった。
安全圏のリードを盾に自陣に引きこもるウェストハム。アーセナルは選手交代とともに3-5-2に変更することで反撃に出る。このシステム変更は一定の効果はあった。ボックス内の枚数が増えたことでウェストハムの守備陣は混乱し、右サイドからのファー気味のクロスからアーセナルはチャンスメイクに成功。しかしながら、このチャンスをジェズスやネルソンが決められないと再び流れは悪くなる。
外側のクロスを上げるメカニズムは別に改善していないので、ウーデゴール個人の閃きからなんとかクロスを上げる苦しい展開になったアーセナル。ウェストハムに跳ね返され続けると最後はカウンターからライスがPKを献上するが、これはラヤが意地のストップ。トドメの一撃は避けたアーセナルだが、首位陥落となる手痛い一敗を喫することとなった。
ひとこと
ウェストハムのCHのハードワークが光る一線だった。
試合結果
2023.12.28
プレミアリーグ 第19節
アーセナル 0-2 ウェストハム
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
WHU:13’ ソーチェク, 55′ マヴロパノス
主審:マイケル・オリバー
第20節 フラム戦(A)
シャープさとしたたかさで上をいくフラム
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得意のロンドン・ダービーでウェストハムに敗れたアーセナル。ダービー連戦となるフラムとの一戦はなんとしてもモノにしたいところだろう。
立ち上がりは勢いのいいプレスで強度十分の入りを見せたアーセナル。フラムはきっちりと勢いを受け止めるスタート。バックラインは列落ちで枚数を確保しながらポゼッションの機会を作りつつ、キヴィオルが入る左サイドの裏を狙うアクションを行っていた。
しかしながらアーセナルはそのサイド攻撃をひっくり返す形で先制点をゲット。マルティネッリがオーバーラップしたカスターニュのサイドを強襲するとそこからのこぼれ球をサカが押し込んで先行する。
その後は後ろに枚数をかけながら慎重に後方から進めていきたいアーセナル。ここのあたりは両チームの日程の差を考えれば強引にいけないのは仕方がない部分。それでもフラムは縦パスをパリーニャとバッシーを軸に仕留めることで反撃に出る。ボールの預けどころとしてイウォビとヒメネスがライスやサリバを抑えて起点となっていたことも大きかった。
限られた機会を反撃に使うことができていたフラムは29分に同点。一か八かのワンツーを失敗したホワイトがいなくなったサイドからのカウンターを成立させて、最後は逆サイドのヒメネスが仕留めた。
前半、その後の流れとしてはアーセナルが保持で機会を伺いながらもフラムがカウンターから鋭さを見せるという展開。両チームともチャンスらしいチャンスを作ることができないままハーフタイムを迎える。
後半も大まかな展開としては同じ流れ。冨安が入った分、アーセナルは左サイドの後方支援が改善されてはいたが、サイド攻撃で決め手がない分、大きな流れは変わらない。フラムのカウンターの鋭さも相変わらずである。
そうした中でフラムはセットプレーから追加点をゲット。やや幸運な形での跳ね返りをボビー・リードが仕留めてゴール。貴重な機会をゴールに結びつける。直後のサカの幸運な決定機をアーセナルが仕留められなかったのとは対照的だ。
アーセナルは前節と同じく3バックにして前の枚数を増やす形で攻撃の強化を行う。ただし、悪天候が足を引っ張る上にサイドの崩しにはあまりこの形は改善が見られないため、アーセナルは苦戦。左サイドのクロスのターゲットとなるマルティネッリやハヴァーツがいないこともまたなかなかしんどい部分の一因だろう。
最後は希望を持ちにくい敗戦となったアーセナル。年末年始の3連戦を未勝利で終える苦しい過密日程となった。
ひとこと
フラムのシャープさを考えるとトランジッションで彼らが優位なのは明白。あまり今季はトランジッションで上回られる機会がなかったので、アーセナルはちょっと困っちゃったかなという感じだった。
試合結果
2023.12.31
プレミアリーグ 第20節
フラム 2-1 アーセナル
クレイブン・コテージ
【得点者】
FUL:29′ ヒメネス, 59′ ボビー・リード
ARS:5′ サカ
主審:ジョシュ・スミス
第21節 クリスタル・パレス戦(H)
困った時の味方とロングカウンターでゴールショーを演出
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リーグ戦では3試合勝ちがないアーセナル。2024年の初戦で悪い流れは断ち切りたいところである。
序盤戦はどちらも落ち着かない展開。それなりに保持の設計図は見られるのだが、手前の段階でのパスミスが多いせいで敵陣深くまで入り込むことができない。
流れの中からのチャンスができない時の味方といえばセットプレー。CKから先手を奪ったのはアーセナル。ファーに流れるガブリエウが対面のリチャーズに競り勝ち、先制ゴールを文字通り叩き込む。これ以降はビハインドを取り返すべくプレスに出てくるパレスに対して、アーセナルがプレスを回避しながら前進するシーンが目立つ。ライスとジンチェンコを捕まえる意識が強かったヒューズとレルマに対して、SBのホワイトを噛ませながら彼らの背後を狙う形で加速。アタッキングサードまで侵入するスキームを確立する。
アタッキングサードでの精度はあまり向上が見られなかった前半のアーセナル。しかしながら、困った時の味方であるセットプレーからさらに追加点。結果的にはヘンダーソンのオウンゴールとなったが、実質的にはこれもガブリエウのゴールと言っていいだろう。
パレスはマテタ、エゼから少しずつ反撃の隙を狙っていくが、アーセナルのバックラインの前に沈黙。セットプレーでの2点を跳ね返せないままハーフタイムを迎える。
後半の立ち上がりに押し込んだのはアーセナル。後方からの追い越す動きが増えるなど、オフザボールの動きが活性化。前半よりは期待感のある、押し込んでからの攻撃を見せていく。
パレスもエゼとマテタを軸とした攻撃が前半以上に刺さるように。サリバ、ホワイトといった右サイドを軸に押し下げるシーンが目立っていく。
アーセナルはプレスで跳ね返すのではなく、この攻勢を受け止めてロングカウンターに注力。そして、ラヤのリスタートから3点目をゲット。トロサールとジェズスの2人でカウンターを素早く完結して見せた。これ以外にもハヴァーツを目掛けたロングボールからチャンスを作るなど、ラヤを使った攻撃はかなりこの試合ではフィーリングが良かった。
これ以降もロングカウンターから交代選手を軸にパレスを押し切るアーセナル。まるでリプレイのような角度から後半追加タイムにファストブレイクから2点を決めたマルティネッリがゴールショーのトリを飾り、アーセナルはリーグ戦の未勝利を3で止めることに成功した。
ひとこと
パレスファンの抗議の弾幕を眺めるホジソン、あまりにも画になりすぎる。
試合結果
2024.1.20
プレミアリーグ 第21節
アーセナル 5-0 クリスタル・パレス
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:11‘ ガブリエウ, 37’ ヘンダーソン(OG), 59‘ トロサール, 90+4‘ 90+5’ マルティネッリ
主審:ポール・ティアニー
第22節 ノッティンガム・フォレスト戦(A)
アウォニィが作り出した流れに乗ったアーセナル
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AFCONと負傷者のコンボでかなり悩ましいスカッドのやりくりを強いられているフォレスト。得意のホームでのアーセナル戦とはいえ、かなり慎重な構えでスタート。アーセナルにボールを渡して、ひとまずリトリートを最優先。中盤はバックラインのヘルプに入る形を取り、ほぼロングカウンターを放棄する形で自陣に引きこもっていく。
というわけで前半はほぼアーセナルの保持が一方的に続くモノトーンな展開になった。サイド攻撃が基調になるのはいつもと同じだが、ドミンゲスが自陣まで戻ってサカのダブルチームに入る献身性を発揮しつつ、マンガラが構えるフォレストの左ブロックはかなり突破が難しくなっている。
その分、チャンスがあったのは右のブロック。アーセナルの左のユニットはマルティネッリを中心に攻め手を探っていく。効いていたのはジンチェンコのオフザボール。フォレストのバックラインへのプレスがほぼなかったこともあり、いつもと比べてビルドアップのタスクを負っていなかったジンチェンコはその分サイドでの崩しで存在感を見せる。
ただし、ハーフスペースに陣取ってしまうとスミス・ロウとプレーエリアがかぶることも想定される。ジェズスがサイドに流れる分、インサイドの仕事が増えているマルティネッリの役割を踏まえて、この日は大外でボールを受ける機会がいつもよりも多め。状況を見た適切なレーン埋めだった。インサイドに入った時も意外性のあるパスからチャンスが見られるなど、左サイドから崩しの根幹を担う。
それでもロングカウンターを犠牲にして自陣のブロックを強化することに専念したフォレストに対して、アーセナルはなかなか崩しのきっかけをつかむことはできず。試合はスコアレスでハーフタイムを迎える。
後半、フォレストはアウォニイの投入を機に、攻め上がりの人数を増やしてのカウンターを打つように。フォレストの面々には前半よりも明らかに現実的にゴールに迫る画が見えたのだろう。前半は上がることがなかったサイドの選手も積極的に攻めあがるようになっていた。
しかし、アーセナルにとってもこれは追い風。展開がオープンになり、ファストブレイクの可能性が広がる流れは悪くはない。フォレストの作り出した流れに乗ったアーセナルは先制点をゲット。冴えているジンチェンコのスローインから裏に抜けたジェズスが角度のないところからゴールをゲット。ターナーの股下を抜いて先制点を奪う。
攻めにかかったフォレストを跳ね返す形でアーセナルは立て続けに追加点を奪う。数的優位のカウンターを完結させてサカが2点目を仕留めた。
終盤にフォレストはアウォニイの追撃弾で1点差に縮めるが反撃もここまで。アウォニイの投入で自らが作り出したアップテンポな流れからアーセナルに主導権を渡してしまい、フォレストは力負けを喫してしまった。
ひとこと
この日はやや流れ自体が裏目ったとはいえアウォニィのパワーはさすが。残留に向けて大きな戦力が帰ってきた。
試合結果
2024.1.30
プレミアリーグ 第22節
ノッティンガム・フォレスト 1-2 アーセナル
ザ・シティ・グラウンド
【得点者】
NFO:89‘ アウォニイ
ARS:65‘ ジェズス, 72’ サカ
主審:サイモン・フーパー
第23節 リバプール戦(H)
局面勝負で優位に立ったアーセナルが優勝争いに踏みとどまる
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アーセナルにとっては上位争いに生き残るための大一番。ホームに勝ち点差5のリバプールを迎えての一戦となる。序盤はアーセナルの保持からのプレス回避が光る立ち上がりとなった。バックラインはしつこいくらいのパス交換を繰り返しながら、リバプールのプレス隊を前に引き出す動きを誘発。この辺りは中盤CHにジョルジーニョを起用した狙いが詰まっているといっていいだろう。
ジョルジーニョ、ジンチェンコといったスモールスペースのマエストロがいる左サイドはとりわけリバプールとのプレスの駆け引きでは優位が見える。高い位置からのボールを奪いに来させると、その分空いた中盤のスペースを蹂躙するような細かなパスワークで前進。先制点の場面はまさしくアーセナルの狙いが詰まった場面といえるだろう。
対するリバプールも低い位置からの保持で攻撃を回していくトライを行う。マック=アリスターをフリーにするためのパスワークを見せていくが、ハヴァーツの外切りからジョルジーニョがボールをハントしたり、中盤セントラルに絞る相棒役(ゴメスやジョーンズ)をライスに潰されたりなど思うように起点を作ることができない。
大外専用機となったアレクサンダー=アーノルドは先制点以降によりマークが厳しくなったマック=アリスター以外の唯一の前進手段。ジンチェンコとマルティネッリの受け渡しが危ういところから、一気に大外を進んでいく。
それでもチャンスメイクにはかなりの差があった両チーム。だが、そんな状況でも得点を生み出せるのがリバプール。サリバとラヤの連係ミスから生まれたわずかな隙から足先でボールを突っついたディアスがオウンゴールを誘発。諦めの悪いクロップのチームらしいゴールでハーフタイム前に同点に追いつく。
前半の終盤の勢いそのままに左サイドから進撃していくリバプール。後半の立ち上がりはアーセナルのプレスに細かなミスが見えた時間帯だった。しかし、ジョルジーニョを軸に保持でテンポを整えて応戦。きっちりと敵陣に押し返す機会を確保する。
すると、今度はリバプールのバックスにミス。風に煽られた影響かアリソンとファン・ダイクがうまく対応できなかったこぼれをマルティネッリが押し込んで勝ち越し。前半のアーセナルのミスとトントンになるエラーでアーセナルが勝ち越しに成功する。
こうなるとアーセナルは堅さが際立つ。前線のプレスバックをさぼらないアーセナルにリバプールは苦戦。外や裏狙いの一発が刺さらず、なかなか相手を動かしてのスペース創出をすることができない。
さらにはロングボールからアーセナルはコツコツ反撃。マルティネッリとハヴァーツを軸に左サイドにロングボールをガンガン当てていくと、最終的にはコナテを退場に追い込むことに成功する。
最後はディアスとエリオットで守ることとなった右サイドをトロサールが制圧して3点目をゲット。リバプールに持っていかれかけた流れを引き戻したアーセナルが首位戦線に踏みとどまる大きな1勝を手にした。
ひとこと
要素還元的に見てもアーセナルの勝ちは妥当。試合後の大喜び具合が彼らのプランがいかにハマったかを如実に示している。
試合結果
2024.2.4
プレミアリーグ 第23節
アーセナル 3-1 リバプール
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:14‘ サカ, 67’ マルティネッリ, 90+2‘ トロサール
LIV:45+3’ ガブリエウ(OG)
主審:アンソニー・テイラー
第24節 ウェストハム戦(A)
鬼門を余裕で突破し上位追走
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前節の勝利で首位争いに踏みとどまることができたアーセナル。今節はかつて得意にしていたものの、ここ2年は振るわない戦績となっているモイーズのウェストハムとの一戦である。
ウェストハムのフォーメーションは4-2-3-1。2トップは縦関係を形成し、ウォード=プラウズはライスのケアをする。バックラインはボーウェンが1枚で見る格好である。
アーセナルはウーデゴールが移動を開始。ライスと並行ポジションに降りることで、アルバレスを1列手前に引き出す。すると、このアルバレスが空けたスペースにトロサールが侵入。中盤中央で反転して前を向く。
前を向くことができたらアーセナルはミドルゾーンから加速。サカにボールを渡して右サイドから勝負を仕掛けていく。サカはジョンソンがダブルチームに間に合うときはやり直しを選択。この辺りで焦らないのは今のアーセナルのいいところ。また、サカがダブルチームで受けるようなタイミングで無理にボールをつけないのも今のアーセナルのいいところである。
ホワイト、ウーデゴール、トロサールなどのサポートを受けて右サイドからアーセナルは攻撃に着手。ファーへのクロスやミドルシュートなどを駆使しながら、アレオラを脅かしていく。
押し込むことに成功したことで増えるのはセットプレー。アーセナルはおなじみとなってきたホワイトのGKの邪魔をいかし、サリバが先制ゴールを奪う。
立て続けにアーセナルは2点目をゲット。ミドルゾーンでアンカー付近まで降りたトロサールから前線にタッチダウンパスが送られてサカがPKを誘発。これで点差は2点になる。
以降も勢いが止まらないアーセナル。ミドルゾーンからウェストハムに起点を許さない守備での跳ね返しからさらに2点を追加。前半だけでリードは4点となった。
後半はウェストハムが中央の縦関係を変更。クドゥスとボーウェンを縦に並べる形で配置。ボーウェンからすれば正面からガブリエウに立ち向かうのでは突破は不可能。ならば、サイドに流れてしまおう。フィニッシャーはクドゥスに任せてという判断だったのでないだろうか。
しかしながら、アーセナルの勢いはそれでも止まらず。前半以上にトランジッションゲームになった展開で右のハーフスペース付近からウェストハムの制圧に成功。ここからさらに2得点を加える。
アルテタにしては早めの交代、そしてヌワネリ久々の出場とうれしい話題が多かったアーセナル。ウェストハム戦という鬼門を突破し、上位対決に踏みとどまる大きな1勝を手にした。
ひとこと
大量のゴールはもちろんだが、アーセナルは崩しの前のアプローチもよかった。
試合結果
2024.2.11
プレミアリーグ 第24節
ウェストハム 0-6 アーセナル
ロンドン・スタジアム
【得点者】
ARS:32‘ サリバ, 41’(PK) 63‘ サカ, 44’ ガブリエウ, 45+2‘ トロサール, 65’ ライス
主審:クレイグ・ポーソン
第25節 バーンリー戦(A)
5連勝でCLに弾みをつける
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ターフ・ムーアに見参したアーセナル。今週はミッドウィークに欧州カップ戦を控えるプレミア唯一のクラブとなる。
立ち上がりから優勢だったのはアーセナル。序盤の序盤こそちょっともたつくシーンがあったものの、すぐに修正。4分には左サイドから抜け出すマルティネッリからあっさりと先制ゴールを奪い取る。
ミドルゾーンに構えるバーンリーはなるべく堅い位置からボールを奪おうと中央にコンパクトなブロックを組んでいるのだが、ホルダーにプレッシャーをかけることができずにズルズルとラインを下げてしまう場面が目立ってしまう。
この辺りは大外をあっさりと明け渡してしまう弊害だろう。リバプール戦でもそうだったが、大外から突破や直接ゴールにリーチできる手段を持っているチームに対して、このレーンをオープンにしてしまうことはゴールに向かう電車道を敷いているだけである。
バーンリーはこの点を改善できずに苦戦。特にアーセナルは右サイドから裏のトロサール、ハヴァーツの2トップの動き出しに合わせたプレーを連発することでバーンリーを攻め立てていく。
反撃に出たいバーンリーだが、自陣からの前進の手段はほぼフォファナ一択。長いボールを預けられても独力で何とかしようとはしていたが、ガブリエウの牙城は厚くなかなか起点として安定した働きを見せられず。
アーセナルは40分手前にPKを獲得して追加点をゲット。盤石な状態で前半を終える。
迎えた後半もペースはアーセナル。横断からあっさりと1on1を制したサカがアーセナルに3点目をもたらす。事実上、試合はここで決着がついたといっていいだろう。
試合のテンションは両チームとも少し下がる状態になったが、アーセナルはラムジーの負傷に伴うインターバル明けからプレッシングを再開。ギアの切り替わらないバーンリーのバックラインに襲い掛かり、ボールを奪い取ってのショートカウンターを繰り返していく。
この試合ではなかなかフィニッシュのタッチが安定しなかったトロサールだが、4点目でようやく結果を出して安堵の表情。インターバル明けのラッシュをようやく結果に結びつける。
5点目もトランジッションから。キヴィオルの隙をついたスローインから裏に単独で抜けたハヴァーツが1on1を冷静に制して大差をつける。
アーセナルからすれば少々終盤に出てきた控え選手たちがピリッとしなかったという反省はあっただろうが、結果としては申し分はなし。5連勝という最高の形でCLに弾みをつけた。
ひとこと
3点差のインターバル明けからギアチェンジできるのはえぐい。
試合結果
2024.2.17
プレミアリーグ 第25節
バーンリー 0-5 アーセナル
ターフ・ムーア
【得点者】
ARS:4‘ ウーデゴール, 41’(PK) 47‘ サカ, 66’ トロサール, 78‘ ハヴァーツ
主審:ジャレット・ジレット
第26節 ニューカッスル戦(H)
CLに向けて反撃体制を整える
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ポルトの地で敗北を喫し、休む間もなく中2日でのリーグ戦を迎えたアーセナル。アウェイでは近年苦戦が目立つが、ホームでの相性は抜群のニューカッスルとの一戦に臨む。
そんなしんどい状況を振り切るようにアーセナルは先制パンチを食らわせる。ライスを高い位置に置くことでアーセナルはハイプレスを強化。ハヴァーツ、ウーデゴールのプレス隊にライスが追従することでいつも以上に相手をハイプレスで仕留める意識は強かったといえるだろう。
ならばとニューカッスルもハイプレスで対抗するが、こちらは苦戦。時に右のWGのアルミロンの外切りのプレッシングを外される機会が多く、アーセナルは外に張るキヴィオルから前進を仕掛けていく。
アーセナルはハイプレスでのボール奪取もしくはニューカッスルのハイプレスを解体した流れから一気に前進。ライス、ハヴァーツ、ウーデゴールの近い位置でのパスワークからライン間で前向きの選手を作って敵陣に攻め込んでいく。
押し込まれることを許容することとしたニューカッスル。しかしながら、押し込まれたら押し込まれたで今度はジョルジーニョを止める術がなく苦戦。細かいパスワークから結局ライン間に侵入を許してしまい、シュートまでの機会を作られてしまう。
すると、アーセナルは押し込む流れから先制。セットプレーからオウンゴールを誘発し、リードを奪う。さらに、前半の内に追加点もゲット。こちらは押し込むジョルジーニョを起点としたブロック破壊。フリーランでスペースを創出したマルティネッリがスペースを享受したハヴァーツにゴールをアシストする。
後半もなかなか前に出ることができなかったニューカッスル。それでもギマランイスを軸とした展開から反撃に少しずつ出るように。
ただ、アーセナルはそのギマランイスを狙ったパスから反撃。ハヴァーツのハイプレス成功からカウンターを仕掛けると、サカが5試合連続のリーグ戦のゴールを仕留めて後半も出鼻を挫く。続く4点目のセットプレーからのキヴィオルのゴールで試合は完全に決着したといえるだろう。
ニューカッスルも終了間際に交代で守備が弱まったアーセナルの右サイドを壊すことで反撃。ウィロックのエミレーツでのゴールで一矢報いるが反撃はここでストップ。
難しい日程をクリアしたアーセナル。リターンレグへの反撃攻勢に向けて着々と準備を整えている感のある完勝を見せた。
ひとこと
アーセナルは相手にとってすごく嫌なチームになったなという印象。
試合結果
2024.2.24
プレミアリーグ 第26節
アーセナル 4-1 ニューカッスル
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:18‘ ボットマン(OG), 24’ ハヴァーツ, 65‘ サカ, 69‘ キヴィオル
NEW:84‘ ウィロック
主審:ポール・ティアニー
第27節 シェフィールド・ユナイテッド戦(A)
マッチレースはまだまだ続く
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今節も優勝争いマッチレースは続行。先に試合を終えたリバプールとマンチェスター・シティ。次節直接対決を控える2チームに対して、背中をぴったりと取る形でついていきたいところである。
勝って当たり前という最下位相手の試合はどことなく特別なプレッシャーがかかる。しかしながら、アーセナルはわずか4分でその不安を一蹴。あっという間の先制点で電光石火のゴールを決めてみせた。
この先制点の場面のようにアーセナルの攻撃はとにかくサイドに枚数をかける。オーバーロードというのは大袈裟かしれないが、CFやIHはボールサイド側に動きながら攻撃に参加。ズレを作ったのは重なったライスとマルティネッリ。この2人から抜け出し→折り返しからウーデゴールが仕留めてあっさりと先制ゴール。
それ以降も両サイドを止めることができないブレイズ。サカには縦に並ぶ形のダブルチームはついてはいたが、後方で構えるハーマーに対してマーカーのトラスティが方向を規定できずに苦戦。これにより2人を差し向けている意味はなくなり、サカは右サイドを縦に抉る形をやりたい放題だった。
2点目は右サイドをえぐる形で奪われたブレイズはプレスに出ていく形で反撃。しかし、こちらは追い込みたいサイドからの脱出をサカとウーデゴールに決められてしまい、あっという間に点差は3点となった。
ブレイズは17分に交代で5バックに移行。サカへのマークも安定し、それまでよりは相手をつかまえられるようになった。それでもチャンスは単発。明確にチャンスといえそうなのは惜しくもオフサイドとなったハーマーの抜け出しくらいだろう。
勢いに乗るアーセナルは前半の内にさらに2点を追加。これでハーフタイムまでに5点差をつけることに成功し、試合を前半で決める。
後半、右サイドからサカが退いたことで流動性がアップ。大外レーンをシェアする形で抜け出しを狙うし、後方の司令塔のジョルジーニョは放っておけば勝手にフリーになるので特別な打つ手をする必要もなし。大外のレーン交換をフリーのジョルジーニョが動かすことができれば、それだけでサイドから決定機を生むのは難しくはない。
アーセナルは早々に6点目を奪うと離脱組のリハビリを開始。ジェズス、トーマスにプレータイムを与えてとっとと店じまいである。
3強マッチレースはまだまだ継続。アーセナルも勝ち点を落とさずに上位追走に成功だ。
ひとこと
ミッションコンプリート。大差での勝利と離脱組の調整に時間をさけたのは大きかった。
試合結果
2024.3.4
プレミアリーグ 第27節
シェフィールド・ユナイテッド 0-6 アーセナル
ブラモール・レーン
【得点者】
ARS:5‘ ウーデゴール, 13’ ボーグル(OG), 15‘ マルティネッリ, 25’ ハヴァーツ, 39‘ ライス, 58’ ホワイト
主審:サム・バロット
第28節 ブレントフォード戦(H)
焦れずに耐えて殴り続ける
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日曜にリバプール×マンチェスター・シティという大一番を控える今節のプレミアリーグ。3位のアーセナルはこの試合に勝利すれば少なくとも2位への浮上が保証される状態で迎えるのは昨年ホームで引き分けたブレントフォードとの一戦である。
立ち上がりはハイプレスで始動したブレントフォード。バックラインへの積極的なプレスで久しぶりの先発になったラムズデールを中心にプレスをかける。アーセナルはラヤが不在な分、ロングキックの精度は割引ではあったが、SBを使いながらのプレス回避で効率的に相手を外していく。
よって、ブレントフォードは素早く撤退のフェーズに移行。アーセナルはブロック攻略にいそしむこととなる。
キーになるのは右サイド。IHのジャネルトとWBのルイス-ポッターの2人の視線を集めることができるサカの存在である。これにより、攻めあがるホワイトのマーカーは不在に。フリーランをするホワイトに加えて、ウーデゴール、ハヴァーツ、そして逆サイドへの出張を行うトロサールでブレントフォードの守備を攪乱する。
ニアのポケット周辺を中心に突っつかれたブレントフォード。そのため、ポケットのケアに意識が言ったところでホワイトはファーへのクロスを選択。ライスがミスマッチとなったエアバトルを制して先制する。
押し込みながらその後も順調にプレーするアーセナル。だが、ブレントフォードもトニーを軸としたロングボール攻勢で時折陣地回復に成功。確実にアーセナル陣内に迫る機会を作る。
すると、前半終了間際にハイプレスが成功。ラムズデールのミスを誘ったウィサが3試合連続のゴールを決めた。
後半も試合の展開は変わらず押し込むアーセナルと受け止めるブレントフォードの関係性は継続。互いにセットプレーからチャンスを演出するスタートだったが、どちらも守備側の素晴らしいプレーで得点には至らず。前半はミスを犯したラムズデールも2つの決定的なセービングでブレントフォードにリードを許さない。
選手交代を行いながらサイドのテコ入れを図ったアーセナル。結果を出したのはトライを繰り返していた右サイド。ホワイトの抜き切らないクロスをニアでハヴァーツが仕留めて86分に決勝ゴールを決める。
アウェイでの89分のゴールに続き、またしてもブレントフォードを仕留めることに成功したハヴァーツ。ブレントフォードを下し、8連勝でCLのポルト戦に向かうこととなった。
ひとこと
焦れずに、耐えて、殴り続ける。CLでも同じことをやるだけだ。
試合結果
2024.3.9
プレミアリーグ 第28節
アーセナル 2-1 ブレントフォード
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:19‘ ライス, 86’ ハヴァーツ
BRE:45+4′ ウィサ
主審:ロベルト・ジョーンズ
第30節 マンチェスター・シティ戦(A)
三つ巴のサバイバルはまだまだ続く
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https://www.footballista.jp/regular/180411
リバプールは前の時間帯で勝利し暫定首位浮上。アーセナルが首位を死守するには8連敗中のエティハドで勝利するしかなくなった。
立ち上がりはプレッシングからシティの保持の阻害に走るアーセナル。CBとCH、そしてオルテガの5枚を軸にビルドアップを行うシティに対して、ハヴァーツとウーデゴールのプレス隊を軸としてサイドに誘導し、ライスにボールをハントさせるいつものやり方から高い位置でのボール奪取を狙う。
だが、シティはライスのいないところから前進を狙う。デ・ブライネ、フォーデンにライン間で受けさせたり、大外からベルナルドがキヴィオル相手にゴリゴリしたりなど、異なるところからボールを前に進めていく。
ベルナルドが自陣でのビルドアップ参加を増やしたところでアーセナルはリトリートを優先。SHを思いっきり低い位置まで下げて自陣を固める。非保持の方向性はインサイドとバイタル。大外はグバルティオルとアカンジなのでアーセナルはサイドにはSHもしくはSBが出ていけばOKというスタンスに。その分、ハーランドへのクロスは2枚で跳ね返すし、押し下げたフェーズにおいてはお馴染みのシティのミドルシュートはことごとくブロック。跳ね返していく。
自陣での守備は盤石だったアーセナルだが、SHが下がっている分カウンターの希望はかなり薄め。どちらのチームにも得点が入る予感がないままハーフタイムを迎える。
後半、シティはベルナルドのビルドアップのタスクを減らして大外に配置。3-2-5の形で固定し、サイドアタックを増やしていく。ビルドアップ隊が少なめになった分、アーセナルはリスクを賭してハイプレスに出ていくように。高い位置からボールを奪ってチャンスを作るこの時間がアーセナルにとっては最もゴールの確率が上がった時間帯だった。
シティはWGキャラのドクとグリーリッシュを投入したことでアーセナルの前向きなプレスをへし折ることに成功。ドク対策で冨安をすぐに入れたアーセナルもこれに対抗。冨安は万全そうではなかったが、左足を使わせる方向に抜けられるような守り方が基本的にはできていたし、タッチライン側に抜けられた時もガブリエウが問題なく受けることが出来ていた。
それでも左右にボールが入った分、押し込むフェーズに突入したシティ。アーセナルはなかなか押し返せない状況だったが、ボックス内の封鎖には成功。
勝利は手にできなかったが、エティハドでのシティを無得点に抑えるという快挙に成功したアーセナル。優勝候補にふさわしいパフォーマンスを見せて、タイトルレースは三つ巴を継続だ。
ひとこと
トーマスと冨安のフィットがアーセナルを一段上に押し上げる予感がする内容だった。
試合結果
2024.3.31
プレミアリーグ 第30節
マンチェスター・シティ 0-0 アーセナル
エティハド・スタジアム
主審:アンソニー・テイラー
第31節 ルートン・タウン戦(H)
天王山直後の一戦は強かに
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首位攻防戦を終えて休む間もなくリーグ戦が続くアーセナル。今節の相手は残留圏になんとかたどり着きたいルートンである。
ルートンのプレッシングは高い位置からの積極的なもの。しかしながら、橋岡のように本職でない選手をCBで起用しなければいけない台所事情からか、はたまたアーセナル相手にそもそも後方を同数で受け止めるのは難しいと考えたのかはわからないが、枚数を1枚余らせることで後方で数的優位を維持する。
アーセナルはCFのハヴァーツにボールを当てつつ、WGが背後をとる形を狙っていたので結果的にルートンの後方に枚数をかけるクッションの策が壮行する場面も少なくはなかった。ただし、アーセナルも自陣でのビルドアップの枚数が余っている状態だったので、特にトーマスはボールを安定して前線に供給することができていた。
プレッシングはいつも通りのアーセナル。2トップの誘導にCHのプレスを合わせる形でボール奪取を狙う。ただし、ボールハント役のライスがいない分、威力は多少割引。だが、このプレッシングからアーセナルは先制。スミス・ロウの見事な絞りからアーセナルが先制する。
勢いに乗るアーセナルは前半の内に追加点をゲット。またしても左サイドの裏に抜けたスミス・ロウの折り返しからオウンゴールを誘発。ハーフタイムの前にさらにルートンを突き放す。
後半はアーセナルは試合をコントロールする路線に終始。無理なプレスに行かないポゼッションを行いながら時計の針を進めていく。
ルートンはタヒス・チョンの投入からリズムを引き戻しにいく。手前に降りてはボールを引き出し、前線にボールを刺したり散らしたりすることで少しずつアーセナルを押し込んでいく。
アーセナルは押し込まれても特に慌てる様子はなし。インサイドを固めるシティ戦を踏襲するプランから自陣に要塞を築き、ルートンの攻撃を跳ね返し続ける。
速攻も遅攻も完全に封じてアーセナルはルートンの攻撃をシャットアウト。後半は試合をコントロールすることにフォーカスしたアーセナルが天王山直後の一戦を安定して制した。
ひとこと
取り立てて強さを感じるわけではなかったけども、アーセナルは全く負ける気がしない90分だった。
試合結果
2024.4.3
プレミアリーグ 第30節
アーセナル 2-0 ルートン・タウン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:24’ ウーデゴール, 44′ 橋岡大樹(OG)
主審:クレイグ・ポーソン
第32節 ブライトン戦(A)
リベンジを返り討ちにしてリバプールにプレッシャーを
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エミレーツでは一方的にアーセナルがペースを握り完勝となった一戦。アメックスではブライトンはリベンジをしたいところだろう。
その強気のスタンスが見られた立ち上がりのブライトン。自陣からのキャリーでアーセナルのプレスを外しながらブライトンはスマートに前進を図る。CHのバレバとグロスを軸に散らしながら前進を図る。ジンチェンコの裏という狙い目があったのも幸運。スピードアップしながらボールを動かしていく。
ミドルプレスで踏ん張っていく非保持も含めてブライトンの立ち上がりは上々。だが、アーセナルもさすが。徐々にペースの立て直しに成功。まずは裏へのパスからブライトンのラインを間延びさせると、中盤のプレスの足埋めに成功。棒立ちのブライトンの守備者に対してアーセナルは自在にライン間と幅を使いながら敵陣に進んでいく。
その甲斐あってアーセナルはPK獲得。左サイドでサイドチェンジを受けたジェズスが仕掛けたところからPKを奪取。このPKをサカが仕留めて先行する。
ブライトンは押し下げられてしまって苦しい展開に。カウンターの威力も下がってしまい、なかなか出力を上げることができなくなっていく。時間の経過と共に試合はアーセナルのペースに流れていく。
後半、ブライトンは高い位置からのプレッシングで圧力をかけていくが、アーセナルは引っ掛けながらも最低限危うい失い方を回避。逆に右に流れるハヴァーツを起点にアーセナルは反撃の機会を掴む。
この右サイドからアーセナルは追加点。サカがインサイドに絞り、エアポケットとなったこのサイドから裏抜けを仕掛けたのはジョルジーニョ。意外性溢れるプレーから抜け出すとハヴァーツへの折り返しで2点目を奪う。
この2点目でアーセナルは試合を鎮静化。リトリートをベースに中央を固めてブライトンの攻撃を跳ね返していく。冨安を入れたタイミングでプレスのラインを上げるなどローブロック一辺倒にならなかったのはさすがである。
アーセナルは強かなカウンターからトロサールが独走に成功して3点目をゲット。かつては本拠地としたスタジアムでゴールを奪い、試合を完全に決定づける。
リベンジに燃えるブライトンを返り討ちにしたアーセナル。シーズンダブルを達成し、翌日に試合を控えるリバプールにプレッシャーをかけた。
ひとこと
アーセナルの強さが存分に感じられる90分だった。
試合結果
2024.4.6
プレミアリーグ 第32節
ブライトン 0-3 アーセナル
アメリカン・エキスプレス・コミュニティ・スタジアム
【得点者】
ARS:33′(PK) サカ, 62′ ハヴァーツ, 86′ トロサール
主審:ジョン・ブルックス
第33節 アストンビラ戦(H)
ポゼッションフォーカスのビラが無敗記録をストップ
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共にラウンドの進んだ欧州カップ戦を戦っている両チーム。身体的な負荷が高い状態になっているところではあるが、いずれも大きなターンオーバーがなく、ベストに近いメンバーでこの試合に臨むこととなった。
見応えがあったのはアストンビラの保持の局面。左サイドのパウ・トーレスからの縦パスからの組み立てを狙っていくビラだったが、アーセナルはプレスで選択肢を狭めながら、受け手にプレッシャーをかけてパスカット。左右への揺さぶりに対してもアーセナルは根性で対抗していくことで前進の局面を阻害する。
ビラは縦パスを通して前にボールを進めることができてもアーセナルの高速プレスバックでチャンスを作れず。決定機といえばガブリエウの偶発的なミスから発生したワトキンスの1on1くらいのものであった。
アーセナルは保持でビラのプレス外しに成功。ハヴァーツの左のハーフスペースの裏抜けや、WGを基準として手前と奥行きを使い分けるアプローチでアストンビラ陣内の細かいスペースを破壊していく。だが、ビラの球際の激しい守備に対してはなかなか決定機を多く作ることができず。ワトキンスの決定機の直後に迎えた、トロサールの大チャンスはマルティネスのファインセーブに阻まれてしまった。
迎えた後半、劣勢だったアストンビラはワトキンスを縦パスのレシーバーとして起用。左サイドにボールの収めどころを確保する。これに伴い、右サイドにはロジャーズがスライド。左右に縦パスの収めどころを作り、まずはアーセナルのプレスを撃退することに専念。
この方針変更がアーセナルにクリティカルヒット。前半に足を使ってしまったアーセナルは横に揺さぶるアストンビラの保持にスライドすることができず、プレスが完全に機能不全に陥ってしまう。
押し返せないアーセナルに対して展開をフラットに持ち込むことができたアストンビラ。後半はどちらもボックス内への侵入が少ない堅い展開になったが、この状況を打開したのはアウェイチームだった。左サイドからのクロスに飛び込んだパウ・トーレスがニアで潰れたことでファーに流れたボールをベイリーが押し込み、ついに試合を動かす。
さらには、CKで総攻撃を仕掛けるアーセナルをひっくり返す形で独走したワトキンスが追加点を決める。これで試合は完全に決着。
2024年初陣から続いていたアーセナルの無敗記録はここでストップ。アストンビラにシーズンダブルを食らい、シティに首位の座を明け渡すこととなった。
ひとこと
アーセナルは明らかに前半に仕留め切りたかった展開。トロサールの決定機逸が悔やまれることとなった。
試合結果
2024.4.14
プレミアリーグ 第33節
アーセナル 0-2 アストンビラ
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
AVL:84′ ベイリー, 87′ ワトキンス
主審:デビッド・クート
第34節 ウォルバーハンプトン戦(A)
強度が出ないなりの強さ
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CL敗退にPL首位陥落と苦しい1週間となったアーセナル。それでもまだ続く中2日の連戦。次なる相手はウルブス。ただ、ウルブスも前線とワイドの選手のやりくりに厳しいものがある。それぞれ苦しいスカッド事情で迎える一戦となった。
そのため、試合は互いの保持の時間が長いスタートに。それでもロングカウンターができる選手がいないウルブスは前からプレスに行かなくては行けないし、アーセナルもスタイル的に前から追うスタートとなった。
手応えをより掴んだのはアーセナルだろう。浮きやすいSBのポジションから相手の中盤やWBを自陣側に引き付けて、中盤にスペースを作る。このスペースにライスが入り込むことでドリブルから前線にボールを運んでいく形を確立する。
アーセナルは右サイドからウルブスのゴールに迫っていく。ホワイトが手前で相手を引きつける分、ダブルチームに苦しむことがないサカはオンザボールでもオフザボールでも一定のパフォーマンスを披露することができていた。だが、ボックス内の守備はウルブスに踏ん張られてなかなかこじ開けることができない。
保持に回ったウルブスはサイドに散らしながらアーセナルのプレスを逃すスタート。だが、こちらはアーセナル以上に中盤での剥がしには苦労。出ていけないならいけないなりにコンパクトにというアーセナルの差配に対して対策を打つことができなかった。
それでもロングボールからキヴィオルを狙い撃ちすることで打開を狙うウルブス。ジョアン・ゴメスが競り勝ったところから迎えた決定機は前半の最もクリティカルなチャンスの1つだ。
だが、前半にゴールを手にしたのはアーセナル。ジェズスの高い位置からのキープの恩恵を受けたトロサールが見事なトウキックからの先制ゴールを決めた。
後半、アーセナルはギアアップ。プレスを強めつつ、前半よりも間延びしたウルブスのライン間に縦パスを入れることで敵陣に侵入していく。
だが、ウルブスのボックス内の堅さは健在。セットプレーの攻撃を含めてアーセナルの攻め筋を受け切る。
70分以降はアーセナルのプレスも緩み、展開はオープンに。マルティネッリ、アイト=ヌーリといった両チームのキーマンによる陣地回復が目立つようになる。そうした中でも保持の安定感に勝るアーセナルがやや主導権を握る。
決着は追加タイム。右サイドの角度のないところから試合を決めたのはウーデゴール。頼れるキャプテンの一撃で苦しい1週間の最後を暫定首位浮上で締め括ったアーセナルだった。
ひとこと
強度が足りないながらもそれなりにまとめることで強さを見せたアーセナルだった。
試合結果
2024.4.20
プレミアリーグ 第34節
ウォルバーハンプトン 0-2 アーセナル
モリニュー・スタジアム
【得点者】
ARS:45′ トロサール, 90+5′ ウーデゴール
主審:ポール・ティアニー
第29節 チェルシー戦(H)
青写真通りのギアアップで大量得点
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中2日での試合が続くアーセナル。10日間で4連戦のトリを飾るのはチェルシーとのビッグロンドンダービーである。
体力面で不安のあるアーセナルに対して、チェルシーはハイプレスでスタート。冨安がインサイドに絞る3-2型のアーセナルには陣形的にはチェルシーはハメ込めるようになっている。しかしながら、実際にはアーセナルのビルドアップにはハヴァーツ、トロサール、ウーデゴールといった面々も顔をだす。それによりチェルシーのプレスには足りない部分が出てくるように。
そういう意味でチェルシーのプレスはハマりきらず。アーセナルはショートパスからスムーズに前進することで先制点をゲット。相手を右サイドに引きつけつつ横断することでチェルシーの引き剥がしに成功。アイソレーションの機会を得ることができたトロサールが角度のないところから先制点を決める。
チェルシーの保持に対してはアーセナルは右サイドを軸としたプレスで対抗。いつもほどの強度はないが、相手をきっちり押し下げる役割は果たしていた。しかしながら、チェルシーも左右に流れるジャクソンや右の大外から仕掛けるマドゥエケからアーセナルのゴール前に進んでいく。
速攻はもちろん、自陣からのビルドアップでも全く手応えがないわけではなかったチェルシー。だが、ボールの奪いどころを定められない状況は変わらず。試合はアーセナルのリードでハーフタイムを迎える。
後半はギアアップしたアーセナルがチェルシーをあっという間に飲み込む展開に。プレッシングから一方的に押し込む状況を作ったアーセナルはセットプレーからホワイトが追加点を決める。
このゴールでチェルシーは中盤のプレスが後手に。降りるアクションを見せたウーデゴールから一発で抜け出したハヴァーツがゴールを決めてさらにリードは広がる。
終盤はククレジャとの優位をとったサカを軸に右サイドから攻めるアクションを見せたアーセナル。周りの動きだしを見逃さなかったアーセナルはさらにこちらのサイドからの侵入でハヴァーツが追加点を奪う。
最後はホワイトが角度のないところからクロス性のシュートを決めて5点目をゲット。大量5得点を挙げたアーセナルがチェルシーに順位の差を見せつけた90分となった。
ひとこと
後半頭のギアアップからの畳み掛けは体力的に不安があるアーセナルが描いた青写真通りの展開だろう。
試合結果
2024.4.23
プレミアリーグ 第29節
アーセナル 5-0 チェルシー
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:4′ トロサール, 52′ 70′ ホワイト, 57′ 65′ ハヴァーツ
主審:サイモン・フーパー
第35節 トッテナム戦(A)
追いかけられても淡々と冷静に
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暫定ながらも首位でリーグを走るアーセナル。ミッドウィークの試合が終わり、連戦のトリとなるのは2週間と休養十分でライバルを待ち受けていたトッテナム。アーセナルがタイトルに向かうにはアウェイでのノース・ロンドン・ダービーを制する必要がある。
立ち上がりはハードなデュエルがベースとなる。しかしながら、コンディション面で不利になるであろうアーセナルは少しずつリトリートでブロックを組んでいくように。トッテナムはハイプレスへの解決策があったこともあり、ハイテンションで戦っていくのは体力的にリスクと判断したのだろう。マディソンとクルゼフスキで時間を作るトッテナムに対して、引いてボールを受けていく。
アーセナルもまた保持に回ればプレスを安定して回避。ラヤ、ライス、トーマスが中盤でフリーになったところからサカにボールを集めることで攻撃を仕掛けていく。
だが、基本的にはトッテナムが押し込むスタート。ある程度は結界を引いて、これ以上は侵入されない領域を守ることでトッテナム相手に割り切った守備を見せるアーセナルだが、ペナ角からのクルゼフスキのクロスは少しゴールに手をかけた感じがあった。
しかしながら、先制したのはアーセナル。セットプレーという持ち味をきっちり発揮し、CKからホイビュアのオウンゴールを誘発する。
さらにはカウンターから追加点をゲットするアーセナル。左に流れたハヴァーツからカウンターに移行すると、ファーに長いボールを受けたサカの仕掛けからアーセナルはリードを広げる。
セットプレーでの追加点を決めたアーセナルは前半の3点のリードをゲット。しかしながら、トッテナムもゴールを取り消されたファン・デ・フェンのシーンをはじめとして点差よりは紙一重の展開に持っていくことができている。
後半、アーセナルはもう1つのゴールで相手の心を折りにいく。冨安のヘッドやサカの決定機など、トッテナムから早々に4点目を取りに行く。
それでもゴールが決まらないアーセナル。体力的には分があるトッテナムはプレスをやめずに出ていく。それによってアーセナルのミスを誘発。ラヤのパスミスからロメロが1点を返す。さらにはライスがややアクシデンタルなPKを献上。これでトッテナムは1点差まで詰める。
アーセナルの後半の良かったところは内容は悪くなかった分、リードをきっちりと守ることに淡々と成功したところ。迫られるスコアとは裏腹にトッテナムのゴールの可能性を冷静に制限し続けた。
立ちはだかるローカルライバルを振り切ったアーセナル。タイトルレースはまだまだ続く。
ひとこと
前半の3得点も痺れるけど、後半の追いかけられても淡々としていたアーセナルも好きだよ。
試合結果
2024.4.28
プレミアリーグ 第35節
トッテナム 2-3 アーセナル
トッテナム・ホットスパー・スタジアム
【得点者】
TOT:64′ ロメロ, 87′(PK) ソン
ARS:15′ ホイビュア(OG), 27′ サカ, 38′ ハヴァーツ
主審:マイケル・オリバー
第36節 ボーンマス戦(H)
王様が牽引!タイトルレースはまだまだ続く
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ミッドウィークの連戦が終わり、ようやくアーセナルは週1で準備を整えることができた。対するボーンマスは強敵。特に攻撃力に関してはシーズン終盤も落ちることがなく走ることができているチームである。
立ち上がりこそ少しバタバタしたアーセナル。しかしながら、自陣からのボール保持で試合を落ち着かせることに成功する。この日のアーセナルは保持から相手を外すアクションが自由自在。ボーンマスの片側誘導に対して、逆サイドにスウィングする動きを降りるアクションから行うウーデゴールなどは王道。それ以外にも2人や3人の少ないユニットから相手をミクロに動かしながら前を向く選手を作ることができる。
ハヴァーツ、トロサール、ウーデゴールといった降りるアクションを行う選手が効果的だったのは当然として、サリバや冨安といった選手たちの後方の選手の列上げのサポートが充実していた。
左サイドは開く選手間のユニット、右サイドはサカとワッタラのアイソレーション、そして中央ではハヴァーツの裏抜け。こうしたあらゆる場所における崩しの決め手を中央でウーデゴールが王様のように操るというのがなかなか印象的な展開だった。
ボーンマスは苦しい展開。前線にはソランケがアーセナルのCB相手に奮闘するが、ラヤも含めた3枚をまとめて相手にするのはなかなか厳しいものがある。30分にようやく押し上げることができたタイミングまでいけばワッタラが異分子となり勝負を仕掛けることができていた。だが、そうした状況を作るのは稀。より攻め頻度で優位に立つアーセナルがハヴァーツの抜け出しからPKを獲得し、先制点を決めた。
後半は前半よりもオープンな展開。敵陣まで進むことができていたボーンマスだが、左右からファーのクロスを上げるアクションを狙っていくが、アーセナルのSBを軸とした跳ね返しを前に屈している。
アーセナルはライスとウーデゴールを軸に左右をスウィングしながら横断する形。自陣でのロストからのショートカウンターは懸念ではあるが、ボールを動かしながら敵陣を攻略していく形では依然アドバンテージを握っていく。
そうした中でアーセナルは追加点をゲット。偶発的に中央で跳ねたボールに対していち早くリアクションを見せたライスがトロサールにラストパスを送ると、これが2点目に。
ボーンマスにとってはゴール取り消しになるなどの判定もあったが、総じて試合はアーセナルペースと言っていいだろう。仕上げの3点目はライスがストライカー顔負けの一撃を仕留めて決着。3点差という得失点もきっちり確保したアーセナルが3ポイントを積み重ねた。
ひとこと
終盤戦にこの試合を持って来れるアーセナルは強い。
試合結果
2024.5.4
プレミアリーグ 第36節
アーセナル 3-0 ボーンマス
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:45′(PK) サカ, 70′ トロサール, 90+7′ ライス
主審:デビッド・クート
第37節 マンチェスター・ユナイテッド戦(A)
苦戦を強いられながらも最終節に望みをつなぐ
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昨年、アーセナルの優勝の夢が止まった37節は今年も鬼門。有観客では2006年を最後に勝利していないオールド・トラフォードを越えなければ20年ぶりのリーグタイトルは見えてこない。
今季1番の苦しい陣容と言っていいユナイテッドに対して、アーセナルは高い位置から積極的に攻めていく。右サイドのサカを中心に即時奪回を効かせて波状攻撃に出ていく。
しかしながら、ユナイテッドも反撃に。サカの背後のダロトへのオナナのロングボールを起点に擬似カウンターを発動すると、ここからスピードアップして敵陣に入っていく。
ハイプレスが機能しないアーセナルは思ったように主導権を握ることができないスタートとなったが、ユナイテッドのミスに漬け込む形で先制。ロングキックのミスからラインをあげ損ねたカゼミーロのところを生かしてハヴァーツが右サイドを破るとトロサールがゴールをゲット。アーセナルが試合を動かすことに成功する。
ハイプレスを強めるユナイテッドに対して、アーセナルはDF-MFの背後にパスを差し込むことでひっくり返しての2点目を狙う。しかしながら、ユナイテッドもアムラバトの躍動から中盤より前でカウンターを潰すことに成功。アーセナル相手にガルナチョを生かしたファストブレイクからゴール前に進んでいく。アーセナルのリトリートが間に合ってしまうと、攻め手がなかったユナイテッドにとってはこのファストブレイクは生命線だった。
後半も前半と陸続きの内容。敵陣からプレスを仕掛けていくユナイテッドに対して、なかなか効果的にボールを動かすことができない。
押し込むことができればサカを軸とした右サイドからゴールに迫ることができるアーセナルはハヴァーツへのロングボールを生かしたセカンド回収という安全策にシフト。試合をフラットに引き戻していく。守備で後手に回っていた右サイドはサカの負傷交代を機にジェズスを入れることで蓋。マルティネッリという速攻の武器も投入し、後方を固めて少ない人数での攻撃完結を意識した陣容に変化する。
後半頭はガルナチョを軸としてゴールに向かうことができていたユナイテッドだったが、時間の経過に伴うガス欠と後方を固めるアーセナルを前に徐々に攻め手がなくなるように。アーセナルは苦しみながらも鬼門越えに成功。ユナイテッドファンが押し寄せるオールド・トラフォードを17シーズンぶりに攻略し、再び暫定首位を取り返した。
ひとこと
プレッシャーのかかる状態での鬼門突破は見事。
試合結果
2024.5.12
プレミアリーグ 第37節
マンチェスター・ユナイテッド 0-1 アーセナル
オールド・トラフォード
【得点者】
ARS:20′ トロサール
主審:ポール・ティアニー
第38節 エバートン戦(H)
チェイサーとして十分な役割を果たしたシーズン
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悲願の優勝のためには勝利してマンチェスターからの吉報をまたなければいけないアーセナル。最終節には抜群の相性を誇っているが、ガッチリとしたリトリートで自陣のブロックを組むことで失点を急激に減らしているエバートンが相手。面倒くさい相手が優勝を前に立ちはだかっている。
立ち上がりからしばらくするとボールを持つのはアーセナル。エバートンはドゥクレがライスをマークすることで前線はキャルバート=ルーウィンが一人でプレス。バックスにボールを持たれるのは許容する構えだった。
サカがいなくても軸になるのは右サイド。ボールを集めつつハーフスペースの裏抜けからチャンスを作っていく。右サイドからの攻撃はこのハーフスペースの裏抜けに加えて、ファーサイドへのクロスもしくは中盤から逆サイドへの展開。
しかしながら、エバートンは押し込まれることに関してはプレミアで最も慣れているチームの1つといっていいだろう。アーセナルにはポゼッションを受け渡しながらボックス内でシュートとクロスの跳ね返しに特化。悪くはないアーセナルの攻撃に対抗し続ける。
対するエバートンはカウンターで反撃。キャルバート=ルーウィンへのロングボールが当然軸になるのだけども、左サイドからキャリーするマクニールが地味に効いていた。こちらのサイドで後手をふむトーマスに対して、エバートンは推進力を生かしたカウンターを披露。そのマクニールのボール奪取からエバートンは先制。ゲイェのFKが幸運な跳ね返りでそのままゴールネットに吸い込まれる。
しかしながら、アーセナルは再三繰り返していた右サイドからの攻め手が成就。ウーデゴールの抉る動きからの折り返しを冨安が仕留めてハーフタイム前に同点に追いつく。
後半も基本的にはアーセナルの保持が中心。エバートンが高い位置から出てきて奪ったら素早く盾にという展開を繰り返していたため、試合は前半よりもややオープンな展開を迎えることになった。
右サイド大外のマルティネッリを軸に攻めていくが、ラストパスが刺さらないという前半の展開を踏襲するアーセナル。もう一押しが欲しい展開でアルテタが打った一手はスミス・ロウとティンバーの投入。特にティンバーの投入は2-3-5という今季やりたかったかもしれない設計図への移行を促すもの。オフザボールの動きはやや減ったアーセナルにとって、構造的によりサイドのフォローを増やしたかったというのが狙いだろう。
なかなかこじ開けられないアーセナル。焦ったい展開ながら終盤にハイプレスから勝ち越しゴールをゲット。オナナの苦しいバックパスからヤングがパスミスを犯してカウンターを発動。ウーデゴールの虚をついたプレーがラストパスとして成立し、最後はハヴァーツが叩き込んだ。
マンチェスターからのいい知らせは届かなかったアーセナル。だが、最終節も勝利を手にし、最後までシティの追っ手として十分な功績を果たしたシーンだったと言えるだろう。
ひとこと
エバートンはキャルバート=ルーウィン→シェルミティのスイッチでカウンターの出力が下がってしまったのが痛かった。
試合結果
2024.5.19
プレミアリーグ 第38節
アーセナル 2-1 エバートン
エミレーツ・スタジアム
【得点者】
ARS:43′ 冨安健洋, 89′ ハヴァーツ
EVE:40′ ゲイェ
主審:マイケル・オリバー